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月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~  作者: さとう
第三章 セブンスマギア魔導学園

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解放、地の国ヴァリアント

 地の国ヴァリアントの解放。

 水の国、火の国と同じく、ハッピーエンドというわけにはいかなかなった。

 七曜月下の討伐後、突如として降り注いだ『鉛の雨』により、ヴァリアント軍は壊滅的なダメージを受けた。

 六千名以上いたマギナイツ、マギソルジャ―の四割が死亡。現在、城下町の一角を臨時の治療所として、怪我人の手当てを行っている。最初、アシェやマールがトウマに『あんたの剣で治せないか』と提案したが、トウマも負傷していたし、心身が万全でないと『嘘神邪剣』は使えないと言われた。

 アシェたちも治療を受け、ラーズアングリフ家本邸へ呼ばれた。

 そこで待っていたのは。


「お、お母様……!?」

「カトライア。よくやったね、他の子供たちも……あんたらの働きに敬意を表する。ヴィンセントやガルフォスの言ったことに間違いはなかったよ」

「お、お母様……う、腕が」


 グロッタは、左腕を失った。

 顔にも大きな傷が残り、眼帯で顔半分を覆っている。

 グスタフマンは悲しそうに目を潤ませていた。


「ああ、気にしないでいいさ。戦場での負傷は慣れっこだしね。それよりも……カトライア、あんたのマギアが壊れたって?」

「は、はい。いえ、そんなことより」

「グスタフマン」

「……ママ、わかってるよ」


 すると、グスタフマンがカトライアに、『ガイア』を差しだした。


「え……!?」

「七曜月下の討伐。仲間と協力してとのことだが、もうお前の実力を疑うことはないよ。当主の座はまだ早いけど……今のお前なら、このレガリアを扱えるはずさ」

「……お母様」

「あたしはもう、以前のように戦えない。これからは、お前が跡を継ぐ領地運営と、解放した土地をどうするか、お前のために準備をしておくさ」

「……っ」


 カトライアはレガリアを無視し、グロッタの胸に飛びついた。

 グロッタは驚くが、困ったように苦笑し、カトライアの頭を撫でる。


「こらこら。お友達の前で、みっともない顔をするんじゃないよ。世界で七つしかないレガリアを無視して、あたしの胸に飛び込むなんてね……ふふ、お前はあたしよりいい領主になるね」

「……ううう、お母様」


 グスタフマンは、レガリアが重いのかプルプル震えていた。

 そして、カトライアは涙をぬぐい、グスタフマンから『ガイア』を受け取り、構えを取る。


「お母様。私、ラーズアングリフ家の誇り……『ガイア』を受け継ぎますわ!!」

「ああ。頼んだよ……皆さんも、本当に感謝しかない」


 グロッタは、整列して話を聞いていたアシェたちに頭を下げた。

 アシェは言う。


「お気になさらないでください。七国は同士。困った時はお互い様ですから」

「ふふ。そうですわね」

「だね。さーて、次は風の国の解放を手伝ってもらおうかな?」

「……フン」

「えと……できれば、光の国も、なんて」

「…………」


 ようやく、温かな空気に包まれた。

 ハスターは言う。


「ってか、今更だけどさ……七曜月下の討伐って『授業』なんだよな」

「あり得ないけどね。ってか、トウマのやつどこ行ったの?」


 トウマは、今朝早くから姿が見えなかった。


 ◇◇◇◇◇◇


 トウマは、オオタケマルと二人でシャードゥが討伐された崖の上にいた。


「あのフラジャイルとかいう奴に言っておけ。お前は、俺が、確実に、ブチ殺す、ってな」

「ああ。確実に伝えておく」


 ここに来たのは、オオタケマルの見送りだ。

 オオタケマルは、トウマに言う。


「トウマ。お前がいる高みに、オレ様は辿りつけるか?」

「できるよ。だって、お前めちゃくちゃ強いしな。もっともっともっと強くなったら、またやろうぜ」

「……フン」


 不思議だった。

 敵であり、討伐対象……だが、トウマと喋るのは心地よい。

 ビャクレンが、なぜトウマを師と呼ぶのか、オオタケマルは理解できた。

 同時に……自分は、教えを乞うことはできないとも。


「それで、本当にいいのか?」

「ああ。俺との戦いを、お前の口から報告してくれ。そうすれば、もっと強い月の民が来るんだろ?」

「かもな。少なくとも、天照十二月が地上に降りてくるのは違いない」

「わくわくする。くっくっく」


 トウマは本当に嬉しそうだった。

 オオタケマルは頷く。


「助言をしておく。天照十二月は十二人いる。そして、お前は序列四位のビャクレン、序列八位のオレ様を倒した……残りは十人。だが、序列一位から三位の強さは別格。そして順位があてにならないやつもいる……序列十二位の新入り、そして十一位、十位の双子には気を付けろ。あと、『執行者』を率いる『断罪者』……こいつも危険だ」

「順位下じゃん。それと、断罪者?」

「だから、順位があてにならん。入れ替え戦を申し込まれて負けたら順位は入れ替わる。双子は順位の興味がなく、新入りはすぐにでも序列を駆けあがる」

「ふーん」

「そして、間違いなく……『月光の三聖女』が動き出す。月の神は沈黙しているが、どう動くかわからん」

「まあいいよ。斬るだけだし」

「……単純なやつめ」


 オオタケマルは笑った。

 トウマは拳を突き出すと、オオタケマルは拳を合わせた。


「じゃあな、今度はメシでも食おうぜ」

「……人間のお前が、敵であるオレ様をメシに誘うか。フン、悪くないな」


 そう言って、オオタケマルはテレポートした。

 残されたトウマは、崖下に広がる地の国ヴァリアントを見下ろす。


「……さーて。次はどこに行こうかね」


 ◇◇◇◇◇◇


 トウマは、カトライアの隠れ家へ戻って来た。

 そこには、アシェたち七人が勢ぞろいしていた。


「あ、帰って来た」

「おうアシェ。さてお前ら、そこに整列!!」


 いきなり言われ、アシェたちは言われるがまま整列する。

 トウマは、どこからか木刀を取り出し、肩に担いで言った。


「七曜月下の討伐お疲れさん!! うんうん、先生、お前たちはやればできる子だって信じてたぞ!!」

「「「「「「「…………」」」」」」」


 そういえば、トウマは講師だった……と、アシェたちは思い出した。


「そろそろ期限も近いし、のんびり馬車に乗ってムスタングへ帰ろうぜ。ビャクレンが残りの連中をどう鍛えたか気になるし、講師終わったら次に行く国も決めたいしな」

「え、トウマ……講師やめるの?」

「ああ。お前ら、かなり強くなったしな。七曜月下を七人で倒すだけの力あれば、訓練として大成功だろ。それに、俺もいろいろ得るモン多かったし、そろそろ次の国を見てみたい」

「……で、どこ行くの?」


 アシェが言うと、トウマはスッと数本の棒を見せた。


「リヒト、ヴラド、ハスター、シロガネ。この棒を一本引いてくれ」

「「「「……???」」」」

「……アンタ、まさか」


 アシェは気付いた。

 四人がそれぞれ棒を引く……すると。


「あれ、ボクのだけ、色付きです」

「リヒト、大当たり!! じゃあ次は俺、光の国チーフテンに行くぞ!!」

「え」

「あ、アンタ!! く、クジで決めんの!?」

「ウダウダ考えるより面白いだろ。ってわけでリヒト、お前の国の通行許可証くれ」

「……待て。トウマ、私の国に来てほしい。ハバキリの血族……」

「おいおい。そろそろオレんとこも来てくれよ。風の国、いいとこだぜ?」

「……オレぁどうでもいい」

「ダメダメ。クジは絶対。光の国に行くぜ!!」


 ワイワイといつも通りになるトウマたち。

 こうして、地の国ヴァリアントは解放され、平和を取り戻した。

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― 新着の感想 ―
当主の怪我はリヒトが治せそうな気がするけどどうなんだろう
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