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月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~  作者: さとう
第三章 セブンスマギア魔導学園

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リーダーとして

 アシェの指示は的確だった。


「前衛はマールとカトライア、ハスターとヴラドは中距離で待機、シロガネは周囲の検索、その後の対応は任せる。リヒトはアタシの傍で後衛!!」


 指示を出すと、マールたちはその通りに動く。

 アシェが双剣で飛んで来る石を弾き飛ばす。


「カトライア、周囲の木をとにかく叩きまくって!! サルが落ちてきたらハスターとヴラドで仕留めて!! 対応しきれないのはアタシとシロガネで落とす!!」

「お任せを!!」


 数トンある巨大な槌を振り回し、近くの木に叩きつけた。

 衝撃波が発生し、サルたちが落ちてくる。


「いらっしゃーい!!」

「ケッ、獲物だぜ!!」


 ハスターの槍がサルに刺さり、ヴラドの鎖がサルに絡みついて絞殺する。


「……」


 そして、シロガネの『鞭』が残りのサルを叩き殺す。アシェもイフリートを狙撃モードに変形させ、落下したサルに確実な止めを刺す。

 アシェは、命令しながら思った。


(双剣、槌の近接、槍と鎖の中衛、鞭の臨機応変な対応、そしてアタシの銃による狙撃)


「くっ……!?」

「マールーシェさん!! 今、治すから」


 リヒトの杖から淡い光が放たれ、サルの爪に引っ掻かれたマールの腕の傷が消え去った。

 光属性。希少な治療型マギアだ。治療だけではなく、解毒や状態異常回復などもお手のもの。

 アシェはリヒトを見て思った。


(治療……攻守だけじゃない、回復もある。バランスが取れた編成。七国の守護貴族のマギア……まさか、七人でともに戦うことも想定されているの?)


 作戦が立てやすい。

 それにアシェは、マギアに関しての発想、閃きの才能がズバ抜けている。形状さえわかれば、どのようなギミックがあるのか、なんとなく理解できた。

 

「シロガネ!! 前衛に回って!!」

「……何?」

「アンタ、その鞭……『剣』にもなるんでしょ!! 援護はハスターたちに任せて、前衛に!!」

「っ!!」


 シロガネは驚きつつも、鞭の『柄』にあるスイッチを押す。

 鞭の特殊鋼線が巻き取られ、鞭ではなく『剣』となってシロガネの手にあった。


「やっぱり、『蛇腹剣』ね。形状見た時からそうじゃないかなって思ってた」

「……大した観察眼だ」


 それだけ言い、シロガネはマールとカトライアの間に飛び出し、サルを両断した。


「まあ……シロガネさん」

「へえ、やるじゃない」

「後れを取るな。行くぞ」


 前衛三人、中衛二人、後衛二人。

 現在、最強の布陣と言える。

 サル以外にも、オークやゴブリンなどの集団が現れ、戦いとなる。

 まだまだ、周囲に魔獣はたくさんいる。

 

「みんな!! 体力を温存しつつ、この辺りを一掃するわよ!!」


 アシェの指示のもと、七人はそれぞれが全力を出し戦うのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 トウマは、少し離れた木の上で、アシェの指示を聞いてウンウン頷いていた。


「そうそう、気付いたか」


 トウマが七人に求めているのは、司祭や司教を倒す力だ。

 個別に鍛えることも考えたが、トウマが選んだ方法は集団での戦闘だった。

 個人ではなく集団、自分の役割をこなし、視野を広げて戦う。

 結果的に、個人の実力向上にもなる。それにアシェ。


「指令官……アシェ、リーダーシップがあると感じていたけど、ハマると一気に成長するな」


 アシェは、個人の強さだけじゃない、七人を率いる司令官としても成長する。

 もちろん、個人の実力も上がる。だがアシェは集団での、そしてリーダーとしての素質が非常に高い。

 カトライアを落ち着かせ、リーダーに交代してからの手際は驚きしかない。

 

「アシェ、化けるな」


 トウマは、背後に忍び寄っていた毒蛇を掴み、葉っぱで頭を落とす。

 そして、皮を一気に剥ぎ、内臓を抜くと、生のまま齧りついた。

 

「むぐ……さて、周囲を一掃したら、次は寝床とメシの支度。どうするか見ものだな」


 ブチッと蛇肉を咀嚼し、トウマはアシェたちを眺めるのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 周囲の魔獣を一掃し、七人は汗を掻きながら肩で息をしていた。

 ようやく、周囲の気配が落ち着いた……が、アシェはイフリートを背負い言う。


「休むのはまだよ。魔獣の死骸に誘われて、大型の魔獣が来るかもしれない。ここから離れつつ、安全地帯を探すわ。ハスター、アンタ確か、風魔法で周囲の探知ができたわよね」

「ああ。探知というか、周囲の呼吸を感じる魔法だ。魔力の波を広げて、呼吸音、振動なんかを感知して会話を探ったりね……まあ、オレは未熟なんで、半径二百メートルくらいしか探れないけど」

「十分。アンタは周囲の大きな呼吸を探知して。大型魔獣らしき呼吸を見つけたらすぐ報告」

「了解」


 アシェたちは、休むことなく移動開始。

 ハスターが魔法を使っている間は無防備なので、マールが守る。


「残りは、横穴とか、安全そうな場所を探して」

「……アシェ」


 と、カトライアが小さく挙手。


「その、横穴がなくても、大きな壁とかあれば、私の魔法で『掘削』することはできるわ」

「いいじゃん。じゃあ、先に進みつつ、掘削できそうな壁を探しましょ」


 それから二十分ほど慎重に進むと、大きな岩壁を発見した。

 周囲を確認し、カトライアが『槌』で岩壁を叩くと、岩が砂のように崩れた。


「わあ……どういう魔法なんだろう」


 リヒトが、砂になった岩を触る。

 カトライアは槌を担いで言った。


「土、岩への干渉はラーズアングリフ家の得意魔法ですわ。ささ、離れてくださいな。もっと穴を広げますので」

「リヒト、ヴラド、シロガネ、アンタら三人は蔦とか葉っぱ集めてきて。カトライアが空けた穴を塞ぐから」

「おう。おいアシェ、まだ森の入口だけどよ、もう休むのか?」

「ええ。アタシがリーダーになった以上、アンタら全員を生き残らせる責任あるからね。いろいろ作戦を考えたいわ」

「わかった。おい行くぞ」

「あ、ま、待ってよ」

「……」


 ヴラドは、リヒト、シロガネの二人を連れ蔦や葉っぱを集めて来た。

 そのころには、岩壁に人が一人通れるほどの穴が開き、中に入ると意外にも広い空間となっていた。

 入口を蔦と葉っぱで隠し、七人は中へ。

 アシェは、全員に座るように言う。


「さて、とりあえず今日の拠点はここね。さっきの戦闘で思ったことを言うからよく聞いて。そのあとは、これからのことをアタシなりに考えながら言うから、アンタらも意見を出して」


 アシェは、今日の戦闘について語る。

 連携はどうだったか、個々の役割はこなせたか、魔獣について。

 話を終え、これからのことについて説明。


「まず、水はマールがいるから何とかなるわ。問題は食料ね……この中で、魔獣の解体できる人はどれだけいる?」


 手を上げたのはマール、シロガネ、ヴラド。


「あまり大型は無理ですけど、魔獣の解体ならしたことがありますわ」

「……実家ではよく狩りをした」

「森が遊び場でな、よく肉を捕まえて食ったぜ」

「うん。頼りになる……じゃあ、狩りをしたら解体任せるわ。あと、やり方も教えて」

「お任せを。ふふ、アシェに教えるのが楽しみですわ」

「はいはい。それとカトライア、状況が状況だから、男女別ってのは最低ラインね。寝る部屋が別とか、そういうのはなし」

「……わかってますわ」

「うん。着替えもないし、お風呂とかも無理。身体を拭くくらいはできるけど、覚悟はしておいて」

「ううう……」

「さて、しばらくはサバイバル生活よ。十五日間で、この森のボスを倒すわ。まずは、力を合わせて生きることからね」


 アシェは手を出した。

 マールは察したのか手を重ねる。ハスター、ヴラド、リヒトが続き、シロガネ、最後にカトライアと手を合わせた。


「力を合わせて、トウマの難題をクリアするわよ!!」


 こうして、アシェたちのサバイバル生活が始まるのだった。

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