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自己紹介

「さて!! 将来有望な諸君に、まずは自己紹介してもらおうか!!」

「アンタ、そのテンションなに……?」


 呆れるアシェ。なぜかトウマは木刀を手にしていた。

 木刀を担ぎ、肩でトントンさせながらアシェに言う。


「じゃあまずアシェから」

「今更すぎるけど……まあいいわ。私は、アシュタロッテ・イグニアス。みんなからはアシェって呼ばれてる。使用マギアは銃で、専用マギアは『イフリート・ノヴァブラスター』と『ヴォルカヌス&ウェスタ』よ」

「はいお疲れ」

「……だから、そのテンションなに?」


 呆れるアシェ。トウマはニコニコしながらマールへ向き直る。


「ふふ。私は、マールーシェ・アマデトワールですわ。使用マギアは双剣、専用マギアは『ハール-ト&マールート』です。皆さん、よろしくお願いいたしますわ」

「はいお疲れ。うんうん、いい自己紹介だな!!」


 不明だったが、トウマは何故か嬉しそうだ。

 そして、ハスターが挙手。


「ハスター・シャルティーエだ。使用マギアは槍、専用マギアは『グリフォン』だぜ。まあ、トウマのことは認めてる。これからよろしくな」

「おう、よろしくな!!」


 そして、ヴラド。


「……ヴラド・ドラグレシュティ。使用マギアは鎖、専用マギアは『デルピューネ』だ……チッ、よろしくな、センセ」

「先生……なんかいい響きだな!! じゃあ次!!」


 トウマが見たのは、黄色い髪をした縦ロールの少女。

 大きな『槌』を背負った少女は、どこか納得していないような顔をしている……が、自己紹介する。

 スカートをちょこんとつまんで一礼。


「わたくしは、カトライア・ラーズアングリフと申します。使用マギアは『槌』で、専用マギアは『ヘカトンケイル』……先生、よろしくお願いいたしますわね」

「おう!! いや~、でっかいハンマーだな。持てるのか?」

「うふふ。ハンカチのように軽いので、ご安心くださいな」

「そうなのか? ハンカチ……」

「んなわけないでしょ。トウマ、ラーズアングリフ家の人間はみんな、生まれつき怪力なのよ。あのハンマーだって、数トンある重さのマギアなんだから」


 アシェが補足すると、カトライアは睨む。


「アシェ……余計なこと、言わないでくれるかしら?」

「あーらごめんなさい。黙るわねー」


 アシェは手をひらひら振ってマールの隣へ。

 トウマはもう見ていない。どこかオドオドした、線の細い少年を見ていた。


「じゃ、そこのお前」

「あ、は、はい……」


 アシェと同じくらいの、どこかなよなよした女顔の少年だった。

 手には杖を持ち、どこかモジモジしながら言う。


「り、リヒト・ピュリファイです……使用マギアは杖で、専用マギアは『ティターニア』……です」

「おう、よろしくな。ってか、もっとシャキッとしろって。はい、背筋伸ばす」

「はうっ……は、はいぃ」


 リヒトはペコペコしながら背筋を伸ばす。

 そして、腰まで伸びる紫色のロングヘアの少女に目を向けると、少女は静かに目を開く。

 不思議な少女だった。トウマの声が聞こえていないようにふるまっているが、トウマが見るとしっかり視線を向ける。

 そして、小さい声で言う。


「シロガネ・イカズチ……使用マギアは『鞭』で、専用マギア『タケミカヅチ』……」

「鞭? 剣かと思ったけど……まあいいや。じゃあ、よろしくな」

「……ええ」


 アシェ、マール、ハスター、ヴラド、カトライア、リヒト、シロガネ。

 七人を見て、アシェは言う。


「トウマ。アンタ……カトライア、リヒト、シロガネが七大公爵家の人間って知ってたの?」

「いんや? そんなの俺が知るわけないだろ」

「じゃ、なんで……」

「言っただろ。有望そうな連中を集めた、って……お前を含めてこの七人は、才能に溢れた七人だ。俺が鍛えればきっと強くなれる」

「「「「「「「…………」」」」」」」

「とりあえず、リヒト、カトライア、シロガネは俺の強さを知らないから教えてやるか……そうだなあ」


 トウマは周囲を見渡し、マギアの的にするための太い丸太を一本、担いできた。

 それを立て、リヒトに言う。


「リヒト、好きな動物は?」

「え? 好きな動物……そうですね、実家ではヒツジを飼ってます。父の趣味は牧羊なので……ぼくも、自然とヒツジに触れる機会が多くて」

「へー、ヒツジかあ。食うと美味いんだよな」

「え、ええ……うちでは、毛が目的ですけど」

「リヒトってどこの国だ?」

「光の国、チーフテンです。綺麗でいいところなので、先生もぜひ来てくださいね」

「よし。じゃあ次はチーフテンに行くか。お前んとこの通行許可証ってあるか? あるなら欲しい」

「え? あ、はい。ありますけど……」

「待った待った待った!! トウマ、話逸れてる!! ってかアンタ、次は地の国に行くんじゃなかったの!?」

「まあそれもいいけど、気になったところはどこでも行きたい。チーフテンもいいなあ」

「ったく……とにかく、授業」

「おっとそうだ。じゃあ、ヒツジな」


 トウマは、素手で丸太を上空にぶん投げた。

 クルクル回転する丸太。トウマは刀の柄に手を触れる。


「刀神絶技、『彫刻』!!」


 落ちて来た丸太に向かって剣を振るうと、丸太が一瞬で大量の木屑を散らす。そして、落ちてきた丸太だったものは、見事な『ヒツジの彫刻』となり地面に着地した。

 全長一メートルほどの、精巧な木彫りのヒツジだ。色付けすれば本物と見間違えること間違いなしの、専門家が彫り上げたようなヒツジだった。


「と、こんな感じだ。すげえだろ?」

「す、すごい……!!」


 リヒトが目を輝かせ、トウマを見つめていた。

 カトライア、シロガネも少し驚いているようだった。


「……刀剣型、マギア?」

「違うわよ。あれ、本当にただの剣……アイツの剣術よ」


 驚くカトライアに、アシェが言う。

 改めて、恐るべき精度、速度の斬撃だった。

 トウマは刀を鞘に納めて言う。


「一か月。俺がお前たちを鍛えるからな、その間の座学はナシ!! 朝から晩まで、俺の特訓を受けられるぞ!! 一か月後には、一人で月詠教の司祭とタイマン張ってブチ殺せるくらいになるぞ!!」

「「「「「「「!!」」」」」」」」

「あれ、どうした?」

「あのね……司祭をその、殺すとか言わないでよ。執行者来たらどうすんのよ」

「殺すだけだ。むしろ、来てくれたら嬉しいんだけどな」

「……本気だから怖いわ」

「ってわけで、えーと……これから『グロンガ大森林』に行くぞ。そこで一か月のサバイバル生活だ」

「え」


 トウマが歩き出すと、アシェが引き留める。


「ままま、待った!! アンタ、グロンガ大森林って」

「ああ。死滅山脈に行こうと思ったけど、ルドルフに止められたんだよ。だから代わりに」

「大馬鹿!! あのね、グロンガ大森林って、死滅山脈ほどじゃないけど危険地帯のひとつよ!? マギナイツが十部隊遠征に出て、半分が帰れなかったって」

「だからこそ、だろ。ってかアシェ」


 トウマは、アシェの手を掴んで外す。


「強くなるんだろ? だったら、黙ってついてこい。残りの六人も、本気で強くなりたいなら付いてこい……来ないんなら、今日、今、ここで退学な」

「なっ」

「俺は、鍛えろって言われたからそうする。退学の権限も与えられた。好きにやらせてもらう……納得できないならアシェ、オマエでも容赦しないぞ」

「……っ」


 すると、ヴラドが前に出た。


「面白れぇ……おいトウマ、行こうぜ」

「おう。じゃあ、みんな行くぞー」


 トウマが歩き出すと、次にシロガネが、ハスターが続く。

 カトライアがアシェの隣を通りすぎ、リヒト、マールがアシェの前へ。


「アシェ、どうしますの?」

「ぼ、ボク……行くしかないと、思うんですけど」

「……はあああ!! 行くわよ、行くに決まってんでしょ!! ったく、トウマのバカ野郎!!」


 アシェは、ズンズンと歩き出す。

 リヒト、マールもその後を追う。


「さーて、全員、死に物狂いで頑張ってもらうからな!!」


 こうして、トウマの『授業』が、本格的に始まるのだった。

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