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月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~  作者: さとう
第五章 雷の国イスズ

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いざ、雷の国

 雷の国への行き方。

 水の国マティルダを経由し、船に乗って海へ。

 海を渡った先にある大陸が雷の国イスズ。

 シロガネから説明を聞き、トウマは驚いた。


「……ということです」

「いやマジで? 大陸って……俺、知らなかったぞ」

「昔は、雷の国は水の国マティルダの領地にありました。しかし、新天地を夢見たイスズ人が海を渡り、雷の国イスズとなったとされています」

「わたくしも、お父様から聞いたことがありますわ。水の国マティルダは本来、領地の半分ほどの大きさだったと」


 マールも頷く。

 トウマは「へぇ~」と驚いていた。


「セイレンスのやつ、海の向こうに大陸があるなんて知ってたのかなー」

「ご存じなかったと思われます。国家を制定したセイレンス様がお亡くなりになったあと、イスズ人の祖先は新天地に向かったとのことですから」

「へー、アシェは知ってたか?」

「……さーね」


 アシェはそっぽ向きお茶をすする。

 その様子に、カトライアがトウマに耳打ち。


「ちょっと、アシェ……どうしたのよ」

「いやー、ちょっとやっちまってな。俺が悪いんだ」

「はぁ?」

「そこ、コソコソしないで普通に話しなさいよ」


 アシェに睨まれ、カトライアとトウマは離れた。

 マールはカトライアをチラッと見ると、カトライアは小さく頷いた。


 ◇◇◇◇◇◇


 夕方。

 トウマは、カトライアとマールに呼び出され、ビャクレンと二人で町のカフェに来ていた。

 個室を取り、注文を済ませたあと本題へ。


「で……トウマ、アシェに何を言ったの?」

「いやあ……」


 トウマは話した。

 男として女を知りたいこと。アシェに頼んだこと。アシェに断られたのでビャクレンに頼もうとして『邪魔だけはするな』と言ったこと。

 それを言ったら、アシェが不機嫌になったことだ。

 話を聞き、マールとカトライアは顔を合わせため息を吐いた。


「トウマ、あなたが悪いわ」

「ええ、これ以上なく」

「……そうらしいんだよなあ。俺、何を間違えたんだ?」

「あのねー……『これから抱かせてください、ダメなら別の女のところ行くんで邪魔しないでね』なんて、普通の女は怒るに決まってるでしょ!!」

「うぐ」

「トウマさん。よく聞いてくださいね……あなたには、『愛』が足りませんわ!!」

「あ、あい?」


 愛。

 かつて、『愛神』と呼ばれたセイレンス。

 トウマを愛していた、と言われている。だがトウマにとってセイレンスは『じゃじゃ馬なお嬢さん』だ。愛という意味は理解しているトウマだが、自分で何かを愛したことは……一つだけあった。


「愛。俺は……コンゴウザンの作った刀を美しいと思った。これは愛だよな」

「「違う(いますわ)!!」」


 二人に詰め寄られ、トウマはのけぞる。

 するとビャクレンが言う。


「トウマ様。アシェの言うことが理解できないのでしたら、それはそれでいいのでは?}

「え……」

「トウマ様は『愛』を知らずに戦ってこられましたが、何か不都合がありましたか? 天照十二月を相手にしても、何の問題もございませんでした。なら……気にしなくてもよろしいのでは?」

「…………」

「私は、トウマ様に身も心も捧げます。トウマ様の強さを知るため、トウマ様がこの身を抱くことで更なる境地に至れるのでしたら、何の問題もございません」

「……ビャクレン」

「トウマ様。私は、あなたの剣技を『愛』しています。その愛をさらに深めることのお手伝いができるのでしたら……私は、幸せです」

「…………」


 トウマは、胸に何かを撃ち込まれたように、ズシッとした重さを感じた。

 だが、ビャクレンを手で制する。


「ありがとう。お前の愛……すげえと思う。でも、まだだ。俺は未熟だ……アシェの言うことをしっかり理解しないと、ダメな気がする」

「……トウマ様」

「よし!!」


 トウマは立ち上がり、三人に頭を下げる。


「ありがとうみんな!! 俺……もっと考えるよ。そして、愛がわかったら、お前らを抱く。男としてな!!」

「はい!!」

「え……わ、私も?」

「まあ……ふふ、頑張ってくださいね」

「おう!! じゃ!!」


 トウマは出て行った。

 残されたマールたちは言う。


「……ねえマール、あなたなんか喜んでない?」

「ふふ。トウマさん、カッコイイですしね。わたくし……覚悟が決まれば、その」

「トウマ様。私は、お待ちしています」


 ◇◇◇◇◇◇


 数日後。

 出発の準備を終え、トウマたちは馬車の前にいた。

 見送りにはマール、カトライア。


「じゃあ、行ってくる!!」


 トウマは馬車に乗る。

 そして、シロガネは頷いて馬車へ。

 アシェも乗ろうとしたが、カトライアに手を引かれた。


「わ、なに?」

「……トウマさんもずっと悩んでますわ。アシェ、あまり厳しいこと、言わないでくださいね」

「……アンタらがトウマに相談受けたの知ってたけど」

「アシェ、トウマはあなたのこと嫌ってないわ。むしろ、好きだと思うわよ」

「カトライア……」

「トウマが愛を知ったら、あなたどうするの?」

「……んー」

「トウマもだけど、あなたも考えた方がいいわよ。受け入れる準備とかね」

「はぁ!?」


 カトライアに背を押され、アシェは馬車に乗り込んだ。


「おう、なんか喋ってたのか?」

「…………まあ」


 なんとなく、トウマと顔を合わせ辛くなるアシェだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 馬車は、水の国マティルダに向かって走り出す。

 シロガネは瞑想、トウマは欠伸をし、アシェは『イフリート』をいじっていた……が、なかなか集中できなかった。


「……あーもう」


 それも、マールとカトライアが変なことを言うからだった。

 トウマをチラッと見ると、刀を見ていた。


「ん、なんだ」

「い、いや……べつに」


 アシェは、水の国マティルダを抜けるまで、一人悶々とするのだった。

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