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月を斬る剣聖の神刃~剣は時代遅れと言われた剣聖、月を斬る夢を追い続ける~  作者: さとう
第四章 支配解放組織『斬月』

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月光の三聖女②

 月にて。

 月面にあるドーム状の建物の一つに、マサムネはいた。

 ドーム内の中心にあるベッドで横になっており、周囲にはいくつものディスプレイが現れては消える。

 そして、ベッドから少し離れた位置……半透明の球体が浮いていた。 

 球体の中には、一人の女性がいた。

 肩が剥き出しで露出の多いドレスを着て、白いマントを身に着けていた。

 柔らかそうな髪は丁寧にまとめられ、帽子を被り、どこか神秘的な雰囲気を漂わせている。

 年齢は二十代半ば程度。グラマラスな美女であり、球体の中で無数のディスプレイをタッチ……作業を終えると、ゆっくり床に着地した。


「順調、ね」


 柔らかな、だがどこか冷たい声だった。

 女性は腕組みをする……すると、どこからか黒髪の少女が現れた。


「やっぱり、パンドラだった」

「これはこれは、ルナエクリプス様」


 女性……パンドラは、ゆっくりと一礼。

 ルナエクリプスはクスっと微笑み、ベッドで寝ているマサムネを見た。


「あの子、あなたが作った(・・・)んだ」


 パンドラはニコッと微笑み頷く。


「ええ。ワタクシの最高傑作、『フラスコの月人(ルナ・ホムンクルス)』です。ルナエクリプス様……あなたから頂いた『血』で作った、『斬神』の摸倣人です」

「へえぇ~、おもしろいね」


 ルナ・ホムンクルス。

 千年以上前……トウマは『月神』を殺した。その時は無傷とはいかず、焼かれ、叩かれ、斬られ、無傷とはいかなかった。

 その時、かつての『月詠教』の生き残りが、トウマの血や髪、皮膚などを回収し保存していた。

 そして、それらを使い、天照十二月『暦三星』の一人、『弥生月』のパンドラが作り上げたのが、マサムネという存在だった。

 すると、マサムネが起き上がる。


「ふァァァぁぁ……ん? ああ、母さん。それと、ルナエクリプス様……あ~よくねた」

「おはよう、マサムネ。調子はどう?」

「ん、いい感じ。へへ、すぐにでも身体ぁ動かしたいぜ。トウマの動き、頭ン中に焼き付いてるし……って、あれ?」


 マサムネは妙な違和感を感じた。

 トウマとの戦いは完璧に覚えている。だが、それとは別に、『知らない戦いの記憶』が頭の中にあった。

 全く知らない剣士、月詠教の剣術などが鮮明に思い出せる。

 パンドラは言う。


「あなたの頭に、地上の剣術使いと、月詠流剣術のデータを入力したのよ。『斬神』のデータと合わせて、あなただけの剣を作るといいわ」

「さっすが母さん。へへ、これで『蛮神剣技』を作れるぜ!! じゃあ、ちょっくら訓練場行ってくる!!」


 マサムネは、『地滅』と『呉霞』を手にすると、ドームから出て行った。

 ルナエクリプスは言う。


「あの子、強くなるね。ファルカもうかうかしてられないかも。パンドラ、あなたも」

「ワタクシは直接戦闘よりも、頭脳戦闘が得意なので。ふふ……剣を振るうだけでは、ワタクシには勝てないかと」

「あ、頭脳で思い出したけど、ポリデュクスとカストル、負けちゃった」

「まあ……ポリデュクス。分野は違えど、ワタクシと並ぶ頭脳と思っていたのですが」


 パンドラは頬に手を当て驚く……が、すぐに笑顔を浮かべた。


「まあ、構いません。それより……ルナエクリプス様、『斬神』はどうなさるので?」

「ん~……たぶん、五位、七位、九位の子を当てても無駄っぽいね。パンドラか、ヒルダか、パンドラじゃないと相手できないかな?」


 ルナエクリプスが考え込んでいると、パンドラは言う。


「では、一つ提案が」

「ん、なになに」

「……『四死舞刃(ラ・ムエルテ)』を使うのです」

「あ、そっか。でも……あの四人は、私たち『月光の三聖女』と同列だから、私の命令じゃ動かないよ」

「なら、理由があればいい。彼ら彼女らが動くのは、『月神様の脅威となるべき存在』が現れた場合。『斬神』はなぜか例外扱いですが……」

「あ、それは簡単。『斬神』を殺すのは月神様だって、あの四人は思ってるの。だから動かない」

「なるほど。では……『大地の四神』に匹敵する人間がいるとしたら?」

「え? いるの?」

「はい。私の見立てでは、三人。ふふ……この情報を利用して、断罪者最強の四人に動いていただきましょうか」

「いいね。で……誰、それ?」


 パンドラが手を差し出すと、三枚のディスプレイが浮かび上がる。

 そこには、三人の顔が映し出されていた。


「一人は、『鋼神』の子孫、グラファイト……そしてもう一人は『脳神』の子孫、アシュタロッテ・イグニアス」


 グラファイト、アシェの映像だ。

 そして、三枚目。


「三人目は……『ミドリ・ハバキリ』」

「ハバキリ?」

「ええ。『斬神』の血を引く、雷の国イスズの女王です。彼女は『愛神』に匹敵するカリスマがあります。ふふ……」


 三枚目に映っていたのは、まだ十六歳ほどの少女だった。


 ◇◇◇◇◇◇


 とあるボロボロのドームを、一人の男が歩いていた。


「……ォォォ」


 男は、ボロボロの黒衣を見に纏い、手には大きなランプがあった。そして……もう片方の手には鎖が握られており、その鎖につながれていたのは『棺桶』だった。

 男は、真っ暗な放棄されたドームを、ランプ片手に、棺桶を引きずって歩いていたのだ。

 ボロボロのフードからは、紫色の瞳が見える。呼吸をするとゼイゼイと嫌な音がした。

 そして、男の前から、頭のてっぺんからつま先までを包帯で巻きいた女が歩いてきた。

 女は、口元、目だけが露出している。頭から緑色の髪がはみ出しており、包帯の上からボロボロの黒衣を羽織っていた。

 男、そして女は歩き……互いに向き合う。


「……情報が、はいった」


 男が言う。


「……断罪。断罪。断罪?」


 女が、狂ったように同じ単語を繰りかえす。

 男が頷く。


「月神様の脅威となる、人間……『斬神』」

「そして、それに連なる、人間」


 男と、女の口が歪む。


「……どちらが、行く?」

「二人で行く。『斬神』も、いるから……ダメ?」

「かまわん。では、参ろうか」


 断罪者最強の四人、『四死舞刃(ラ・ムエルテ)』の二人。

 男の名は、『棺桶』のネフティス。

 女の名は、『葬儀』のネルガル。

 

 二人は、闇に包まれたドームを歩き、闇に包まれ消えて行った。

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― 新着の感想 ―
こんにちは。累計100話到達おめでとうございます! やはりマサムネは人造人間だったか…記憶や知識調整出来る→クローンとホムンクルスの良いとこ取りって感じですね。 しかし次々強敵が列を作って登場待ちし…
「ん~……たぶん、五位、七位、九位の子を当てても無駄っぽいね。パンドラか、ヒルダか、パンドラじゃないと相手できないかな?」 パンドラが2回……もう1人は誰?
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