第五章:死の舞踏、アステロイド・ワルツ
紅蓮の閃光が、死と静寂に支配されたカストル宙域の暗黒を切り裂いた。
それは、絶望の淵から立ち昇る反撃の狼煙か。
あるいは、自らを燃やし尽くしてでも道を切り開かんとする、流星の如き決意の顕現か。
ソフィ率いる第8高速機動戦隊、その先頭に立つ旗艦『アルテミス』は、常識という名の重力圏を振り払い、物理法則さえも嘲笑うかのような恐るべき速度で、敵艦隊――鉄の髑髏旅団が形成する、難攻不落と思われた包囲網の中枢へと、文字通り一直線に突き進んでいた。
そのあまりにも大胆不敵な、いや、狂気としか形容しようのない突撃は、数において圧倒的に優位に立ち、勝利を確信していたはずの敵艦隊を、一瞬にして驚愕と混乱の渦へと叩き込んだ。
彼らの周到に計算され尽くした包囲殲滅計画には、このような変数――予測不能な速度と軌道で、しかも最も防御の厚い心臓部を目掛けて突撃してくる「赤い悪魔」の存在など、含まれていなかったのだ。
「敵艦隊前衛、迎撃開始! 前方及び左右より、高エネルギーレーザー及び実体弾、多数接近!」
『アルテミス』のブリッジに、戦術オペレーターの緊迫した声が響き渡る。
メインスクリーンには、まるで灼熱の雨のように降り注ぐ敵の攻撃を示す無数の光点と、その間隙を縫うように突き進む自艦の予測軌道が、目まぐるしく表示されていた。
常人ならば、その情報量だけで意識を失いかねないほどの、凄まじい光景であった。
「回避運動、パターン・デルタ・セブン! ラサール、タイミングを合わせて右舷スラスター、パルス噴射!」
指揮官席に座るソフィの声は、極限の集中状態にある者のそれであった。冷静でありながら、その奥には燃えるような闘志が宿っている。彼女の指示は淀みなく、そしてコンマ数秒のずれも許されないほどの精密さで発せられる。
「了解! 回避パターン、デルタ・セブン実行! 右舷スラスター、噴射!」
艦長席のラサールもまた、冷静に、しかし額には汗を滲ませながら、ソフィの意図を完璧に読み取り、ブリッジクルーに的確な指示を飛ばす。航海長が祈るように操舵輪を握りしめ、機関士が悲鳴を上げるエンジンを巧みに制御する。
真紅の艦体は、まるで意思を持った生命体のように、あるいは、熟練の踊り子が激しいリズムに合わせて舞うかのように、驚異的な機動を開始した。
右に傾き、左にロールし、急加速と急減速を繰り返しながら、降り注ぐ死の光条を紙一重で躱していく。
太いレーザー光線が、ほんの数メートル横を灼熱の残像を残して通過し、実体弾の破片が装甲を掠めて火花を散らす。
ブリッジは、回避運動による激しいGと、至近距離での爆発による衝撃波で、絶えず激しく揺さぶられた。アラート音がけたたましく鳴り響き、クルーたちの短い悲鳴や、息をのむ音が交錯する。
「前方、巨大アステロイド群、急速接近! 回避不能!」
航海長の声が、悲鳴に近いものになる。スクリーンには、不規則な形状をした巨大な岩塊が、まるで絶望の壁のように迫ってくるのが映し出されていた。
敵の攻撃を避けるために選択した航路は、同時に、この「悪魔の三角宙域」の名の由来となった、危険なデブリ帯の只中へと彼らを導いていたのだ。
「落ち着いて!」ソフィの声が、再びブリッジに響く。その声には、不思議と、聞く者の心を鎮める力があった。「見たまえ、あの岩の隙間を! 抜ける!」
彼女が指し示したのは、複数の巨大アステロイドが複雑に重なり合う、僅かな隙間。常識的に考えれば、高速で航行する駆逐艦が通り抜けられるような場所では到底ない。
「しかし、少佐! 危険すぎます!」ラサールが思わず制止の声を上げる。
「危険? ここまで来て、安全な道なんてどこにもないさ!」ソフィは、不敵な笑みを浮かべた。「やるしかないんだよ、ジャン! 機関最大! 全スラスター、微調整用意!」
ソフィの瞳には、もはや恐怖の色はなかった。それは、自らの才能と愛機『アルテミス』の性能、そしてそれを支えるクルーたちへの絶対的な信頼に裏打ちされた挑戦者の輝きであった。
彼女の脳内では、アステロイドの形状、自艦の速度、慣性、敵の攻撃予測、その全てが超高速で計算され、最適解が導き出されていた。
『アルテミス』は、ソフィの指示通り、僅かな減速もせず、その巨大な岩塊の迷宮へと突入していく。
右舷翼が岩肌を掠め、激しい火花を散らす。左舷下部のセンサーアレイが小さなデブリに衝突し、破砕される。
だが、致命的な衝突は、まるで奇跡のように回避され続けた。
艦体は、岩と岩の間を、信じられないほどの精度で縫うように駆け抜けていく。
それは、もはや操艦技術というよりは、芸術の域に達した、あるいは、神業としか言いようのない光景であった。
ブリッジのクルーたちは、固唾を飲んでその光景を見守り、そして、自らの指揮官が持つ人知を超えた能力に、改めて畏敬の念を抱かずにはいられなかった。
「抜けた…! アステロイド群、突破!」
航海長の安堵と興奮が入り混じった声が、ようやくブリッジに響いた。クルーたちからも、「やった!」「信じられない…!」といった短い歓声と安堵のため息が漏れる。
だが、息つく暇はなかった。アステロイド帯を抜けた先には、さらなる敵の迎撃網が待ち構えていたのだ。
敵主力艦隊が、ようやく混乱から立ち直り始め、その無数の牙を『アルテミス』へと向け始めていた。
敵主力艦隊からの砲火は、前衛部隊のそれとは比較にならないほど、苛烈で、そして正確であった。
大型巡洋艦や戦艦クラスの主砲から放たれるエネルギー奔流は、回避しきれぬ絶対的な質量を持って『アルテミス』へと迫る。
「右舷シールド、臨界突破! 消失します!」
「第二装甲区画に被弾! 火災発生!」
「機関室、衝撃により出力一時低下!」
ブリッジに、次々と絶望的な報告が飛び込んでくる。
艦体が、これまでとは比較にならないほどの激しい衝撃に見舞われ、大きく傾いた。赤い非常灯が点滅し、警告アラームが耳障りな音で鳴り響く。メインスクリーンの一部は表示不能となり、ブリッジの壁からは火花が散り、焦げ臭い匂いが立ち込める。
「くそっ…!」ソフィは、衝撃で揺れる指揮官席で、悪態をついた。それでも、彼女の声は冷静さを失ってはいなかった。
「ラサール、被害状況の把握を急いで! 各部署、ダメージコントロールを最優先!」
「了解! 全クルーに通達、ダメージコントロール・プロトコル発動! 負傷者は最寄りの医療ベイへ!」ラサールもまた、負傷した額から流れる血を拭いもせず、的確な指示を飛ばす。
艦内各所では、地獄のような状況が展開されていた。
第二装甲区画では、被弾箇所から吹き出した炎が通路を舐め、隔壁が赤熱していた。
ダメージコントロール班の班長、ハンス曹長は、まだ若い部下たちに叫んだ。
「怯むな! 延焼を食い止めろ! ここを突破されたら、艦は終わりだぞ!」
彼は、自ら耐熱防護服をまとい、消火剤を噴射しながら炎へと突っ込んでいく。
若いクルーの一人が、熱と煙に恐怖し、立ちすくんでいた。
「で、ですが、曹長! この熱では…!」
「英雄の艦で死ねるなら本望だ! それとも、ここで焼かれて犬死にするか!? 手を動かせ、新兵!」
ハンスの叱咤に、若いクルーは涙を振り払い、消火ホースを握りしめた。彼らは、互いを励まし合い、恐怖を押し殺し、必死に艦を守ろうと奮闘していた。
機関室でも、同様の死闘が繰り広げられていた。
艦の心臓部であるエンジンは、度重なる衝撃で不安定な状態に陥り、出力が低下し始めていた。
機関長の老練な技師、マクファーソンは、油と汗にまみれながら、複雑な制御パネルを操作し、部下たちに指示を飛ばす。
「圧力が下がりすぎだ! バイパスを開け! 冷却材を循環させろ! あの『お嬢様』を、こんな所で止まらせるわけにはいかんのだ!」
彼の脳裏には、この艦に搭載された、まだ実験段階の新型エンジンの設計図と、そして、それを信じて無謀な突撃を続ける若き指揮官の姿があった。彼らは、技術者としての誇りを賭けて、この艦を飛ばし続けなければならなかった。
医療ベイは、次々と運び込まれる負傷者で溢れかえっていた。
軍医と衛生兵たちは、眠る間もなく、血と消毒液の匂いが立ち込める中で、懸命の治療を続けていた。
呻き声、叫び声、そして、静かに息を引き取る者の最後の吐息…。それは、戦争の最も残酷な現実を凝縮した場所であった。
だが、彼らもまた、絶望的な状況の中で、一人でも多くの命を救おうと、最後まで諦めなかった。
ブリッジでは、ソフィが冷静に戦況を見極めながら、的確な指示を出し続けていた。
被弾箇所を庇い、敵の攻撃が集中する方向を予測し、最小限の被害で切り抜けるための機動をラサールに伝える。
「左舷エンジン、出力70パーセントで維持! 敵の射線軸からずれるように、ヨーイングしながら前進!」
「了解! 左舷70パーセント、ヨーイング開始!」
彼女の額にも汗が光り、その表情には隠しようのない疲労の色が浮かび始めていた。
だが、その瞳の奥の輝きは、少しも失われてはいなかった。
彼女は知っていた。自分一人の力では、この嵐は乗り切れない。
艦長が、航海士が、機関士が、砲術士が、ダメージコントロール班が、医療班が、そして名もなき全てのクルーが、それぞれの持ち場で命を懸けて戦っているからこそ、『アルテミス』はまだ飛んでいられるのだと。
その信頼が、彼女に最後の最後まで諦めない力を与えていた。
しかし、奇跡は永遠には続かない。
ソフィの神業的な操艦とクルーたちの奮闘も、圧倒的な物量差の前には、徐々に限界を迎えつつあった。
そして、その代償は、彼女と共にこの死地に飛び込んだ、僚艦の勇者たちの上に、より残酷な形で降りかかった。
『アルテミス』に続く僚艦たちもまた、敵の熾烈な迎撃砲火に晒され、必死の抵抗を続けていた。
オルセン艦長が指揮する駆逐艦『ヘラクレス』は、老練な操艦技術で敵弾を掻い潜りながらも、その旧式なシールドはついに限界を超え、艦体各所に次々と被弾していく。
「シールド消失! 第三エンジン大破!」
「艦長! これ以上の戦闘は…!」副長の悲鳴に近い声が響く。
オルセンは、苦渋の表情で前方の『アルテミス』を見据えた。真紅の艦体は、なおも敵中枢へと突き進んでいる。
「…あの若き獅子は、まだ諦めてはおらん…」彼は、通信を開いた。
「ラサール艦長、聞こえるか! こちら『ヘラクレス』! 我々はこれ以上は持たん! だが、最後の奉公をさせてもらう!」
「オルセン艦長! 無茶です!」ラサールの制止の声が響く。
「無茶かどうかは、歴史が決めることよ!」オルセンは、穏やかに、しかし力強く言った。
「ラサール艦長、あの乙女を…ベルナルド少佐を頼んだぞ! 彼女こそ、連合の…いや、銀河の未来の光となるやもしれん! 我らが盾となり、道を開く!」
そう言うと、『ヘラクレス』は、残された最後の推進力を振り絞り、まるで自ら死地に飛び込むかのように、『アルテミス』を狙う敵巡洋艦の射線へと躍り出た。
数秒後、眩い閃光が迸り、『ヘラクレス』は、その艦名にふさわしい、英雄的な最期を遂げた。
「オルセン艦長…!」ラサールは、歯を食いしばり、その名を呼んだ。ブリッジは、悲痛な静寂に包まれた。クルーたちの中には、目頭を押さえる者もいた。ラサール自身も、尊敬する老将の死に、深い悲しみと、必ずや彼の犠牲を無駄にはしないという強い決意を抱いていた。
ソフィもまた、その瞬間をスクリーンで見ていた。彼女の瞳が、一瞬、深い悲しみに揺れた。だが、彼女はすぐに顔を上げ、前を見据えた。「…彼の死を、無駄にはしない…!」その声は、決意を新たにする響きを持っていた。
だが、悲劇は連鎖する。
別の僚艦『ペルセウス』が、アステロイドとの衝突を避けようとしたところに、敵ミサイルの集中攻撃を受け、制御不能に陥り爆散。
『アンドロメダ』もまた、敵の大型ビーム兵器の直撃を受け、跡形もなく消滅した。
第8高速機動戦隊は、その数を急速に減らしていく。
ラサールは、次々と入る僚艦喪失の報告に、冷静さを保ちながらも、その心は張り裂けんばかりであった。彼は、ソフィに、震える声で損害を報告するしかなかった。
ソフィは、その報告を、目を閉じて静かに聞き、そして、より一層強く、前方の敵を見据えた。失われた命の重さが、彼女の肩に、そして魂に、さらに重くのしかかる。
だが、彼女は止まれない。止まることは、彼らの死を無意味にすることに他ならなかったからだ。
一方、敵艦隊旗艦『アラクネ』のブリッジでは、司令官ヴォルフガング・シュタイナーが、信じられないものを見るかのように、メインスクリーンに映し出される『アルテミス』の神がかり的な動きを凝視していた。
彼の顔からは、先ほどまでの余裕と嘲笑は完全に消え去り、代わりに、驚愕と、そして次第に強まる焦燥の色が浮かんでいた。
「馬鹿な…! あの赤い艦は、一体何なのだ!? なぜ墜ちん! 我が艦隊の集中砲火を、あれほどまでに掻い潜るなど、人間の操縦ではない! まるで…まるで悪魔か、あるいは…!」
彼は、言葉を失いかけた。彼の長年の経験と、絶対的な自信を持っていた自身の戦術理論が、目の前で起きている現実によって、根底から覆されようとしていた。
計算が通用しない。予測が当たらない。まるで、盤上でチェスの定石を弄んでいたところに、突如として未知の、そして強力すぎる駒が現れたかのようであった。
「副長! 何をしている! 全艦に伝えろ! あの赤い悪魔を、何としても撃墜しろ! 奴一隻のために、我が計画を狂わされてたまるか!」
シュタイナーは、苛立ちを隠せずに怒鳴り散らした。彼の額には汗が滲み、その瞳には、もはや冷静さのかけらもなかった。
彼の脳裏には、かつて帝政軍で、彼の才能を妬む凡庸な貴族たちによって、不当な評価を受け、追放された屈辱的な記憶が、忌々しいフラッシュバックのように蘇っていた。彼は、再び、理解不能な「何か」によって、自身の計画が、野望が、打ち砕かれるのではないかという、根源的な恐怖に囚われ始めていた。
「ですが、提督! あの艦は異常な速度と機動で…! 攻撃が当たりません! むしろ、我が方の陣形が…!」
副官ハインツが、怯えたような声で報告しようとするが、シュタイナーはそれを聞こうともしなかった。
「言い訳は聞かん! 損害を顧みるな! 全火力であの赤い悪魔を叩き潰せ! 今すぐにだ!」
彼の命令は、もはや冷静な戦略的判断ではなく、焦りと怒りに駆られた、半ばヒステリックな絶叫に近かった。
シュタイナーの、冷静さを欠いた無差別な集中攻撃命令は、ただでさえ『アルテミス』の予測不能な突撃によって混乱していた敵艦隊の指揮系統を、さらに深刻な麻痺状態へと陥れた。
前衛、中衛、後衛の連携は完全に失われ、一部の艦艇は、味方であるはずの艦の射線に入り込み、同士討ち寸前の危険な状況すら発生していた。
シュタイナーに忠誠を誓うというよりは、彼の恐怖によって支配されていた兵士たちの士気は、この混乱の中で急速に低下し始めていた。
「何をしている! 避けろ! 味方だぞ!」
「命令が錯綜している! どちらへ向かえばいいんだ!」
「もうダメだ! 逃げろ!」
敵艦隊の通信チャンネルには、そのような悲鳴や怒号が飛び交い始めていた。
かつて鉄の規律で統制されていたはずの「鉄の髑髏旅団」は、その名の由来となった結束力を失い、烏合の衆へと成り下がりつつあった。
そして、この敵艦隊全体の混乱こそが、ソフィが狙っていたものであった。
かつて難攻不落に見えた包囲網には、今や明らかな亀裂が生じ、無視できないほどの隙間が生まれていた。
その様子を、遠く、アステロイドの影に身を潜めながら、息を殺して見守っていた者たちがいた。第17駆逐隊の、かろうじて生き残った数隻の駆逐艦。
その旗艦『プロメテウス』のブリッジで、重傷を負いながらも指揮を執り続けていたグレイブス中佐は、メインスクリーンに映し出される、敵艦隊の混乱と、その中心で獅子奮迅の戦いを続ける真紅の艦影を、信じられないものを見るような目で見つめていた。
「…まさか…あの救援信号が、本当に届いていたとは…そして、あの赤い艦は…一体…?」
彼は、傍らに立つ、同じく生き残った兵曹長レックスに告げた。
「見ろ、レックス! 敵は混乱している! 包囲に穴が開いた! 今しかない! 我々は、あの赤い艦が、命懸けで作ってくれた、この千載一遇の好機を逃してはならん!」
一方、『アルテミス』は、敵の混乱に乗じて、さらに深く、敵艦隊の中枢へと肉薄していた。
艦体はボロボロで、無数の傷跡が刻まれ、満身創痍であったが、その速度は未だ衰えていない。
そして、ついに、ソフィの鋭い瞳が、前方に異様な威容を放つ巨大な敵艦――蜘蛛の名を冠するシュタイナーの旗艦、『アラクネ』の姿を、はっきりと捉えた。
「…見つけた…!」
ソフィの唇から、静かな、しかし確かな闘志を込めた呟きが漏れた。
彼女の視線は、まるで獲物を捉えた猛禽のように鋭く、敵旗艦の一点に集中していた。その視線の先には、この惨劇を引き起こした元凶がいる。そして、この戦いに終止符を打つための鍵がある。
戦場の趨勢は、未だ予断を許さない。敵の数は依然として多く、『アルテミス』の損傷も深刻である。
だが、絶望的な状況の中で、紅き流星がもたらした一筋の光は、死と静寂に支配されていたこのカストル宙域に、確かな変化の風を吹き込み始めていた。次なる一手は、どちらが先に打つのか。息詰まる攻防は、最終局面へと向かいつつあった。