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明希のライン。

「フローライト」第九話。

翔太から電話が来た。散々ラインを無視していたのだ。どうしようと思ったけれど出てしまった。


「もしもし?」と出ると翔太が「ごめん、電話しちゃった」と言った。


「明希は何であそこにいたの?」と聞かれる。


「あのバンドのボーカルの人が彼氏なの」と言った。隠す気はなかった。


「えっ、そうなんだ。天城利成だろ?」


「知ってるの?」


「ちょっと有名人だよ。ユーチューブで」


「そうなんだ」


「明希はどうやって知り合ったの?」


「幼馴染で・・・」


「え?天城と?」


「うん・・・」


「あ、それってまさか前に言ってた再会した幼馴染?」


「うん、そう」


「そっか、いつからつきあってんの?」


「秋くらいから」


「そうなんだ」


そこで一旦沈黙になった。それから翔太が言う。


「俺さ、専門やめるかも」


「えっ?何で?」


「どうも合わないっていうかさ・・・」


「そうなの?でもせっかく今まで頑張ったのに」


「そうなんだけど・・・何かね。・・・で、俺も趣味だけどバンド組んだりしてて、そのつてでさ、こないだはライブ行ったんだ」


「そうなんだ、全然きづかなかった」


「結構人いたからな。明希は〇〇〇バンドまだ好き?」


「うん、好きだよ」


「そっか。俺も・・・」


「うん、翔太音楽やりたいって言ってたもんね。じゃあ、音楽の道に行くの?」


「いや、バンドは趣味。俺は作曲とかしてるからその方がいいんだよ」


「作曲?すごいね」


「ま・・・・・・」


そこでまたお互いに沈黙・・・。


「あのさ・・・明希、ごめんな。あの時は」


翔太が先に口を開いた。


「・・・いいよ、もう」


「・・・会えない?」


「えっ?」


びっくりして固まった。


「彼氏いるのはわかったけど、つきあってほしいとかいうんじゃないから、ちょっとだけ」


「・・・・・・」


「ダメ?」


翔太の意図を図りかねた。会ってどうするの?


「その・・・会ってどうするの?」


「どうもしない。謝りたいだけ」


「それならもういいよ」


「じゃあ、一回だけお茶してよ」


「んー・・・」


「一回だけだからいいだろ?」


「んー・・・ま・・・一回だけなら」


「良かった。じゃあ、今度の土曜日は?」


「午前中ならいいけど・・・」


午後からは利成のアトリエに行く約束だった。


「わかった。サンキュ」


 


土曜日の日の午前、翔太とよく行っていたカフェで待ち合わせた。少し遅れて行くと、翔太が先にいて待っていた。


「遅れてごめん」と言うと、「いいよ。コーヒー?」と聞かれる。「うん」と言うと、「待ってて」と翔太がコーヒーを買いに行った。


翔太は二人分のコーヒーを手に戻ってきて「はい」とコーヒーの入ったカップをテーブルに置いた。


「あ、お金・・・」


「いいよ、おごり」


「でも・・・」


「俺が無理言って来てもらったんだからいいよ」


「ん・・・ありがと」


それから翔太が看護師は自分に向いてないという話や、親と喧嘩して今大変だという話をしていた。


「明希は専門の方は順調?」


「・・・まあ・・・」


「そっか、良かったな」


「うん・・・」


話が途切れて時刻を見るともうお昼を過ぎていた。そろそろ行かなきゃと思い、「じゃあ・・・」と席を立とうとした時にいきなり言われた。


「明希、俺のこと許してくれない?」


「え?」


(許すって・・・)と思った。ほんとのところ利成との交際であの時のことはほとんど思い出さなくなっていたのだ。


「もう無理かな?」と翔太が眉を寄せていた。


「許すっていうか・・・もうほんといいよ。翔太が悪かったわけじゃないんだし・・・」


「いや、俺が悪かったよ。あの後ずっとそう思ってた」


「うん、だからもういいよ。私の方は平気だから」


「天城がいるから?」


「え?その・・・ま、そうかな」と答えたら翔太がちょっとうつむいた。


「じゃあ」ともう一度言って立とうとしたら今度は腕をつかまれた。


「俺とはもう絶対ダメ?」


「俺とはって?」


「もう俺のところには戻ってきてくれない?」


「え?」とまた驚く。


「少しも望みない?」


「だって・・・翔太は・・・」


そこまで言ってからもう一度椅子に座って声をひそめた。


「私ができないのがダメだって・・・」


「ん・・・ごめん。反省してる」


「反省なんて必要ないよ。私が悪いんだから」


「いや、俺が・・・ゆっくりやろうなんて言っておいて・・・ひどいことした」


「いいよ。大丈夫。翔太はもう気にしないで」


「・・・天城とは?」


「何?」


「できてんの?」


「・・・・・・」


どうしようかと思った。さすがに翔太には関係ないじゃないかと思って黙った。


「ごめん、もう行くね」と立ち上がると、翔太も立ち上がって「俺も出るから」と言った。


店から出て「じゃあ」と言った。もうこれで終わり・・・翔太とはと思った。


「ラインもダメ?」


だけど更に食い下がってくる翔太にちょっと呆れた。


「ラインしてどうするの?」


「たまに話したいじゃん」


「・・・ラインだけ?」


「うん」


「それならいいけど・・・」


「良かった」と嬉しそうな翔太を見て出会った頃を思った。あの時も確かこんな笑顔で・・・。


 


利成に言うべきか悩んだ。元カレとラインだけでも何か気分悪くないかな・・・。そもそも何で自分は承諾してしまったのだろうと少し後悔した。


結局利成に言った。言ったら普通に「いいよ」と言われた。


「いいの?」


「明希がしたいんでしょ?」


「え、違うよ」


「じゃあ何でオーケーしたの?」


そう聞かれてほんとにそうだと思った。


「そうだよね・・・今からでもブロックしようかな・・・」


“ブロックしなよ”と利成に言って欲しかった。そしたらすぐにできたのに・・・。


「明希が考えて答えを出しなよ」


「・・・・・・」


利成はいつも否定しない。けど、否定しないというのはすべて肯定しているというわけではなかった。利成なりの答えは持っていた。でもそれを押し付けたりしない。自分で考えてというのだ。


結局翔太のラインはそのままになったまま、季節は再び春に移行していった。

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