第27話 動くガラスの彫像、記憶のモノローグ
『三年前、家で暇だったからピアノを練習してたんだけど、一曲弾き終わらないうちに親に近所の祭りに連れて行かれた』
通り過ぎると、いくつかの鏡の破片が集まり、動くガラスの彫像を形成した。まるで当時のシーンを生き生きと演じるかのようで、さらにはナレーションの声も聞こえてきた。
その声は、間違いなく宮野くんの声だった。
『気乗りしないまま、ラブラブな両親に付き合って祭りを回ったけど、正直ちょっと疲れてて、帰りたかった』
『花火大会が始まる大体10分前に、両親について芝生広場に場所取りに来た。リンゴ飴をかじりながら、ぼんやりと夜空を見上げていた』
『でも、ふと視界に飛び込んできたある人に、帰らなくて本当に良かったと心から思った』
あれって……私?
鏡の破片で形成された第四のシーンを通り過ぎると、妹をからかいながらニコニコ笑っている自分の姿をした鏡の彫刻が現れた。
『彼女を初めて目にした瞬間、頭の中に浮かんだのはただ一つ――その笑顔、綺麗』
『心臓がドキドキして、未知の感情が芽生え始めた。どうしても彼女から目を離すことができなかった』
『あの日以来、彼女には二度と会っていないけど、あの笑顔が頭から離れない。学校に行っても、ご飯を食べても、寝ても、なぜか彼女のことを思い出してしまう』
『ある日、何気なく口を滑らせてしまったことで、悠人に知られてしまった。そして、彼が教えてくれた、その感情の名前は『好き』って』
……え?
宮野くん……私のこと好きだったの?
私は知らなかった……昔、宮野くんと一緒にいる時に、時々変な行動をしていたことを思い出す。緊張して言葉が詰まったり、私に誤解されることを心配したり、告白の手紙を受け取った時に私の返事が気になって仕方がなかったり、ナンパされると怒ったり……これらの変な行動の裏には、私を好きだったからなんだ……
『人混みの中、混雑した電車の中、毎年の祭りで、彼女の姿を探そうとしていた。でも、この数年間、一度も彼女に会うことはなかった』
中学2年の時は沙織ちゃんと一緒に別の地区のお祭りに行ったのを覚えてるけど、3年の時は病気で近所のお祭りに行けなかった。
しかも、映像に映っている宮野くんの着ている制服は、私の中学とは違う。それに、彼の家も私の家からかなり遠そうだから、偶然に出会う可能性は低いと思う。
『悠人とハルと一緒に同じ高校に進学してからも、彼女にまた会えるなんてあまり期待していなかった。たとえ同じ高校だったとしても、どうせクラスは違うだろうと思っていた――だけど、教室のドアを開けたその瞬間、まるで今まで彼女との再会を妨げていた運命が、今回は僕たちを再び引き合わせてくれた』
だからあの時、宮野くんは教室に入ってきた後、しばらくぼーっと立ち尽くしてたんだ……
『でも、彼女は僕のことを覚えていない。まあ、僕みたいな目立たない人間のことなんて、人気者の彼女が覚えてるはずがないよな』
いやいや、宮野くん、そうじゃない。あの時、祭りでは周りの人に特に注意を払ってなかったから、覚えてなかっただけなんだよ。それに、もし知ってる人だったら、何年経っても再会した時にはちゃんと覚えてるからね。
『でも、また会えたことにはもう満足してる。彼女が初めて僕に話しかけてきた瞬間、本当に驚いた。まさかこうして繋がりができて、友達になれるなんて全然思わなかった』
『関わりが深まるにつれて、友達関係には満足できなくなっていった。彼女のことが頭の中を占めて、何をするにも気になり、誰かが彼女の名前を呼ぶとつい耳を傾けてしまう。彼女が誰かに告白されるのではないか、ましてや彼氏ができることが怖かった。もしその人が僕ではないなら、なおさらだ』
『でも、彼女が僕を好きになるなんてあり得ない。彼女はたくさんの人に好かれていて、その中には僕よりも優秀な人もいるし……これはおとぎ話じゃないし、王女が平民を好きになるなんてことがあるわけがない』
『それでも、彼女の隣に立てるような人になりたくて、ずっと努力している』
『成績優秀な彼女に追いつこうとしたり、二人きりになれるチャンスを探したり、もっと知りたいと思ったりして、普段はしないようなことばかりやってるんだ』
現実世界に戻ったら、私は宮野くんにどんな気持ちで接すればいいのか分からない。
ところで、なんで私が宮野くんの記憶を見ることができるの?
『今年の夏の前、どうやって彼女を誘おうかずっと悩んでた』
『そして、悠人が夏休み中にハルを祭りに誘いたいって言ってきて、僕にその手伝いを頼んできた。それが僕にヒントをくれた』
『次の日、仕事中の僕は、使い走り中の悠人からメッセージを受け取った。その内容は、彼女、ハルと久保さんがもうすぐカフェに来るというものだった。メッセージを見た瞬間、嬉しくて思わず手が滑ってスマホを落としてしまった』
『すぐに父さんに予約リストを確認しに行ったけど、彼女たちの名前は見当たらなかった。でも、ちょうど誰かがさっきキャンセルしたばかりだったから、父さんにお願いして、もうすぐ来る彼女たちに順番を譲ってもらえないか頼んだ』
『彼女たちが来る前に、何度か言い訳をしてキッチンから外に出て、到着したか確認していた。約六回キッチンに出入りした後、ようやく彼女たちの到着を待ち望んでいた』
『悠人には申し訳ないけれど、昨日の話を借りて、彼より先に彼女たちを誘うことにした。幸い、彼女は快諾してくれたので、思わずホッとし、その日を楽しみにしていた』
『でも、僕の反応を見て、ハルは僕の気持ちに気づいたみたいだった。ハルが彼女に僕のことをどう思っているか聞いてきた時、答えはもう分かっていたけど……それでも『友達』って言われると、やっぱり気持ちが沈んでしまった』
静かに次々と繰り広げられるシーンを見つめながら、宮野くんのナレーションを耳にしつつ、歩みを進めていった。
今まで、宮野くんが何を思っているのか、全然知らなかった。まさか、彼がこんなに私を好きだなんて。
『祭り当日、約束の時間より30分も早く公園に着いた』
『ブランコに座って、もうすぐ彼女に会えると思うと緊張してきた。でも彼女を見た瞬間、さっきまで色々考えていた頭が一気に真っ白になった』
『綺麗――今まで一度も女の子に言ったことがないこの言葉、もしこれで僕の気持ちがバレて断られるかもしれないと思うと、つい言うのをためらってしまった』
えっと、もし気づくことができたなら、宮野くんの記憶を見て初めて彼が私を好きだと知ることはなかったよね。
『祭りで、ナンパしてきた先輩に対して、怒りを抑えきれず、つい暴言を吐いてしまい、手を出してしまった』
『幸い、彼女は怪我がなかったけど、怒った時の僕はちょっと怖いってからかわれた』
実際、宮野くんが怖いとは思っていなくて、むしろ彼が柔道をやっていることに少し驚いただけなの。
『尾行している途中で、彼女が悠人とハルと仲良くしているのを見て笑顔を浮かべた時、彼女は本当に友達のために気を使う人なんだなと思って、僕も思わずこっそりと笑ってしまった』
『その後、久保さんは理由をつけて離れ、去る前に何かを示唆するように僕の耳元で「頑張ってね」と囁いた。もしかしたら、久保さんはいつの間にか僕のこの気持ちに気づいていたのかもしれない』
まさか沙織も宮野くんが私を好きだって知ってたんだ……つまり、私だけが気づいてなかったってこと?
『元々、自分の気持ちを伝えるつもりはなかった。告白したら、返ってくるのは断られる言葉で、友達すらも続けられなくなるんじゃないかってすごく怖かったんだ』
『でも、悠人でさえ思い切って告白してうまくいったのを見たら、その場の雰囲気に流されて、もしかしたら僕にもチャンスがあるんじゃないかって思ってしまったんだ。だから、彼女にちゃんと伝えようと思った。実は僕、3年前に初めて彼女を見た瞬間から、ずっと好きだったんだって』
『でも、告白した時に花火大会がすでに始まっていて、彼女が僕の言葉を聞いてくれたかどうか分からない』
『彼女が何を言ったか聞いてきた時、彼女が本当に聞き取れてないのか、それともこの友情を壊さないためにわざと聞こえないふりをしてるのか分からなかった』
あの時は本当に聞き取れなかったの。声が花火の音にかき消されてしまったから。
『結局、断られるのが怖くて、もう一度言いたくなくなった』
『花火大会が終わった後、彼女が一人で帰るのが心配で、危険があるかもしれないし、ナンパされるかもしれないと思ったので、送って帰ることにした。実はその中には私情もあって、少しでも彼女と一緒にいたいという気持ちがあった』
『彼女が再び尋ねてきた時、運命のせいにして勇気を出そうとしたんだけど、遠回しに聞いてみたものの、結局失敗してしまった』
『でも、今みたいに彼女と自然に話せるだけでも、満足すべきだよな』
『ずっと『綺麗』っていう褒め言葉を口に出すか迷ってた。でも、結局帰る前に勇気を振り絞って、引き返して言ったんだ。緊張と恥ずかしさで言葉が途切れ途切れだったけど、自分の気持ちを伝えられたのは一歩前進かな』




