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第25話 泡に閉じ込められた星、彼女は僕を好き

 北側の出口からまっすぐに2キロほど進むと、断崖にたどり着いた。


 天の川と淡い紫色の海、そして空に浮かぶ泡の中には、星座がまるで閉じ込められているかのように輝いている。流れ星の群れが、打ち上げられた花火のように、下から上へと美しい弧を描きながら夜空を駆け抜けていく。

 崖っぷち近くにある、外観が苔むしていてまるで長い年月を経たかのように見える灯台は、今もなお稼働し続けている。海へ向けて照らされるその光の束は、まるで二度と戻らない船を待ち続けているかのようだった。

 エリカちゃんの母親が言っていたテントは、灯台のそばにある。


 もしかしたら、エリカの両親が思いを確かめ合ったこの場所で、先ほど口にしなかった言葉をちゃんと伝えられるかもしれない……


 さっき楓に他の女の子に近づかないで欲しい理由を聞かれた時、本当はそのまま告白しようと思ったのに、突然断られるかもしれないと思って言えなかった。

 もしかしたら気づいているかもしれないけど……でも、気づいていたら、どうして何も言わないの?

 ……ダメだ、確実性がないからって引き下がってはいけない。篠原心優、自分にもっと自信を持って!


「なんで自分の頬を叩いてるんだ?蚊でもいるのか?」

「なんでもないよ!」


 灯台の前に歩み寄る。


「君、崖っぷちに近づかない方がいい」

 

 もし楓が注意してくれなかったら、自分が高所恐怖症であることを忘れてしまうところだった。


 私はテントの前の花畑に大の字になって寝そべった。上空に浮かぶ泡を見上げながら、どう話せばいいのかと躊躇している。そしたら楓は私の隣に座った。

 私たちは何も言わず、目を合わせず、ただ沈黙している。


 しばらく沈黙が続いたが、楓がため息をついて気まずい空気を破った。


「君、僕のことを友達とか、仲間とか、それとも何だと思ってる?」


 どうやら楓はもう気づいていたようだ。


「……実は、最初はずっと無表情な旅仲間だと思ってたけど、長い間一緒に過ごしているうちに、あなたの面白いところ、優しいところ、すごいところ、色んなところを見つけて……だんだんそう思わなくなったんだ」

「つまり?」

「私……」


 今勇気を出さなければ、いつ言えるのか?

 独りでこの感情を抱えながら、楓の気持ちを考えすぎて、彼の行動に振り回されて、捨てられるのが怖くなってる。もう、こんなの嫌だ。

 これからの結果がどうであれ、自分にひとつの結論を出さなきゃ……!


「私、あなたのことが好き。 多分じゃなくて、間違いなく」


 今言っていることが、一時的な衝動からではないことを確信している。

 長い時間一緒に過ごす中で、初めて誰かと恋人になりたいという気持ちが芽生えた。


 しかし、私の告白を聞いた後、楓は顔を膝に埋めてしまい、表情が全く見えなかった。


* * *


 あなたのことが好き。


 この『ありえない』という言葉を、心優さんが僕だけに言ってくる妄想をしたことがあった。でも、いざ今それを聞くと、気持ちはすごく複雑。

 嬉しさ、悲しさ、幸せ、迷い、そして矛盾した感情が心の中で渦巻いている。

 もしこの現実離れした世界じゃなかったら、心優さんがまだ僕のことを好きになってくれる可能性はあるのかしら?


「もし、もう少し早く起こっていれば……」

「それって、どういう意味なの……?」

「……君に何を言えばいいのか、どうすればいいのかも分からない。でも、もしこの好きという気持ちの代償が、僕とこの世界に永遠に留まることが必要なら、君はその代償を支払ってくれるのか?」

「この世界には不思議な景色がたくさんあるけど、あなたと一緒に現実世界でもっと色んな場所に行って、もっと美味しいものを食べたり、一緒にたくさんの写真を撮りたい……だから、私にこのチャンスをくれますか?」


 心優さんはそう言いながら、そっと僕の手を取った。

 横を向くと、心優さんは顔を真っ赤にしながらも、震える声でありながら、真剣に僕を見つめて、全く退縮もせずに自分の気持ちを口にした。


 僕も心優さんに応えたいんだけど……


「……ごめんなさい」


 もっと彼女と色んな場所に行きたいし、ずっとそばにいたい。楽しい時も、辛い時も、悩んでいる時も、『篠原心優』の人生の主役として、脇役ではなく関わっていたい。でも、この世界では幸せを感じるほど、すべてが実現できないかもしれないってことも分かってしまう……もし彼女が現実世界に戻りたいと思っているなら。


「……じゃあ、私のこと好き?」

「……」


 そうだよ、僕は君が好きだ。本当、本当に好きだ。ずっと前から、君に初めて会った時から好きだった。今でも、ずっと好きだよ。

 でも、君には言えない。この言葉が君の気遣いになるのは嫌だから。


「僕は、君がずっと幸せでいて欲しい」

「私の問題に答えてください」


 もう目を合わせる勇気がない。これ以上耐えられなくて本音を言ってしまいそうで怖いんだ。

 僕もその告白を受け入れて、恋人になって、この世界でずっと一緒にいたいと欲しい。

 それは『なぜ我々はこの世界に来たのか』についてはまだはっきりしない状態での決断だったが、彼女はもう一度この世界に留まる提案を拒否した以上、これ以上気遣いとなるようなことを言うべきではない。


「ねぇ、あなたが嘘をつきたくない時はそういう反応になるのよね。だから、無言は認めたと受け取っていい?」

「……」


 僕、嘘をつけない。

 ただの心にもない拒否の言葉なのに、どうしてもそれを口に出せなかった。

 僕はもう、現実世界に戻ることができない。これ以上忘れられない思い出になってしまったら、現実世界に戻った彼女は真実を知った時に悲しむかもしれない。

 いったいどうすればいい?分かんない、本当に何をすればいいのか全然分かんないんだ……!


「悪い、少し冷静にさせて……この話題は一時的にやめてくれないか?」


 結局、また逃げ出してしまった。僕は本当にダメだ。


「まぁ、いいよ。でもいつか、あなたに私のことが好きだと言わせるわ!」


 どうやら僕の反応から完全に僕の気持ちを見抜いたみたいだな……隠そうと頑張っても、あまり意味がないみたい。

 もし彼女がこの世界に一緒に留まることを望んでくれたら、僕は必ず「好き」と言うつもりだった。でも、残念ながらその『もし』は起こらなかった。

 やっぱり現実世界に戻すために計画を続ける。心優さんが反故にして、僕と一緒にこの世界に留まることを望むようになったら、その時に計画を変更すればいい。そうはならないと思うけど、だって僕は悲観主義者だから。

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