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第19話 夏祭り③

 近くのベンチで皆でたこ焼きを楽しんだ後。


「そういえば君たち、毎回祭りに来るたびに勝負してるでしょう?今回はやらないの?」


 宮野は客が二人しかいないゲームの屋台を指さした。

 以前、デパートで早乙女が言っていたのだが、彼ら三人はよく一緒にゲームで勝負するものの、いつも宮野に負けてしまうら。


「かかってこいよ」

「今度は絶対悠人をボコボコにするわ」

「誰がボコボコにされるのかまだ分からないでしょ?」

「あの、僕、今回はパスするよ」

「心優ちゃんと沙織ちゃんは?」

「結構です。他の食べ物を買いに行くつもりだから」

「私と沙織ちゃんと一緒に。宮野くんも一緒に行こう?」

「それでは、後でここに集合しようね」


 甘く考えていた早乙女は、心優たちがまた戻ってくると信じて疑わなかったが、実はすでに術中にはまっていることに気づいていなかった。


 そうして、事前に打ち合わせをしていた『共犯者』たちは、少し離れたところで茂みの中に隠れ、その後ゲームの屋台の辺りに戻ってあの二人の様子をこっそり観察する。まだ別れてからそれほど時間が経っていないが、心優はあの二人がまたすぐに喧嘩を始めるのではないかと、少し心配している。

 

 しかし、その心配は杞憂だった。今、あの二人は珍しく仲良く過ごしていて、楽しそうに遊んでいる様子だった。


「こんな漫画みたいな展開、やっぱりドキドキするね、へへ」

「でも、もし他の人に見つかってまずいことになるかもしれない……」

「なんであの時、私がマンガ脳からの提案に賛成したの?今考えると、他にあの二人を助ける方法もあったはず」


 小声で佐藤と早乙女がどんな展開になるかを話し合っていると、試合が終わった。

 早乙女が佐藤に向かってピースサインを見せると、どうやら彼女が勝ったようだ。そして、彼女の横にある台の上には、ミニサイズのピンクのクマのぬいぐるみのストラップが置かれていて、どうやらそれ以前にも一度勝ったらしい。

 そうしたら、早乙女は同じデザインの青いクマのぬいぐるみのストラップを選び、手に持って少し迷った後、なんと佐藤にプレゼントした。

 距離があったため、あの二人の会話を聞き取れなかった。ただ、佐藤がそれを受け取ると、早乙女の頭を軽く叩き、彼女が恥ずかしそうに顔をそむけるのを見ただけだった。


「僕、なんだかちょっと感動しちゃった」

「まさか、子供の成長を見守るような感動じゃないよね?」

「そうかもな」

「佐藤くんとハルちゃんが結婚する時、宮野くんが二人の第二の父親として付き添うかもね」

「……もしあの二人が付き合ったら、面倒なことはもう何も関わりたくないけどな……はぁ、でもそれまでにまだ色々心配しないといけないんだよな」


 宮野は軽くため息をつきながら、佐藤からかかってきた電話を取った。ついでに、心優と沙織にも聞こえるようにスピーカーモードをオンにし、気づかれないように音量を下げた。


「もしもし?」

「はい」

「今どこ?こっちはもう終わった」

「僕たちのことは気にせず、デートを思いっきり楽しんでこいよ」

「何かあった?」


 電話越しの佐藤の声は少し心配そうだった。


「何もなかった」

「え?じゃあなんで集合しないんだ?」

「……」


 宮野が黙っているのを見て、心優は彼が嘘を嫌うことを知っていたので、代わりに答えようと思った。

 

「まぁ、色々な理由があって、とにかく私たちは別々に行動することにしよう?そうすれば、あなたたちも思いっきりデートを楽しめるでしょ?」

「はぁ?冗談はやめて、早く助けに来てくれ!今の雰囲気がすごく気まずいんだ」

「私と一緒にいるのが気まずいの?」


 電話の向こうから微かに早乙女の声が聞こえてきた。


「えっと、そういう意味じゃないんだけど……お前の頭を撫でたら黙っちゃったから、ちょっと気まずくなったんだ」

「それはあんたがいきなり普段と違うことをしたからじゃない……」

「あいつら、また他の人を気にせずイチャイチャし始めた」

「イチャついてないよ!」


 沙織は電話がスピーカーモードになっているのをすっかり忘れていて、佐藤に今の文句を聞かれてしまった。


「とにかく、喧嘩はせずに、逃げないで。今回逃げたら、もしかしたら一生チャンスがないかもしれないって分かってるよね?」

「……おーう」

「じゃあ、これで」


 返事をする隙も与えず、宮野はそう言って電話を切った。


 その後、距離を置きつつ、そっと尾行を続ける。

 多分、あの二人は今日の重要性を理解しているので、さっきから喧嘩もせず、互いに置いて逃げることもなかった。どうやら、手助けがなくても、うまくやっていけるようだ。しかし念のため、依然として後をついていくことにした。



 花火大会が始まる数分前、沙織は焼きそばを買いに行くと言って立ち去った。残された宮野と心優は、会場から少し離れた斜面にある木々に囲まれた小さな空き地まで尾行していた。ここは見晴らしが良く、もうすぐ始まる花火大会がよく見える場所だった。ここは少し外れた場所で、他の人が来る心配もないから、告白には最適な場所だ。


 宮野と心優は、あの二人からほど近い草むらの中に身を潜めている。


 心優は早乙女が土壇場で逃げ出してしまうのではないかと少し心配している。そこで、『告白、頑張ってね!(●o≧д≦)o頑張れェェェ♪』とメッセージを送って、彼女を励まそうとした。さらに、心優は焼きそばを買いに行っている沙織にも、今自分たちがいる場所を伝えるメッセージを送った。

 そして、心優は手を合わせて、うまくいくように静かに祈る。


「安心して、きっとうまくいくさ」


 隣にいる宮野が囁いた。


「本当に、お互いに好きな人たちにはいい結果になって欲しいよなぁ」

「もし……片想いもいい結果になるなら……」

「え? もしかして宮野くんにも好きな人がいる?」

「その、僕に好きな人がいるなんてあり得ないっていう驚き顔は何なんだ?」

「あなたがそんなことを言ったのを聞いたことがなかったから……あ、ちょっと待って、佐藤君が何か言ってるみたい」


 距離がそれほど遠くないため、注意して聞けば会話の声が聞こえてくる。


「なあ、もし俺がもうすぐ北海道に行くことになって、もしかしたら二度と戻らないかもしれないって言ったら、お前はどう反応する?」

「なんで急にそんな質問するの?」

「ただお前がどう反応するか気になっただけなんだ。ちょっと俺のために泣いてくれるのを見たいな」

「絶対に泣かないよ。逆に、パーティーでも開こうかな。だって、やっとあんたのチャラい姿を見なくて済むんだから、イライラしなくて済むし」

「でも、お前は分かってるだろ?俺がいつも冗談を言ってるだけだって。そうじゃなきゃ、もう彼女ができてるし、今まで独身でいるわけないよ」

「それはただ、誰もあんたを選んでくれないだけだ」

「……」


 佐藤は深呼吸をして、早乙女にぐっと近づいた。

 そんな近い距離で、早乙女は恥ずかしさから顔を背けたくなった。しかし、佐藤は彼女の頬を掴んで、無理やり自分を見つめさせた。


「……ん?」

「明日何が起こるか、また会えるか、今の関係を続けられるかなんて誰にも分からない。後悔はしたくないし、今のままじゃ嫌だ。だから、俺みたいな誰にも要らないやつを選んでくれるか?」

「……え?ど、ど、どういう意味?」

「バ、バカ、そんなにはっきり言わせるか?俺、ずっとお前のことが好きなんだ、早乙女ハル!」


 花火が高空へと打ち上げられた。


「……バカ」


 頬を掴まれていた手が離れた瞬間、早乙女は彼の首に腕を回し、目を閉じてキスをした。


 夜空に響き渡る花火の爆発音。燃え上がる火の玉が空中で弾け、無数の光の尾を引く火花となって、まるで華麗な花が深い夜空に咲くかのようにゆっくりと広がった。一瞬にして暗闇を明るく照らし、夜空を彩り鮮やかに輝かせた。


* * *


 このロマンチックな瞬間を目の当たりにした心優は、あの二人のことを心から嬉しく思った。

 あの二人はついにお互いの気持ちを素直に伝えることができた。早乙女の作戦がまだ出番を迎える前に佐藤が先に告白してしまったが、結果が良ければどちらが先でもいい。


「あの……心優さん……実……三年……」


 隣にいる宮野が何か言いたげだったが、次々と鳴る花火の爆発音にかき消されて、心優にはよく聞こえなかった。


「何?」

「……別に」


 宮野が少し躊躇しているのを感じたが、彼はもう何も言うつもりはなさそうだった。


「そう?」


 何を言おうとしていたのか気になったが、花火の爆発音が大きすぎて、質問を続けるのを諦めてしまった。


 花火が次々と打ち上げられ、ドンドンと音を立てて夜空に舞い上がる。鮮やかな光が一つ一つ咲き誇り、その後、流れ星のように降りていき、徐々に広大な夜空に消え去っていく。目の前には、この華麗な景色だけが映り、思わず見惚れてしまう。誰もがこの輝く花火の中で、静かに流れていく時間に気づいていなかった。

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