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第17話 夏祭り①

 15歳、8月、夏休み3週目の土曜日。


 ピンポン。


「葵ちゃん、ちょっと誰が来たか見てきてくれる?お願いね」


 部屋で髪を整えている心優は手が離せず、仕方なく自分の部屋でパソコンゲームをしている妹に客を迎えに行かせる。


「はーい」


 すると、葵はゲームを一時中断して、訪れた人が誰か確認しに行く。


 葵が部屋から出るやいなや、心優はテーブルの端に置かれたスマホの画面が光り、沙織からの『着いた』というメッセージが届いているのに気づいた。

 今日は皆が約束した祭りに行く日。集合時間の六時まで、あと十八分。

 心優はもともと髪をお団子にしようと考えていたが、探しているうちにヘアピンがどこに置いたか分からなくなってしまった。探し続けると遅刻してしまうかもしれないと心配したため、仕方なく引き出しの中でたまたま見つけた赤いシュシュで、いつものようにポニーテールにまとめた。

 身支度を整えると、心優は部屋を出て、リビングに向かった。


 すでに家に入ってきた沙織は、ソファに座って葵とお喋りしている。

 沙織は放課後によく心優の家に遊びに来るので、葵ともすっかり仲良くなり、時々一緒に遊びに行くこともある。


「お待たせ」


 心優の赤い薔薇柄の白い浴衣とポニーテールに比べて、沙織は藤柄の紫の浴衣とサイドポニーだった。


「これからお祭りに行くけど、葵ちゃんも一緒に行く?」

「ううん。明日友達と海に行く約束してるから、今日はゆっくり家で休む時間を大切にする」

「そうは言っても、夏休みはほとんど毎日家でゴロゴロしてるじゃん」

「姉さんもほとんど同じだろ?今のところ三回しか出かけてないくせに」

「葵ちゃん……そんなに私のこと気にしてくれてたなんて、本当に感動だわ」

「うわー、キモ!さお姉、早く壊れた姉さんを直してください」

「もう直るわけがないよ。まあ、そろそろ出発しようか」


 いたずら好きな心優にどうしようもなく、こう言って葵を一時的にでもいたずらから解放しようとした。



 紫がかった空に、太陽はほとんど目に見えないほどゆっくりと沈んでいく。夕焼けの残照が大地に降り注ぎ、道を歩く二人の影を長く伸ばしている。


 やがて、心優たちは公園に辿り着いた。

 ブランコのところで、浴衣姿の宮野がすでに座って待っている。しかし、彼は頭を下げて考え事をしているようで、近づいてきたことには気づいていない様子だった。そこで、彼を驚かせてやろうと思った。


「ばあ!」


 驚かされて宮野の体がびくっと震え、瞬時に我に返って頭を上げた。

 すると、まるで一時停止ボタンが押されたかのように呆然と固まり、言葉すら出せなくなってしまった。


「その反応、なんか予想してたのとは違うな」

「宮野は多分、こういう子供っぽい驚かし方に呆れて言葉も出ないんじゃない?」

「あ、いや、そうじゃなくて……」


 少し離れた場所から、聞き慣れた声の騒がしさが聞こえてきた。

 佐藤と早乙女、またどうせ些細なことで子供みたいに口喧嘩している。今日一緒に祭りに行く作戦の目的はあの二人をくっつけることだったのに、会場に着く前にもう喧嘩が始まってしまった。


「全く……あの二人、公の場で喧嘩して恥ずかしくないのか?」


 こんなことがよくあるとはいえ、宮野は思わずため息をついてしまった。


「むしろ会った時に喧嘩しないと、なんかおかしいよね」

「でも、宮野くんがいれば、きっとすぐに仲直りできる。だって父親なんだから」

「……ツッコミたいけど……まあいいや」


 こちらが話し終わると同時に、ふくれっ面の早乙女と、その後ろで無表情の佐藤が公園にやって来た。今日は皆が浴衣を着ている中で、早乙女が持っている紙袋が一際目立っている。


「君たち、何かあったの?」と沙織が尋ねた。

「悠人ってバカ!話しかけてもずっとぼーっとしてて、何か悩んでるみたいなのに、何があったか聞いたら教えてくれないんだ!」

「それで喧嘩になった?」


 こんな奇妙な喧嘩の理由に、宮野も特に驚いた様子はなく、ただ少し疲れた口調で言っていた。その二人はしょっちゅう変な理由で喧嘩をしているので、もはや驚くべきことではなかった。


「あー、別に喧嘩じゃないよ、ただうっかり声が大きくなっちゃった」

「もしかして、ハルちゃんって佐藤くんのことを心配しすぎて焦ってるの?」

「べ、別に心配してないわよ!」

「君は本当に心優に振り回されやすいね」


 付き合い始めたら、あのツンデレな性格が改善されるといいなって、心優は思いながら苦笑いした。


「俺は大丈夫だよ。それより、皆揃ったから、そろそろ行こうか?」


 今日の佐藤は、いつもとどこか違う雰囲気を醸し出しているようだった。

 普段は笑顔を絶やさず、チャラいなふりをして他の女の子に声をかけ、早乙女の気を引こうとするのに、今日に限っては、会った時からずっと表情が乏しく、話す時もただ苦笑いを浮かべるだけで、いつものように冗談も言わない。


 祭り会場へ向かう道中、沙織が早乙女と佐藤と話している隙に、心優は道案内をしている宮野に歩み寄った。


「ね、佐藤くんって今日なんか変じゃない?もしかして転校のこととか関係あるのかな?」


 心優はそっと尋ねた。


「……さあな。どう言えばいいか考えてるのかも」

「んー、計画がうまくいくといいな」

「ん?」

「そういえば、まだ宮野くんにこのこと言ってなかったね。実は今日が佐藤くんの誕生日だって聞いたから、私と沙織ちゃんでハルちゃんに彼との思い出を本に書いてプレゼントするように勧めた。簡単に言うと、ラブレターみたいなものだ」

「……なるほど。じゃあその本はハルが持ってるその袋の中に入ってるってわけか。でも今回はまた途中で逃げ出したりしないかな……毎回そうなるしさ」


 何か嫌なことを思い出したかのように、宮野は深いため息をついた。

 そんな彼を見て、心優は思わず笑ってしまった。


「あなた、本当にあの二人のことを心配してるんだね」

「……友達だから」

「いつもあの二人のことになると、面倒くさそうにしてるけど、実は一番気にかけてるんだよね。やっぱりツンデレなんだよ、宮野くんは」

「ツン……いやいや、そうじゃないだろ?」

「ぷっ、緊張した?まあまあ、からかいはここまでにして、本題に戻りましょう」

「なんか、ちょっと遊ばれた後に急に飽きられて捨てられた玩具の気持ちが少し分かる気がする」

「おや?それってつまり、また私にからかわれたいってこと?」

「もし欲しいって言ったらどうする?」

「それなら、あなたが実はドMなのかなって思うかも」

「……まあ、それは置いといて。話したい本題って、あの二人のこと?」


 まだまだからかいたい気持ちもあったが、今は早乙女と佐藤のことを話し合うべきだと感じた。どうせ今後も時間はいくらでもあるから、からかうチャンスはいくらでもある。

 しかも、佐藤はもうすぐ引っ越す可能性があるので、今日は春を手伝うことを優先すべきだと思った。何しろ、自分の気持ちを伝えられないまま別れるのは、この世で一番悔いが残ることだろう。


「そうだよ。後でわざと逸れて、二人きりのチャンスを作って、その後で隠れて手伝うっていうのはどう?」

「久保さんも一緒に?」

「もちろん。来る前に、沙織ちゃんにはもうこの作戦を言っておいたから」

「……分かった。それじゃあ、タイミングを見て隠れることにしよう」

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