第15.5話 過去の自分に茶化される、彼へのこの恋心
「まるで漫画みたいな展開だね。記憶喪失の少女のそばには、一人だけ頼れる存在がいて、毎日長時間一緒に過ごしながら、心からの優しさや気配りを受けて、だんだん恋愛感情が芽生えていく」
ちょうど鏡の回廊に入ったばかりなのに、足元の鏡像が私をからかってきた。
「やっぱ全部知ってたんだ……」
「まさか『篠原心優』にこんな少女っぽいところがあるなんて、全然知らなかったわ」
「それは今日は楓があまりにも変だったからよ……まぁ、こういうのも悪くないけど、これ以上続けたら心臓が持たない」
「どうやら恋する少女も成長するんだね。昨日は認めようとしなかったのに、楓のアタックで自分の本当の気持ちを見つめ直し始めた」
「ねぇ、恥ずかしいから、私の記憶から感情を汲み取ってるのはやめてくれ?」
もう恥ずかしくて死にそうなのに、鏡像がまだ私をからかってる。けど、反撃する方法もないし。
この話題を続けたくない一心で、別の話題を考えようとする。しかし、目を閉じると、どういうわけかさっき楓とほとんどキスしそうになった映像が頭に浮かんでしまう。思わず熱くなった頬を手で覆ってしまった。
「もしさっき少しだけ頭を下げてキスしてたら、楓を取らたかもしれないのに」
「私はそんなこと考えたことないもん!」
「これはただの仮定だってば。まあ、こうなった今でも、結局まだ楓の正体を確認してないんだな」
「ルールがあるから、たとえ聞いても答えてくれないと思う。そうだ、あなたは私の過去なら、楓の正体を知ってるんじゃない?だって、記憶を失う前から彼は私を知ってたみたいだし」
前回記憶を取り戻してからというもの、なんとなく楓の振る舞いや雰囲気が、時々宮野くんに似てるような気がする。
もし楓が本当に宮野くんだったら、それはそれでいいかも。そしたら、もっと共通の話題が増えて、距離も縮められる。でも、もし違うなら、現実世界に戻ったら楓を沙織ちゃんやハルちゃん、宮野くん、佐藤くんなど仲のいい友だちに紹介してあげたい。
「たとえ『篠原心優』の過去の記憶を持っていても、そのことについては確信が持てないわ。『篠原心優』の記憶が干渉されて、宮野くんに関する記憶がとても曖昧になってしまっているの」
「でも、もし本当に誰かが記憶に干渉できるとしたら、一体誰がそんなことをできるのかしら?」
「こんなことができるのは、たぶん神様くらいしかいないんじゃない?」
「もし本当にそうなら、なんでそんなことをしたの?」
「どうかな」
たとえ私の過去の記憶を持つ鏡像でも、これは一体どういうことなのかも分からない。せめて自分で過去の記憶の中に何か手がかりを見つけられることを願うしかない。
ひび割れたガラス玉に触れると、意識がまるで過去のある場面に引き戻された。




