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九
セレスタミア王国の東一番街、通称貴族街に住む宮廷音楽家のフォン・アルフレッドは起床して一杯の水を飲み、顔を洗い、朝食の前に防音の効いた音楽室にあるチェンバロの前に座った。そして深呼吸した後、いつものように曲を弾き始めた。テレテッテッテッテッテン! 王宮ではまるで曲に呼応するかのようにアナスタシアが目を覚まし、寝起きに伸びをし、コックは食材を切り、メイドが回りながら花に水をやり、教会のミンテアが跪いて祈りを捧げ、アナスタシアが服を着せられ、酒場のマスターが寝ているレインをほうきでつつき、メイドが回りながら朝食を並べ、ハーシャはすやすやと寝ていて、バックは訓練所で剣を振る。アナスタシアがティアラを被り、鏡で確認すると部屋を出て、メイド達が左右に並んで女王に頭を下げている廊下を突き進み、世話係のジイが挨拶し、朝食をガンガン食べ、ちょうどアルフレッドの演奏が終わる時、謁見の間に出てきたアナスタシアが玉座に座った。アナスタシアが肩にかかった髪を両手でサッと後ろに払うと、軽く咳払いをした。
「では、公務を始める」




