六
玉座に座ったアナスタシアは改めて勇者一行に話しかけた。
「さてバック達よ。そろそろ小細工して税金を逃れようとするのはやめい」
ミンテアはシュンとしている。
「し、失礼いたしました」
「財務大臣のドゴーはあんなんじゃが金のプロじゃ。勇者が旅に出た時の金の出入りなど全て予想がついておる。お主ら素人が奴の上を行くことはない」
「おっしゃる通りでございます。私達が浅はかでした」
「それに別にお主らをいじめたい訳ではない。お主らはまだ若い。魔王を倒した後も人生は続くじゃろう?」
「はっ……」
「その時に旅の最中に不正を働いていたなどと陰口を言われるのは忍びない。ミンテアよ、ワシはお主達に英雄として堂々と胸を張って生きていってほしいのじゃ」
「アナスタシア様……!」
「まっどうせやるならバックとミンテアが結婚するくらいせんとな。詰めが甘いぞよ」
ハーシャが目を見開いた。
「な……!?」
「だがそう簡単には行かんじゃろうな? のう夜の女王」
「なななな……!!」
「さて、冗談はこの辺にしていよいよ魔王城の攻略じゃ。そこで今回は戦略大臣のパトリックからお主らにプレゼントがある」
「プレゼント?」
バック達は兵士からそれぞれ一つずつタブレットを受け取った。
「これは?」
「タブレットじゃ。魔力で動き、離れた場所でも会話や手紙の送信ができる。詳しい説明はパトリックに受けるとよいぞ」
「ハッ」
「定期的に魔力を注入しないと動かんのじゃが、王国の魔法使い達が毎日プラントに充填している全ての魔力よりもハーシャ一人の魔力の方がはるかに多い。お主らなら実質無限に使えるし旅の役に立つじゃろう」
レインは感心した。
「へえ、ハーシャってすごいんだな。プラントって百人体制で充填してるって聞いたぜ」
「今更何を言っておる。ハーシャは王国史上最強の魔法使いじゃぞ。書物にある高名な魔法使いが束になってもハーシャの魔力には及ばぬのだ。魔力プラントを起動できたのも子供の頃のハーシャが莫大な魔力で安定させたからなのじゃぞ」
兵士達も感心している。
「そ、そうだったのか知らなかった」
「さすがハーシャ様だ……」
ハーシャは恥ずかしさで顔を真っ赤にしている。
「ア、アナスタシア様が小さい頃視察に連れて行ってくれた時に言われたんです。あの大きなボールに魔力を注いでみてって。あの時はてっきり何かの余興なのかと思ってました」
「この国の機械文明はハーシャの『たー!』というかけ声と共に始まったのじゃ。ワシの自慢の幼なじみじゃ、大事にせいよお主ら」
「ハッ! このバック、命に代えてもハーシャを守り抜いてみせます!」
ハーシャはバックを見てポーッとしている。
「うむ! さすが勇者じゃ! 神父の前ではまだ言うなよ!」
ミンテアが悔しそうに身じろぎした。その時謁見の間にブンッという音と共に円形の光が現れ、魔王がその姿を現した。




