第56話 試験終わって
「試験どうだった? 」
「今回は、良い感じだな」
「……いつもは謙遜するのに自信満々だね」
「予想以上に出来たからな」
「なら尚更僕達もレン君の勉強会に参加しないとね」
一週間に渡る激闘を終えた俺達は試験中とは全く異なる和気藹々教室の中で集まり話していた。
「確かに宇治原さんが謙遜しないのは珍しいですね」
ニコニコとして椅子に座りこちらを見てくるトモに同意するかのように遠藤さんが言う。
確かにいつもは「出来なかった」と言っていたような気もする。
しかし今回手応えがあったのは事実。
「ちょっと男前になったね」
「……それだと今まで男前じゃなかったように聞こえるが? 」
「自信なさ気ではありましたね。そのくせして首席を取るのですから羨ましく思っていましたよ」
「いつもこのくらい自信を持てばいいのにね」
本当にです、とトモの言葉に頷く遠藤さん。
そんなにも自信なさ気だったか。
しかし毎回テストで自信がなかったのは事実で、どこか間違えてないか不安でもあった。
けど今回のテストはそんな不安はない。
愛莉との勉強会で理論だったところが整地されたのが、今回不安を感じていない理由だろう。
「……で愛莉はどうだった? 」
少し緊張しながら愛莉に聞く。
すると彼女は困ったような顔をしてゆっくりと答えた。
「いつもよりはかなり出来たけど……、目標を達成しているかどうかはまだわからない、かな」
苦笑いを浮かべる愛莉に「そっか」と返すと遠藤さんが彼女に聞いた。
「自己採点は行ったのですか? 」
「……まだ」
「ならやるしかないね。レン君の部屋で」
にやりとしてトモが俺に言い、俺の部屋に集まることとなった。
★
「おじゃましまーす」
「「おじゃまします」」
学校も終わったとの事で俺達は部屋へと向かう。マンションに着くとトモが我先にと部屋に入り、遅れて愛莉と遠藤さんが入って来た。
トモは我が物顔で俺よりも先に部屋を走り、遠藤さんは恥ずかしそうに彼を見ている。
その様子をみてため息交じりに「少し落ち着け」と言いながら二人に中を案内。
トモではないが二人共俺の部屋の構造は知っているだろうが、ゲストを誘導するのはホストの役目だ。
リビングに着く。
するとトモが電気をつけて早速机についていた。
座る彼を見ながら四人分の珈琲を用意するために「座っていてくれ」と言い俺だけ移動。
ケルトのスイッチを押し、大きめの瓶を開け粉を入れる。
お湯が沸きカチと音が鳴るとゆっくり注いで砂糖を探す。
トモは砂糖多め、遠藤さんはブラック、愛莉は砂糖少なめだったな。
なんだかんだで彼女達の好みを把握している自分に苦笑しながらも、匙加減を間違えないように二つのカップに砂糖を入れていく。
湯気立つそれらを持っていこうとすると隣から声が聞こえてくる。
「持っていこうか? 」
愛莉に聞かれて「大丈夫だ」と漏れそうになるが、それを飲み込み考える。
押し黙った俺に首を傾げる彼女を見ながら「すぐそこだし頼むか」と考え「じゃぁ頼む」と答えた。
俺の言葉を受けて彼女はカップを手に取って、俺達二人は丸い机の上に珈琲を置く。
「お熱いね」
「な、何の事かな?! 」
「茶化すのはほどほどにしないとトモの珈琲の中に大量の塩胡椒を入れるぞ? 」
「それはやめて」
「なら茶化すな」
惨劇しか生み出さない組み合わせにトモが顔を引き攣らせた。
それを見て溜息をつきながら珈琲を口にする。
軽く休憩を挟みつつ愛莉の自己採点が始まった。
「……八百九点」
「今までと比べると天と地の差だが……」
「ぎりぎり入れる、かな? 」
「密集していますからね。その辺りは」
愛莉が自分の点数を呟くとトモと遠藤さんが微妙な顔をする。
もしかしたら俺も微妙な顔になっているかもしれない。
俺達の高校の中間・期末テストは全九科目で九百点満点。大学入学共通テストを意識したものとなっている。
この点数だと三十位前後といった所だろう。
無論今までの彼女の点数から考えると奇跡的な点数だ。点数よりも不正を疑われないか心配でもある。
しかしこの点数は遠藤さんの言葉ではないが本当に密集している点数帯だ。
「大丈夫かな」
「ま、なんとかなるさ」
体を縮め不安そうに俺を見てくる愛莉に俺はやわらかくそう言った。
ここまで如何だったでしょうか?
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