第53話 最悪な妨害
学校の昼休み。
俺と愛莉、トモと遠藤さんは教室でピリついた雰囲気の中普通に喋っていた。
「こんな雰囲気。は、初めて感じるよ」
「試験に無頓着だったら感じなくても仕方ないと思う」
「僕達はいつもだけどね」
「ええ。ですので気にするほどのことでもないかと」
ピリついた雰囲気に圧倒されそうになる愛莉をトモと遠藤さんが「大丈夫」という。
まぁ彼女の気持ちもわからなくもない。
俺達だって最初の中間試験の時はこの雰囲気にのまれそうになったからな。
だが俺達は三人で集まり勉強していた。
それが良かったのだろう。
下手に緊張せず試験に挑むことができたのは、今となっては良い思い出だ。
空気に慣れることができないのか隣で愛莉がそわそわしている。
遠藤さんと肩を寄せ合っているトモが見かねたのか愛莉に話を切り出した。
「重原さんは本当に成績が伸びたね」
「それはレンの教え方が上手かったからだよ」
照れくさそうに愛莉が言い俺の方を見上げてきた。
その表情にぐっとくるが、コホンと軽く咳払いをしてトモに向いた。
「そんなことはない。元々のポテンシャルが高かったおかげだ。俺の予定だと徐々に成績を上げつつモチベーションを維持し大学試験に臨んでもらう予定だった」
「そうなの? 」
「ああ。普通はこんなペースで成績は上がらない。ポテンシャルもあるが努力の成果も出ているんだろう」
俺が言うと愛莉は少し俯き「へへ」と照れた。
全くもって可愛らしい。
見ていたら恥ずかしくなりそうで顔を上げるとニマニマした二人が俺の方を見ていた。
「なにか問題でも? 」
「「ありませんとも」」
全くもって不愉快な視線だ。
★
放課後、俺は愛莉と別れて図書館に行っていた。
教材として使った専門書を返すためだ。
それを返し終わり「さぁ帰ろう」と教室に戻る。
すると女子生徒が数人集まり何やら話をしていた。
「重原。全く本当に生意気よね」
「少しくらい成績が良くなったからっていい気になって」
どうやら俺の存在に気付いていないらしい。
「でもこのままじゃヤバいんじゃない? 」
「確かに」
「なら、やっちゃう? 」
彼女達は……誰だっけ?
名前は知らないがクラスメイトだとわかる。
しかし手に持つカッターナイフは洒落にならない。
直接傷を負わせるようなことはしないだろうが、彼女達の目線の先にある愛莉の教科書をどうするかは容易に想像がつく。
精神的ダメージを負わせる手段の一つだ。
これは見過ごせない。
「止めておけ」
俺が声かけるも彼女達は気付かづ愛莉の机に向かって行く。
……俺ってそんなに存在感ないか? と軽くショックを受けるが、考える。
そもそも彼女達は常習犯ではないだろうか?
こうやってライバルを蹴落としてきた人達かもしれない。
ならば先生に報告する必要があるわけで。
かといって俺が言った所で信じてもらえるどうかあやしい。
ならば——。
パシャリ。
「「「!!! 」」」
写真を撮って後で提出しよう。
「な、何撮っているのよ!!! 」
「というかいつの間に?! 」
「いや俺途中からいたし、「止めておけ」とも忠告したぞ? 」
それを聞き三人は唖然とする。
俺の声は聞こえないがスマホとかの音は聞こえるようだ。
無機物に負ける俺の存在感とは一体……。
ショックを受けつつ彼女達の所まで行く。
愛莉の教科書を確保して三人に向いた。
すると照準が定まらない瞳をやっと落ち着かせて目をすっと細めてこっちを見た。
「ねぇこれヤバ気じゃない? 」
「だね」
「黙ってもらうしかないよね」
ナイフをこっちに向けてニヤニヤする三人。
何するつもりだ?
いや想像つくが……、そこまで短絡的な行動に出るものか?!
「ちょーーーっと黙ってくれればさ。痛い思いせずに済むんだよね」
「そうそう。黙っておいてくれれば、さ」
ナイフをちらつかせ近付いて来る。
「……お前ら停学じゃすまないぞ? 」
「大丈夫よこのくらい」
「バレなきゃ犯罪じゃないし」
その言葉に背筋が凍る。
本格的にまずい。
じりじりと彼女達が近づいて来る。
すると扉の方から大声が聞こえて来た。
「先生!!! こっちです!!! 」
「貴様ら何をしている!!! 」
その声に驚き俺達は一斉に扉を見る。
そこにはガタイの良い生活指導の先生がおりトモが隣に立っている。
更にその横には遠藤さんがスマホをこちらに向けている。
一部が点滅している所を見ると動画を撮っているようだ。
「おい貴様ら話を聞かせてもらうぞ! 」
先生は大声を上げながら教室の中に入って来た。
女子クラスメイトが呆然とする中、すぐさまカッターナイフを回収し無力化した。
そして俺の方を向いて「お前も来い」という。
「脅迫の証拠はここに」
「遠藤。お前も証人として来てもらうぞ」
「承知しておりますとも」
そう言われ俺達は全員生活指導室へ連れていかれた。
結果クラスメイトが三人停学になった。
ここまで如何だったでしょうか?
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