第49話 俺はそんなに分かりやすいだろうか?
「で、デートは行ったの? 」
「……何のことやら」
愛莉と外出した翌日の朝、早速というべきかトモに聞かれた。
俺はトモに昨日行くとは言っていない。
しかし何でこうも見計らったかのように聞いて来るんだ?
不思議に思うが口にせず素っ気なく返す。
素っ気なさすぎたのか気になるようでそれから色々聞いて来る。
「でも重原さんと何かあったんじゃないの? 」
その言葉に体をビクンとさせてしまった。
じりっとトモの方を見るとにやける顔がそこにある。
「そんなことはない」
「えええ~。僕との勉強会を放り出して重原さんと勉強会を開いてるんだから、何か間違いの一つでも起こっても不思議じゃないと思うんだけどな」
「それは悪かったって。だから誤解を招くような発言はやめてくれ」
「なら次は四人で勉強しよ? 」
「オーケー。後で愛莉に聞いておく」
「絶対に了解を取ってきてね」
なんだかトモに遊ばれた気分だ。しかしこんなくだらないやり取りも悪くない。
日常なんてくだらないやり取りが殆ど。有意義な会話をしている人なんて、それこそ社会人になってからだろう。
トモとやり取りをしているとガラガラと扉が開く。
誰とも知らない人が入って来る。
本当に俺はクラスメイトの名前も顔を知らないな、と自覚しながらもその子がおずおずと言った感じで愛莉に近付くのがわかった。
その子が近づくと愛莉も気が付く。
一瞬顔が「むっ」としたようだがそれも一瞬、その子を呼んで輪の中に入れた。
すごいコミュ力だなと思いつつも、自分だけの愛莉ではない事を再認し少し嫉妬感を覚えた。
自分の恋心に整理がついたことにより彼女を起点として生まれる俺の感情が何に分類できるのか、少しずつはっきりとしてきている。
分類されたそれを観察して分別する。
重要なのはそれを管理していきすぎないようにすること。
身近な例がいる分より慎重に管理しないといけない。
しかしあの様子を見るだけで嫉妬か。
全くもって狭量だな、と自嘲しながらも目線をトモに戻すとニヤニヤとしていた。
「ふふふ。具体的にどのようなことがあったのか気になりますな」
「顔が近い」
「よいではないか」
「よくない。そしてなんでそう思う」
「そりゃぁレン君の重原さんに対する目線の種類が変わったからさ」
「種類? 」
思わず言葉を素で返してしまった。
まずいと思うも時すでに遅し。トモの顔の彫りが深くなっていく。
やられたと思いながらも探りに来ていたトモを睨み返す。
恐らくトモは本格的に確信していなかっただろう。
けど俺が誘導尋問じみたことに引っかかったことで今確信したみたいだ。
まだトモに言うつもりはないのに。
言う時は成功した時と、昨日の晩に考えたのにこれでは意味がない。
もしいうのならばネガティブなことでなく、ポジティブなことを伝えたいからな。
しかしトモが言うことも気になるのは確か。
俺の目線が変わったというのならば、旧知の仲である遠藤さんに気付かれるかもしれない。
そして二人で考え、事実に迫るだろう。
そうなると遠藤さん経由で愛莉に気持ちが伝わる可能性がある。
言われる前に自白して口止めをすれば何も言わないだろうが、問題は気付いてから愛莉に伝えるスピードだ。
確実に俺よりも早い。
早々に認めるべきか、黙っておくべきか。
伝えるにしても「好きになりました」と堂々と言えるような性格はしていない。
というよりも本人よりも先に友達二人に言うのはどうなのだ?
相談ということでありなのか? いやもしくは邪魔するな、か。
どちらにしろテストが終わってからだな。
でなければ三人に悪影響を及ぼす可能性がある。
特に愛莉をこのタイミングで混乱させるわけにはいかない。
「はぁぁぁ。その様子だと自分では気づいてないようだね」
全くもって言い返せない。
「金曜日と今日じゃ全然重原さんに向ける目線が違うよ? 」
「………………」
「ま、本人に気付かれないように気をつけてね」
可愛らしい笑顔で注意をしてくる我が親友に顔を引き攣らせながらSHR開始の鐘をきいた。
ここまで如何だったでしょうか?
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