第46話 宇治原くんの初デート 6 宇治原くんのファッションショー
「美味しかったね」
満足そうに愛莉が言う。
そうだな、と彼女の言葉に頷きながら午後の道を歩いている。
愛莉と一緒にファミレスで食事をとったわけだが、よくよく考えれば彼女だけでなく俺も久しぶりにファミレスにいったな。
トモと息抜きに出かける時はバッフルの中で食べるし、そもそも外食というものをしない。
バッフルの中で食べると言ってもうどんかラーメン。
数百円程度の支出なので、実の所ファミレスの方がお高くついたりする。
しかし今回に限ってはファミレスでよかったと思う。
なにせ愛莉がプリンを食べて幸せそうな顔を見ることができたからだ。
人が幸せそうな顔をすると自分まで幸せになる気がしてくるのは一体何なのだろうか。
わからない。
これが「他人が」なのか「愛莉だから」なのか。
少しモヤモヤするが今考えても仕方ないな。
「次どっか行く? 」
「ん~、そうだな」
少し立ち止まり考える。
愛莉は俺に体を寄せて一緒に立ち止まった。
「今日は俺が振り回している感じだし……、愛莉はどっか行きたい場所はないのか? 」
「ボク? ん~」
俺が聞くと彼女も考えだす。
答えが出たのか俺を見上げてはっきりと言った。
「ないね」
「マジですか」
思わず言葉が漏れて愛莉が笑う。
しかし俺も愛莉もないとなると少々困った。
バッフルの中なら食後にゲームセンターで遊ぶという手があったのだが、今回はそれが使えない。
となると他に遊ぶ場所となるのだが……。
本屋は、論外だな。一時的に勉強を忘れさせるために来ているのにこれは、ない。
ならばカラオケ?
バッフルの中にもあるが街にも当然のようにある。
だが愛莉の歌唱力を知らない。
彼女にとって地雷の可能性もある。加えて俺は歌が得意ではない。ならばこれも違うか。
考え込みながら顔を上げる。
するとそこにはいつもと違う愛莉の姿があった。
違う姿……。
「服を買いに行かないか? 」
「服? 」
「あぁ。俺の服を買いに行くのを手伝ってくれ」
そう言い俺はアパレルショップへ向かった。
★
自分で言うのもなんだが俺は服に無頓着だ。
無難なものしか選ばないし、それに買ったとしても後数年使う自信はある。
だが今回よくわかったのだが女子と一緒に遊びに行く時この服装は褒められたものではない。
これまで女子と一緒に遊びに行くという発想すらなかったから仕方ないと言えば仕方ないのだが、機会がある可能性が出た以上は整えないといけないと考えついた。
よって服を買おうということなのだが服選びに自信のない俺。
ならばおしゃれさんの愛莉に服を選んでもらおうということだ。
我ながら名案。
「本当にボクが選んでも良いの? 」
「任せた」
「わかった! 」
愛莉は元気よく返事をして微笑みかけてくる。
彼女は俺に背を向け店内を見渡す。
ある一角を見つけると「こっち」と足を進めた。
彼女について行くとそこにあったのはセットもの。
「これから寒くなるからね。今は秋だけど過ぎればすぐに冬だから」
「先取ってやつか」
「この中で持っているのある? 」
そう聞かれて商品を見渡し愛莉に向いて答えた。
「ないな」
「なら一先ずインナーとアウターを決めよう」
商品に手をかけ幾つか手に取る。
身長差があるためか俺の肩に商品を合わせるのに背伸びをしている。
「持とうか? 」
「動かない! 」
「はい」
怒られてしまった。
しかし一生懸命探してくれるというのはくるものがあるな。
世の彼氏という存在はこんな気恥ずかしさと嬉しさを感じているのだろうか。
いやいや、いつ俺が愛莉の彼氏になったんだ?
勘違いにもほどがあるな。
けど。
――だったらいいな。
そう、思ってしまうのは……仕方ないじゃないか。
俺が一人気分を上下させている間も愛莉は服を選んでくれた。
そして二パターン選び抜き、次はズボンへ。
そして結局愛莉が選んだものを買って俺達は帰路に就く。
今日初めてお金を貯めていてよかったと思った。
ここまで如何だったでしょうか?
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