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第40話 宇治原くんの初デート 2 集合

「ど、どうかな? 」


 愛莉(あいり)がもじもじしながら聞いてくる。

 その様子がなんともいじらしい。

 だがそのせいか思った言葉がそのまま漏れた。


「……綺麗だと思う」

「そっか。えへへ……」


 答えると照れたのか赤くなり短く(つや)のある黒い髪を小さく動かして下を向く。体を縮こませているがそれも小さく可愛らしい。

 今の愛莉の服装は、今までとは異なりジャケットにスカートとニーハイ。

 スカートの色は(こん)色で学校指定のものと比べるとかなり(たけ)が短く、細い足を(おお)う黒いニーハイと絶対領域を作っている。

 濃い目の色が好きなのか白いインナーの上に薄手の黒いジャケットを羽織(はお)り、可愛らしさを残しつつ大人っぽさも出ている。

 非常に、神々しい。


 俺が(ほう)けていると愛莉の声が聞こえて来た。


「レ、レンも今日はいつもと雰囲気が違うね。似合ってるよ」

「あ、ありがとう……」


 去年のやつだけどな、と心の中で大きく叫んだ。

 確かにいつもとは違う服である。

 だが愛莉ほどではない。彼女と比べて質素(しっそ)も良いところ。


 愛莉に褒められ素直に嬉しいのだがそれはそれ。もしかして今日服を買いに行った方が良いんじゃないのか、と思いつつも緩んだ(ほほ)を引き()め直す。

 ここで固まっていても時間を無駄にするだけだ。歩きながら考えよう。


「じ、じゃぁ行こうか」

「うん」


 愛莉に声かけて俺達は街の中心部へと足を進めた。


 ★


重原(えはら)さんは今日思い切りましたね」

「そうだね。ボーイッシュな感じを残しつつ大人な雰囲気を出してきてるね」

「しかしもどかしいですね」

「確かにそうだけど僕達に出来ることなんて見守る事くらい」


 女性の言葉に隣の女性らしき人物が同意した。


 街の中心部へと向かう二人を距離を取って見る影が二つある。

 友和(ともかず)冴香(さやか)である。


 特に怪しい格好をしているわけでは無い。

 いつもと違い私服姿でマスクを着け帽子を(かぶ)っている以外、普通の姿だ。

 しかしながらやっていることは不審者のそれ。


「あ~、なんでそこで顔を()らすのですか?! 」

「流石に道の途中で見つめられると僕達の方が恥ずかしいよ」


 (れん)も場所を問わず自分達の世界を作り上げる友和だけには言われたくないだろう。

 しかしながら愛莉が見上げて二人が顔を逸らす、これを何度もやっていると友和がそう言いたくなるのは仕方ないかもしれない。


 全員が少し歩く。

 簾に近寄る彼女だが彼女の右手がそわそわしていた。


宇治原(うじはら)さん。そこは漢気を見せて手を取ってあげてください」

「果たして気付いているのか気付いていないのか。気付いているとしても人前で手を繋ぐの、恥ずかしい気持ちはよくわかるから僕からは何ともいえないかな」

「あら。私と手を繋ぐのは嫌なのですか? 」

「そんなことないよ。ほら」

「ありがとうございます」


 友和が笑顔で手を取り冴香が(すず)しい顔をして前を向いた。

 その先には更に (物理的に)距離を詰める二人がいる。

 秋も深まる中寒さが襲い掛かってくる時期だが、そんな寒さが逃げ出すような雰囲気を作り上げている。


「もどかしいですがまだまだこれからです」

「僕達が付き合い始めた頃もあんな感じに見えたのかな……」

「……さて、わかりかねますね。過去を、しかも他人目線で見ることなんて不可能なので」

「それもそうか。でもレン君に聞くとわかるかもしれない」

「あぁ……確かに。宇治原さんは交友関係こそ狭いですがよく人を見ていますからね」

「今度聞いてみる? 」

「止めておきましょう」

「何で? 」

「帰ってくる言葉が予想できるからです」


 友和は彼女の言葉を聞き口に手を当てくすりと笑う。

 あてられて冴香も軽く笑い微笑ましい空間が出来上がった。

 しかし我に返った友和が前を向く。

 霧散(むさん)した雰囲気の中冴香が先を(うなが)した。


「では私達も行きましょう」

「了解」

「エスコートはお任せします」

(かしこ)まりました。お嬢様」


 簾と愛莉をつける二つの影が動き出した。

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アラフォー冒険者の田舎暮らし~元魔剣使いのセカンドライフ! ~
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