第37話 宇治原くん、デート蔵人に相談する
「うぉぉぉぉぉ!!! どうしたらぁぁぁぁぁ!!! 」
愛莉が帰った後俺は一人部屋で悶絶していた。
疲れてそうだったから「遊びに行かないか? 」と聞いたけど、外でやるとナンパそのものっ!
完全に軽い男じゃないか!
てかこれデートの誘いじゃないか!!!
「……どうしたら。そうだ! こういう時こそトモに聞くべきだ! 」
ベッドの上に転がっているスマホを発見。
すぐさま手に取り電話帳を開けて佐々木友和をタップする。
待機音が鳴る。
ドキドキしているせいかスマホが微弱に震えている。
心臓の鼓動がスマホに伝わるようになったのか、と馬鹿なことを考えているとスマホ越しにトモの声が聞こえて来た。
『やぁ。こんな時間にレン君から連絡が来るなんて珍しいね』
「助けて、トモえもん!!! 」
『なぁんだい、レン君』
全身真っ青の国民的AIロボットの真似事をするトモの声を聞き、一瞬で冷静になった。
「その声に違和感が感じられないのがすごい」
会話が途切れた。
一拍置いてまた聞こえて来た。
『こういう時どう返したらいいのかわからないわ』
『笑っているじゃありませんか』
『あ、冴香』
『お二人とも。夜も遅いので電話もほどほどにしてくださいね』
「『了』」
スマホの向こう側から聞こえてくる遠藤さんの言葉に俺は了解の敬礼をした。
電話越しに学校では聞かない遠藤さんの柔らかい声が聞こえてくる。
全く夫婦仲がよろしい事で。
思いながらもスマホに視線を落として、トモに再度声かけた。
「で相談事なんだが」
『ネタじゃなかったんだね』
「……トモは俺の事をどう見ているんだ? 」
『時にボケる影が薄い系成績優秀者』
椅子に座っているのかギィと椅子がきしむ音がスマホから聞こえてくる。
大変不本意な見られ方だが否定できないのが痛い。
『で重原と何かあった? 』
「……時々トモが怖い」
『レン君が困る事なんて生活の事かそれとも免疫のない女性関係だろうから、誰でも想像がつくよ。でレン君の周りに女子といったら遠藤さんくらいしかいない訳で、おのずと答えがわかってくる』
「……誰でも想像つくほど俺はわかりやすくない」
『確かにレン君を認識するところから始めないといけないから、確かにわかりにくいかもね』
そう言う意味で言ったわけじゃないが、確かにそうである。
空気な俺は認識されないのでまずそこから。
しかしこのままだと堂々巡りになりそうなので本題に入る。
今日あったことを話すと僅かな沈黙が流れた。
『……レン君が肉食だったなんて』
「違うわい! 」
『僕の知っているレン君じゃないっ! 返して! 僕のレン君をっ! 』
『そう言うことをやるから誤解されるのですよ。相手は不詳ですが』
『……ごめん』
トモはスマホの向こうで遠藤さんに叱られたようだ。
だが……、はてトモは一体なんのアニメを見たんだろうか。
恐らく何かのセリフだとは思うのだが。
彼がこんなおちょくり方をしている時は、必ずと言って良い程アニメに影響されている時。
『レン君の話を聞く限りだとアドバイスが出来ることはないかな』
「そこをなんとかっ! 」
『精々デートプランを考えるくらいだけど、それはレン君がやった方が良いだろうし』
「そんな無慈悲な」
そういわれても、とスマホ越しから聞こえてくる。
『大体レン君。服を見繕うにも時間ないでしょう? 』
「うぐっ……」
『それにデートプランといっても重原さんがどんな趣味があるかわからないし』
「確かにそうだが」
『典型的な答えは出来るよ? でも当たりはずれの無い無難で普通な思い出にも残らない初めてのデートになってしまうからおすすめしない』
「無難で良いんだが……」
『ネットで探さず僕に聞いたところからそれは本心じゃないよね』
核心を突かれて言葉が出なかった。
ネットを検索すればデートプランのテンプレなんて幾らでも出てくる。
ここがいい、あそこがいいとか。
でも俺は如何せんデート初心者。
可能な限り失敗は避けたい。
無難な所に行くのは簡単だ。しかしその情報が正解とは限らない。ならば信頼のおける蔵人に聞いた方が良いと考えてトモに聞いた。
『ま、ボクと一緒に行くような所でいいんじゃないかな? 』
「……信じていいんだな? 」
『くすっ……。疑う気がないくせに』
ぐうの音も出ない言葉に俺は押し黙る。
『じゃぁね。健闘を祈るよ』
「……ありがとな」
『こっちこそ』
ピロン、と音を鳴らしてスマホが切れた。
「助かってるのは俺の方だと主張したい」
こうしてデート初日を迎えた。
ここまで如何だったでしょうか?
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