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第35話 宇治原くん、肝を抜かれる

 愛莉(あいり)との第一回勉強会が終わった後、オリジナル小テストをまじえながら勉強会を重ねた。

 愛莉(いわ)く、図書館よりも俺の部屋の方が勉強をしやすいとの事だったので俺の部屋で勉強することが多い。


 しかし資料もいる訳で。

 頻繁(ひんぱん)にではないが図書館でも勉強会を行っている。


「次はこの問題」

「任せてよ! 」


 夜リビングに座る彼女に作った小テストを手渡す。

 元気よく受け取った彼女は早速時始める。それと同時に俺はスマホに目をやり時間を測る。


 今彼女が行っている問題は化学の問題。

 愛莉が苦手としていた分野で一桁を取っていた問題科目でもあった。

 だがそれも昔の話。

 食わず嫌いと似たようなものだったようで、しっかりと勉強した今となっては彼女の点数を支える科目の一つとなっている。


 スマホのタイマーを見ながら俺も自分のノートに視線を落とす。

 赤い丸が記されたそれは去年の入学共通テストの過去問の回答だ。


 愛莉の頑張りように触発された形で、俺も勉強に熱を入れている。

 今の関係を続けたいと思う気持ちから来ているのもあるが、愛莉に「わからない」と言われた所が時々根本的に理解していないことがわかったことも拍車(はくしゃ)にかけているのは間違いない。


 結果的にこの勉強会は正解だった。

 愛莉の勉強は当然として俺自身の勉強にもなっている。

 感謝しかない。


 チラリと彼女をみると異能レベルの集中力で問題を解いている。

 流石だと思う。

 しかしそのあどけないもキリっとした表情に吸い込まれるような感覚に襲われる。

 日を増すごとに彼女が魅力的に見えてきているのは気のせいだろうか?


 秋も進み流石に肌寒くなってきたので徐々に服の(たけ)は長くなっている。

 それでも俺から見れば「それ寒くないか? 」と声をかけそうになるくらい薄着だ。


 よく観察すると日ごとに服装が変わっているのもわかる。

 といっても大きく変わっているのではない。

 服の色が若干変わったり少し小物を着けてきたりと、だ。


 肌寒い日にカーディガンを羽織(はお)ってくることはあるが、俺の部屋では七分(そで)のシャツを着ていることが多い。

 彼女の好みか色は全て濃いめだった。

 黒や赤が多く、白い服を着たことは片手で数えるほど。


 ――何か言った方が良いのだろうか?


 来る(たび)にそう思う。

 しかし実践するにはハードルが高い。

 何せ「どこを」「どんなに」「どのように」褒めたらいいのかわからないからだ。


 愛莉は可愛らしくも元気溌剌(はつらつ)なボーイッシュ美少女だ。

 彼女の服装はまさしくそれに合わせたようなもの。

 正直なところ「似合っている」以外の言葉が思いつかない。

 こんなことならファッションの勉強でもしておくべきだったと割と本気で思う。


 トモはこういう時どんな褒め方をするのだろうか。

 彼女の遠藤さんを日常的にさりげなく褒めている気はするが、この場合はどうだろうか?

 こういうことで悩むなら褒め言葉の一つや二つ、トモに教えてもらっておくべきだった。


 ――日々(わず)かに変わる異性の服を褒めよ。


 こういう問題がテストに出たら赤点を取る自信があるな。

 ならば毎日褒めない俺は赤点どころかゼロ点を毎日叩き出していることになる。

 今度高校の図書館でファッション雑誌が無いか探してみよう。

 あそこ割となんでもあるからな。


 そんなこんなで約二週間ほどが過ぎたわけだ。


 カリカリカリ、という音が止まる。同時に愛莉の目線が徐々に上がる。

 黒い瞳が俺を射貫くと、「出来た! 」と言って解答用紙をこちらに向けた。


「……見直さなくても良いのか? 」

「だ、大丈夫だと思う」

「六十点以下は語尾が「にゃ」になるが……、本当に良いのか? 」


 暗に時間はまだ残っていると伝えるのだが「大丈夫」という。

 そう言うのならば仕方ない。

 早速愛莉のテストを回答していった。


 愛莉が行っているオリジナル小テストは緊張感を出すために罰ゲームありとなっている。

 罰ゲームの内容は良心的なものになっているが、実践するとなると恥ずかしいものでもある。


 下限は六十点。

 最初は散々だったが現在は六十点前後を行き来している所だ。


 愛莉は高い集中力を持っている。しかし所々で(ぼん)ミスが見られる。

 これを直せば七十点前後は硬いと思うが、思い込みと言うやつだろう。

 何度見直しても自分では見つけることが困難なミス。

 しかしながらこれを少なくするテクニックは幾つかある訳で、可能ならば彼女に教えたそれで残り時間ぎりぎりまで使って確認して欲しかった。

 が……。


「!? 八十点?! 」


 幾つかはねた問題を見つつもその正答率に驚いた。


「百点を逃したか」

「いやいやいやすごい事だぞ」

「今回自信あったからチャンスだと思ったんだけど」

「現時点だと十分だろ」


 俺が素直に褒めると「そう? 」とクールに返してきた。

 驚きが冷めないまま顔を上げる。

 テスト用紙を持ち、愛莉に返そうとすると短い髪を(いじ)りもじもじとしていた。


「ねぇ」

「ん? 」

「覚えてる? 」


 愛莉はテスト用紙を受け取らず(わず)かに顔を上げる。

 俺を見上げて小さな口を開けた。


「……ご褒美」

ここまで如何だったでしょうか?


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