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第34話 結局両想いということでOK?

 流石に遅くなり過ぎたので愛莉(あいり)を家まで送ってマンションに戻る。

 最初は「この距離だし」と言っていたがこの距離でも何が起こるかわからない。

 勉強の為とはいえ遅くまで部屋に置いてしまった身としては引き下がるわけにはいかず、ごり押しすると愛莉は「……そこまでレンが言うのなら」と了承(りょうしょう)してくれた。

 渋々と言った感じではなく少し恥ずかしがるような感じだったが、きっと気のせいだろう。


「あれほどできるとは思わなかった」


 自分の部屋に入りソファーに腰掛けると自然と言葉が漏れた。

 努力家の片鱗(へんりん)は時々見せていた。勉強をすると決めた時から勉強をしてきていたのかもしれない。だがいくら勉強をしてきたからといっても出来るレベルを(ゆう)に越していた。


「天才、というやつか」


 自然と出た言葉に(まゆ)を寄せて軽く溜息をついて考える。


 彼女の輝きは置いておくにしても、「重原(えはら)愛莉」という人物を表すのにその言葉が一番しっくりした。


 俺は「天才」という言葉が嫌いだ。

 天才と呼ばれる人達は往々(おうおう)にして何かしら努力をしている。

 他人がその努力を差し置き結果だけを見て「天才」と簡単な言葉で済ませることが不快でならない。


 しかし彼女はどうだろうか。

 異能に似た集中力に記憶力を強化されているのではないかという程の学習能力。

 流石に一回で全てを覚えるようなことは無かったが、地力(じりき)の差を見せつけられた感じである。


「俺もうかうかしてられないな」


 才能の差に落ち込むより先に「頑張らないと」と思えた。


 愛莉の点数が良くなりお役御免になると彼女のと交流も危ぶまれる。

 やましい気持ちがないと聞かれれば無いとは言い切れない。だがやましい気持ちを差し引いても愛莉が隣にいる生活というのは今までにない充足感を覚えている。

 愛莉がいない日常を思い浮かべると寂しくなる。


 ――たった数日。されど数日。


 ここ最近に起こった変化は俺にとってかけがえのないものになったようだ。

 その一方で自分の小ささを感じていたりもする。

 けれどそれはこの先必要のないもの。

 愛莉を応援しつつ、俺も更に勉強し目標となるものを見つけて行こうじゃないか。


「……小テストでも作っておくか? 」


 学校で毎日各教科小テストはある。

 しかしそれは前日までの学習を振り返るもの。

 上位三十位、更に医学部を目指すのならば振り返るだけでなく「予習」が必要になってくる。

 ならば——。


「作るか」


 独り()ちてソファーから立つ。

 自分の部屋へ行き、ノートに問題を作り始めた。


 ★


「……引いてなかったかな」


 愛莉は寝間着でベッドにダイビングし枕に顔をうずめていた。


 今日は彼女にとって特別な日。

 初めて(れん)に勉強を教えてもらう日でもあり、そして決意の日でもあった。


 愛莉は比較的裏表(うらおもて)の無い性格をしている。

 前回はニーハイで隠していたが傷の残る脚を(さら)して簾の部屋にいった。

 これは愛莉が簾に隠すことはないという意思表示であり、完全に過去を乗り越えるための儀式の一つでもあった。


 (気付いてないことも……あるかな)


 基本的に愛莉は座っていた。

 部屋に来た時も、そして出る時も簾は彼女の後ろを見ており傷がある前は見ていない。

 実の所簾には見えていないのだが、直接聞く以外に彼女がそれを知るすべはない。


 (聞くのが一番なんだろうけど……。引かれたらどうしようぅ)


 傷は男の勲章というが、女性にとっては重大なことだ。

 こと多感な十代となってはトラウマもの。

 好意を寄せる男性に傷を見せるという行為は相当な覚悟が必要になるが、愛莉は実行した。


 実行に移すことで彼女は一段と高い精神を身に着けたのだが、逆に「気になる相手がどう思っているのか」という恋する乙女(おとめ)特有の悩みを抱えてしまった。

 何事もバランスが難しい。


 悶々(もんもん)とする中彼女は枕を抱えて右に左にと体を転がす。

 そして答えが出ないまま布団に潜り込みその日を終えた。

ここまで如何だったでしょうか?


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