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第33話 勉強会という名のおうちデート。だが二人はガチである! 2

「おじゃまします! 」


 俺が「入ってくれ」と言ったら愛莉(あいり)が元気よく一歩前に出る。

 夜なのに元気が有り余ってるな、と思いつつも片手で扉を支え彼女を中に入れる。

 俺の胸元辺りを愛莉の頭が通り過ぎた時、(かす)かな熱気を感じふわりといい香りが漂ってきた。


 ――風呂にでも入ってきたのだろうか。


 しゃがみ靴を脱いでいる彼女を見て一気に体が熱くなるのを感じる。

 ダメだダメだ、と気合いで熱を冷ましていると愛莉が脱ぎ終え上がり(かまち)に立つ。

 小振りなお尻がこちらに突き出、背中が伸びる。伸びた綺麗な背筋にカモシカのような美脚が伸びきると、体が反転し俺の方へ向いた。


「行って良い? 」

「ああ」


 流れるような動作と美しい動作に見惚れ少しキョドりながらも返事をする。

 愛莉はにかっと笑みを浮かべてリビングへ足を向けた。

 置いてけぼりにされそうなことに気が付いて慌ててスリッパを脱ぎ、彼女の後ろをついて行く。


 両手を後ろにしているせいか彼女が持っている鞄が右に左にと揺れている。

 今日彼女が持っているのは学校指定の鞄ではないようだ。

 街で見かけるようなキラキラした鞄ではなく素朴(そぼく)なグレーの大きな鞄。けれど愛莉の日常を垣間(かいま)見た気がして少し嬉しい。


 服もそうだが鞄もあまり装飾(そうしょく)がされていない。

 愛莉は素朴な物が好きなのだろうか。

 聞いてみないとわからないが、聞く勇気は持ち合わせていない。

 もしそんな勇気があるのならば俺はクラスで空気的存在にはなっていないだろう。


「わぁ。準備してくれていたんだね」


 タタタと軽い足取りを追うと愛莉が感嘆(かんたん)の声を上げる。

 こそばゆくて苦笑いを浮かべながら彼女に「座ってて」と言った。

 「どうしたの? 」と聞いてきたので「飲み物を用意するだけ」と言いキッチンがある方へ足を向けた。


「気を使わなくてもいいよ」

「ペットボトルを出してくるだけだから気にしない」


 愛莉に振り向かず五百ミリリットルの麦茶のペットボトルを冷蔵庫から出す。

 コーヒーやココア、炭酸とかも買い物の時思い浮かべたけど無難(ぶなん)な麦茶で落ち着いた。

 自分で()れることも出来なくはないが俺はまだ愛莉の好みを知らない。

 麦茶なら失敗はないだろう、ということでの選択だ。


「ほい」

「ありがとう」


 正座して座る愛莉の前にペットボトルを置く。

 俺の部屋に慣れないのか足を何度も組み直している。

 それもそうか。

 あまり異性の家に上がる機会なんてないもんな。

 むしろ男子の家に上がることに慣れていたら少しショックを受けるかもしれない。


「さ。始めようか」

「うん」


 愛莉が男子の家に上がったことがないと思いたい、という気持ちを誤魔化すように勉強会開始の合図をした。


 ★


 彼女に勉強を教えて分かったことは、「やっぱりすごい」ということだった。


 異能にも似た高い集中力はもちろんの事、理解力も高い。

 愛莉がペンを走らせる中、時々わからない所を聞かれ教えるがそれを咀嚼(そしゃく)し自分のものにしている。

 三回くらい同じことを聞かれると四回目がない程。

 受け取ったテストからは想像が出来ないほどの地頭(じあたま)の良さだ。


 愛莉がペンを走らせ、時々俺が逆に質問し、回答させる。

 最初わからなかった事も、イレギュラーな問題にも関わらず対応できるようになっている。


 神様から強化魔法(バフ)でもかけられたか? というレベル。


 信念を持ち前に進む愛莉。

 彼女のポテンシャルも(あい)まってかその前進速度はスポーツカー並み。

 才能もあると思うが、この様子を見ていると愛莉のスペックを根本的に支えているのは「努力」ということがわかる。


 ――俺は足りてないのか?


 輝く彼女を見ていると自然と思ってしまった。

 無論俺も学年一位に見合うだけの努力をしている。

 効率を考え如何(いか)に攻略するかを重点的に。

 だが彼女を見ていると俺のこの座がちっぽけに見えてきた。


 ――目標、か。


 俺と愛莉の差は、天賦(てんぷ)の才でも努力の量でも効率でもないだろう。

 彼女にあって俺にないもの。

 それは俺が提示したにもかかわらず、自分が明確に持っていないもの。


 つまり明確な目標。なりたいものともいう。


 果たして見つけることができるだろうか。

 思考を奪われながらも愛莉に問題を放り投げていると勉強会終了のアラームが鳴った。

ここまで如何だったでしょうか?


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