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第30話 この学校では「図書館」と呼ばれています

 朝いつもと同じく愛莉(あいり)と共に登校する。

 愛莉が隣にいるせいか時々視線を感じるが、きっと愛莉に向けられたものだろう。

 他愛(たあい)ない話をしながら足を進める。

 教室に着くといつものように遠藤さんとトモが話していた。


「おはよう。レン君」

「おはようございます」


 俺達に気付いたのか話を止めて挨拶をしてくる。

 片手を軽く上げながら挨拶を返すと愛莉が元気に挨拶した。


「仲が良いね」

「……普通だろ? 」

「いえつい最近まで話したことがないというのが嘘に聞こえるくらい仲が良いです」


 にやけながら言うトモにどこか微笑ましいような表情で見てくる遠藤さん。

 反論したいが、反論できない。

 確かに距離は近いと思う。

 しかしこの二人にだけは言われたくない。


 軽く茶化(ちゃか)されながらも自分の机へ。

 その間に愛莉はクラスの友達の所へ挨拶に行っている。

 コミュ力のすげー、と改めて思いながらも昨日渡されたテスト回答を思い出す。

 頭の痛い問題ではあるが何とかするしかない。


 意気込んでいると一日の始まりを告げる朝のSHRが始まった。


 ★


「……ボクのテスト。どうだった? 」


 放課後、おずおずといった様子で愛莉が俺に聞いてきた。

 さて、どう答えるのが良いか。

 直接いうと傷つくかもしれない。しかし今後の事を考えると言わないわけにはいかない。


「酷かったと思うんだ。本当の事を言って」

「めっちゃ酷かった」


 がくりと愛莉が項垂(うなだ)れた。


「もう少し言葉を選んでもよかったんじゃないの? 」

「そうは言うがトモ。これ以上ソフトな表現がない」


 苦笑するトモに言葉を返す。

 それだけ陸上に(せい)を出していたということなのだろうが、昨日頭を痛めたのも事実。

 (さいわ)いなことに目標が明確で彼女にやる気がある。よってまだ何とかなると思うが……。


 トモと話していると、隣に立つ遠藤さんがチラリと瞳を移し、トモに声をかけた。


「私達はそろそろ行きましょう」

「え? もう? 」

「お二人はこれから勉強があると思うので」


 遠藤さんが言うとトモは「そうだね」と立ち上がる。

 結構時間が押しているから、彼らの気遣いは正直ありがたい。

 二人に「ありがとう」と告げると「気にしない」と返事が返ってくる。

 トモと遠藤さんはそのまま鞄を持ち座る俺達に手を振って教室を出て行った。


「じゃ、俺達も準備をして図書館に行こうか」


 俺も鞄を持つ。

 図書館に行った後、退室時間がきたら俺の部屋に来ることになっている。

 その頃にはこの教室も()まっているだろう。


「準備終わったよ」


 自分の机に鞄を取りに行っていた愛莉がこちらに戻ってくる。

 そして愛莉を連れて図書館へ向かった。


「始めて行くな」

「運動部の人には(えん)がないかもな」

「レンは行ったことがあるの? 」

「参考資料を借りに時々行く。教材を自分で買うには負担が大きすぎるから」


 なるほど、と愛莉が納得する声が聞こえてくる。


 この学校の図書室は「図書館」と呼ばれている。

 何故かというと単純に部屋が広いのと多様な本を(そろ)えているからだ。

 行ったことがあるためわかるが、とてもじゃないが一学校の蔵書(ぞうしょ)数ではない。小さな町の図書館ほどはある。

 ある時疑問に思いトモに聞いた。彼の言葉によるとこの学校のOB・OGが様々な寄付(きふ)していることが理由のようだ。


 流石県内有数の進学校。

 しかし逆に納得だ。

 あれだけの本を生徒が積極的に手に取ればおのずと成績は上がる。

 この学校が名を()せているのは生徒の努力の他にも卒業生の力もあるのだな、としみじみ思う。


「ここが図書館」


 ガラ、と扉を開けた先で愛莉が(ほう)けたような声を出す。

 そうなるのも無理はないと思いながらも、俺は生徒証を取り出す。


 俺達の入室を(こば)んでいるゲートに生徒証を当て、中へ入る。

 ピ、という音が遅れて聞こえ振り向くと愛莉が慌てた様子で入って来た。


「さ、勉強を始めようか」


 第一回勉強会の始まりである。

ここまで如何だったでしょうか?


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