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第27話 勉強教えて宇治原くん! 8 おのれ大黒、やってくれたな!

 俺が愛莉(あいり)に成績を聞いたら彼女の顔が強張ったのがわかった。

 彼女が勉強できないことは感じ取っている。

 何せ「努力をすることが楽しい」と言いつつも俺を頼るほどだ。

 自分一人では医学部入学への活路(かつろ)を見いだせないレベルとわかる。


 しかしどこまでできて、そして何が得意で苦手なのかまでは分からない。

 こればかりは、例え失礼であっても聞かないと教えようがない。


「テ、テストを見せないといけない……、かな? 」

「出来れば見せて欲しい」


 そう言ったが絶対に見せて欲しい。

 見せてくれないと対策の取りようがない。

 学内テストの成績を上げるのは必須。

 そして赤本レベルで高得点を維持するのも必須だから。


 赤本がどうしても解けないとなると、学内テストで良い点数を取り、生徒会に入る準備をして、内申点を(かせ)ぎにいく、という方法も考えないといけない。

 つまり推薦(すいせん)入学だ。

 医学部に行く方法はなにも一般入試だけじゃないからな。


「テストは今持っていないから今晩(こんばん)渡しに行くよ」

「今晩?! 」

「マンション近いし、こういうのは早い方が良いでしょう? 」

「……わかった。前のテスト結果は後で見せてもらう」


 真剣な表情で愛莉が頷く。


「正直ボクのテスト結果は良くない」

「それは薄々知っていた」

「それはそれで失礼じゃない? 」

「今までの事を踏まえての事だ。むしろ自分でどうにかなるのなら俺に相談しないだろ? 」

「……そうだけど」


 少し(うつむ)く彼女に申し訳なく思いながらも催促(さいそく)した。


「……下位の中くらい、と言っておくよ」

「となると二百五十位前後、ということか」


 この高校は一学年約三百人のマンモス校。

 その下の中ということはこの辺が妥当(だとう)だろう。


 これは厳しい。


 一気に学力を上げるのもそうだがまず壁を乗り越えるのが難しい。


 テスト順位を上げるには幾つかの壁がある。簡単に下位から中位、中位から上位、上位からトップ十までの壁だ。

 俺達は自由を手にする為にこれらの壁と戦わないといけないのだが、途中ノイローゼで離脱者が出ることも少なくない。


 しかし、なるほど。

 陸上部でどんな練習をしていたのかはわからないが、頑張り過ぎて倒れる可能性が高いから、大黒先生はああして息抜きをさせるようにと(くぎ)を刺したのか。


 適度(てきど)に息抜きをしつつトップ三を固めている俺とトモ、そして遠藤さんからすれば勉強とは効率の問題だ。

 だがスタートラインに立っていない愛莉からすればがむしゃらに頑張るしかない訳で。


「わかった。なら一先ず計画を立てよう。その為にも苦手科目を教えてくれ」

「……全部苦手だけど……、強いて言うなら科学系、かな」

「化学・物理・生物といった所か。なら数学も得意そうではないな」


 鞄からメモ帳をとり彼女の話を聞きながら、この前作ったスケジュール表を(いじ)っていく。

 聞く限り良くて三十点、悪いものだと一(けた)もありそうだ。

 これは思った以上に難易度が高い。


 大黒先生じゃないが不可能じゃないと俺は思う。


 (よう)は効率。

 今まで彼女が陸上に()いていたリソースを勉強に移すだけ。

 もし彼女にやる気がなかったら「無理」と答えていただろう。

 だが今の彼女はやる気に()ちている。

 次の期末テストで上位三十人に入り、モチベーションを維持する。

 それができると本格的に医学部が見えて来る。


 逆に、大黒先生が上位三十位と区切ってしまったため、こちらで目標設定を調節することが出来なくなったのは痛い。

 目標未達成によるモチベーションの低下が彼女のパフォーマンスを落とす可能性があるからだ。

 俺の予定だと最初は下位脱出、そして順当に中の上を狙い、三年までに上位に組み込んで、その勢いのまま医学部の入試を受ける計画だった。


 余計なことをしてくれた、と思うもどうしようもない。


「一先ずこのスケジュールで行こう」


 そう言いながら彼女にノートを渡す。

 腕を伸ばし受け取った愛莉はパラパラと(めく)った。


「……運動部の練習メニューみたいだね」

「運動部の練習メニューというのが俺にはわからないが、まぁこんな感じだ。後は愛莉のテスト結果を見て細かい所を調節しようと思うんだが……。どうだ? 」


 愛莉を見るとキリッとした表情をこちらに向ける。


「やるよ。そして受かってみせる! 」

「……まずは上位三十位だな」

「あ、そうだね」


 愛莉がクスクスと小さく笑い空気が弛緩(しかん)する。


 さて。頑張るとしましょうか!

ここまで如何だったでしょうか?


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