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第22話 勉強教えて宇治原くん! 3 家に帰る宇治原くん

 マンション前で愛莉(あいり)と別れた後エントランスに入る。

 いつもと同じように郵便ポストを確認しエレベーターに乗る。

 空気が抜けるような音がし、外に出て、鍵を開け、部屋に入った。


 部屋に戻り手洗いうがいを済ませると一先ず洗濯機を回して晩ご飯の準備をする。

 もやしいっぱいの簡単な野菜炒めを作り、そしてご飯を口にした。


「どう教えるべきか」


 食べ終わり洗濯を()している間に考える。

 俺は愛莉の学力を知らない。

 まずは彼女の実力を測る所からだな。


 高校の勉強でもかなりレベルが高い。

 どのくらい高いかというと成績を維持するためには猛勉強していた中学時代を更に上回るほどにレベルが高い。

 しかし慣れとはおそろしいもので、ルーチン化された予習復習をこなすことにより俺は今の順位を維持している。


 が医学部を目指すとなるとそれを超える勉強が必要になる。

 それに彼女は今までスポーツ一筋だったはず。

 全ての運動部が勉強を(おろそ)かにしているとは限らない。しかし愛莉の言葉によると彼女自身一人で勉強するよりも人に勉強を教えてもらう方が効率が良い考えるほどの学力。


「これは難題だな」


 ソファーに寝転がりながら独り()ちる。

 自分で勉強するのと人に教えるのではスキルが違う。

 加えて俺にも苦手な科目がある訳で。


「共通テストの赤本の確保(かくほ)は確定だな。確か図書館にあったはず。しかし高校一年にして赤本を手にすることになるとは」


 もっと先になると思っていた。

 こんなに早く大学受験の勉強に取り組むことになるとは……。それなりの大学へ行こうとしていた俺には想像がつかなかった。

 もちろん国内有数の大学を目指す人達が小学校や、それよりも前から準備をしているのは知っている。

 それに比べると俺は遅いのだろう。

 だがある意味妥協(だきょう)していた俺からすれば早すぎるくらいで。


 しかしこれはある意味チャンスなのかもしれない。

 彼女に勉強を教える(かたわ)ら自分の勉強をする。

 人に教えるということは自分の理解が必須なわけで。


「けど大丈夫か? 」


 愛莉はスポーツドクターになりたいと言った。

 ある意味必然的な目標設定だと思うが、同時に彼女の過去を()り起こすものでもある。

 スポーツドクターになれたとして彼女は「その時」のスポーツ選手を見なければならない。

 愛莉は故障によるスポーツの断念(だんねん)を少しでも減らせればと考えているのかもしれないが、自分が叶えられなかった姿を見るというのは彼女が思っているよりも(つら)いものだと想像がつく。


「誰かが寄り()わなければ……」


 愛莉が傷ついている時に寄り添える存在も必要だと思う。

 治している相手に彼女が傷つけられる姿は見たくない。


 愛莉の隣に立つ俺。

 

 思い浮かべたその構図(こうず)に苦笑しながらも、もしそこに自分がいたらと妄想するわけで。

 同時に頭の中を愛莉が()める割合が増えていることに気が付く俺。

 ほんのちょっと前までは関わる事すらないと考えていた存在なはずなのに、今となっては信頼関係が出来そうになっている。


 彼女の事を想うと少し体が熱くなる。

 いやこれはきっと女の子を事を考えているからだろう。

 羞恥心とか、ある意味言葉に出来ない欲望とか。


 頑張る彼女に対してあまりにも不誠実(せいじつ)

 込み上げてくる思いに(ふた)を閉じて、彼女と真剣に向き合おう。


「よし」


 勢いつけてソファーから立ち上がり勉強部屋へ向かう。

 机に座り一先ず何をすべきか箇条(かじょう)書きにしていく。


 白いノートには愛莉がいる。

 今回は今までとは違う、(ひと)りよがりでは出来ない勉強となる。

 彼女の学力については後日詳細に調べるとして、まずは大まかなスケジュールを作ることにする。

 白いページは黒く染まっていくが、ある所で手が止まる。


「どこで勉強するんだ? 」


 打ち合わせていないことに「しまった」と思いつつもスマホを手に取る。

 しかしそこに表示された数字は予想を(はる)かに超える時間だった。

 今の時間にかけるのは迷惑だなと判断し、明日にでも聞くことにした。

ここまで如何だったでしょうか?


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