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燎が世界を照らすとき  作者: コンパス定規
3章 『憎炎』
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5話 『静寂に彼女は何を想う』



 これまで幾度となく死にかけた。一人で戦うと決意した瞬間から、私に手を差し伸べるものなどいなかった。私がそれを良しとしなかった。それでも己の強さだけを信じて戦ってきた。そして上り詰めたB級という地位。

 その鍛え上げられた攻撃が、洗練された魔法が、届かない。

 何度剣を振っただろう。

 何度魔法を放っただろう。

 凍り付いた木々はその魔法が並々ならぬものであることを示している。それでも、それには届かない。

 そればかりかヴェティの身体は傷だらけだった。

 B級戦士には似合わぬ息切れ。とめどなく流れる血。

 それでも、彼女の目はまだ死んでいない。赤く燃えているほどの瞳は何一つ諦めていなかった。

 ただひたすらに攻撃するのではなく、考え、分析し、試行していた。

 相手は物理耐性、魔法耐性、スピード、攻撃、どれをとっても一級品。ヴェティの攻撃を幾度となく受けても、びくともしない。防御力に極振りしているなら分かるが、攻撃もすさまじかった。

 軽装と言えるべき、彼女を守ってきた防具はボロボロになり、所々肌が露出している。

 そして、何よりも、警戒すべきは、恐ろしいほどまでのスピード。その最高速度は彼女の目を持ってしても目で追えないほどであった。

 一見すれば、何も隙が無い、勝機がないように見える。

 そんなわけはない。あるはずだ。必ずあるはずだ。どんな生物にも、どんなものにも弱点と呼べるべきものがあるはずだ。それを見つけ出せ。

 ここじゃない。

 そこではない。

 違う。

 やみくもに振り回しているように見える剣筋には全て意味があった。魔力の無駄に想える魔法には全て意図があった。

 あの骨は反魔法か。否、そのような傾向は見えない。

 素の耐久力か。ではどれほどの魔法まで耐えられる。六割、七割、八割も駄目か。

 そして、何より特徴的なあの動き。

 まるで、誰かに操られているような、機械のような動き。不自然なまでのオート操縦の様な動き。一定の距離を開け、攻撃の姿勢がなければ、決して攻撃しようとしてこない。


その思考が、勝利の糸を見出す。


「もう十分だ」

「覚悟を決めろ、モンスター」


 左腰についた鞘に剣をおさめ、攻撃してこないと思われるギリギリの距離で、腰を低くする。

 そして右手を握りにそっと添える。

 下半身に力を集中させる一方で、魔力はその右手に集中させる。

 脚に9割、右手に1割。

 魔力右手に10割。

 その魔力操作僅かコンマ0.数秒。その生物が、ヴェティの反撃の意志に気が付いた時にはもうすでに遅い。

 鞘から抜きとられた剣には氷が纏われ、鋭い刃と化していた。

 モンスターが反撃に出ようとしたその瞬間にはもうすでに剣がその頭部右側に到達する。

 その頭部に当たった瞬間、生物の全身をめぐるようにして広がる氷。

 止まらない攻撃に傷一つつかなかったその表面にひびが入る。そのひびを侵食するように氷が蝕んでいく。

 瞬間、その生物は氷漬けになっていた。

「‥‥…」

 何もない、閑散とした空間にヴェティの息づかいだけが残っていた。




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