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燎が世界を照らすとき  作者: コンパス定規
3章 『憎炎』
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1話 『新しい一日は始まったばかり』



「目を覚まさない?」


 彼女の耳に入ってきた朗報は決していいものではなかった。


「はい。息はしているんですけど、もう三日目です」


 フラフラした、足元がおぼつかない様子で歩み寄ってきた彼女の第一声は自身の心配などではなかった。

 水色の髪色の少女はとても心配そうにもう三日も目を覚まさない少年の状態を伝えてくる。いや、しかし今少年は山を下るときに一度目を覚ましており、村にたどり着き、負傷者がいないことを確認すると、心の底から安心したように眠ってしまった。

 それから三日後。少年はいまだに目を覚まさないという。


「あいつの場合はこの短期間に二度も死にかけているんだ。そう簡単には目を覚まさないだろう。かくいうおまえも目を覚ましたのはつい先ほどだろう」


 そう、彼女もまた、少年と同じく自身の限界を超えたのだ。恐らく彼女の活躍がなければこの「死者ゼロ」という結果は成されなかっただろう。

 後から聞いた話だが、あの不自然なほどの急な天候の変化は彼女の魔法だという。にわかには信じがたいが、なぜかそれぐらいの能力を秘めているような気がしていた。


「……たしかに。それもそうですね」

「そうだ。お前もまだ完全とは言えないだろう。休んでおけ」


 そう労いの言葉をかけたというのにその少女は目を丸くしていた。


「……なんだ、その顔は」


 赤髪の戦士は怪訝そうな顔もちで問いただす。


「い、いえ!まさかヴェティさんが私を心配してくれるなんて…」


 それは茶化すではなく心の底から驚いていると言わんばかりのいいようだった。そもそもこの少女にヴェティを茶化す技量など持ち合わせていなかった。


「あ?」

「ひっ!」


 そう睨みを利かすとつい出てしまったというほどにどこから出たかわからない声が出る。

 ヴェティははぁとため息をつき彼女に安静にするように伝える。


「くだらないこと考えていないでゆっくりしていろ。後処理は私たちでやる」


 そういい少女を残してその場を後にする。

 彼女は安静にしていた方がいい。E級が本来持ち合わせることができない力。それをなぜかあの少女は持ち合わせているどころかコントロールすることができている。あの今にも倒れそうなほどにフラフラな足取りを見るにまだ使いこなせてるとはお世辞にも言い難いが。

 だから彼女が安静した方がいいというのは事実だった。彼女の今後を考えれば人の心配などしている場合ではない。

だが、それ以上に彼女は一人になりたかった。このやるせない思いを誰かと共有できるほど、誰かと一緒にいて抱えきれるほどヴェティは強くなかった。

 彼女はそんなことは表情に出さず、ただひたすらに作業を続ける。

 村の復興は他の者に任せ、山に踏み込み、ギルドに報告するためのざっくりとしたモンスターの数を把握しようとする。その数は無限ともいえる程の死骸であり、数日で済めば全然いい方だった。

 その数にため息をつきながらも、作業に入り込めばきっと今の感情から逃げることが出来ると言わんばかりに黙々とこなしていく。

 まだ、今日という一日は始まったばかりと言わんばかりの、眩しいほどの朝日が山にさしこんでいた。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

3章に突入しましたが、1章からここまでかなりの期間があいたため登場人物が分からなくなっている場合もあると思います。

そこで活動報告の方で主な登場人物についてまとめるのでそちらも見ていただけたらなと思います。

もう少しお持ちください。

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