31話 『きっと、それでも少年は進み続ける』
またしても遠くから見ているしかなかった。
またしてもこの少年は自身よりも強大な敵を倒したのか。
両者の激動を彷彿させるほど森が開け、先ほどの天気が嘘のように強い日差しが差し込むその広場ともいえる場所に少年は力尽き倒れていた。近寄って安否を確かめるが、意識はないものの息はしている。きっとまた魔力切れを起こしたのだろう。
こうしてまた、少年は自身の限界を超えていく。自身の限界に何度も挑戦し、挑戦するたびに倒れ、気絶し、それでも立ち上がる。そうして彼は壁を乗り越えていく。
少年を背負い山を下りる。きっとこの少年は村人から感謝される。誰も死なせないという目標を達成しているかは分からない。だが、あの薄気味悪い奴のことだ。きっと死なせていないだろう。
死人を一人も出さず、村の脅威すらも駆除した彼らは間違いなくこの村の英雄だ。
だが、そこに私はいない。
何もできなかった。中盤に敵の攻撃を受け深手を負った結果E級に危険な道を歩ませた。その後も雑魚たちに苦戦し、少年の手助けすらできなかった。
私は何をやっているのだろう。
私は今まで何をやってきたのだろう。
こんなものが共闘というのならもう二度と共闘などしたくない。いや、それすらも逃げなのだ。自分の惨めさを味わいたくないから、一人で戦う。強くなるために一人で戦ってきたというのに、今では逃げるように一人で戦おうとしている。
なら、私は、どうすればいいのだ。
どこにもやれない、どうすることもできない感情を抱えながら、その戦士は山を下った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
乗り物に乗っているのだろうか。そんなことを連想させる身体の揺れで目が覚める。だがそこは乗り物ではなく、人の背中だった。
「な、ヴィ、ヴィティさ、い、いった―」
ヴィティさんに背負われているという事実に驚いたが、その衝撃で身体を動かした瞬間に電気のように全身を駆け巡る痛みに耐えられず、よくわからない感じになってしまった。その様子をヴィティさんは呆れたように溜息をついている。
「大人しくしていろ。もうそろそろ村につく」
そう言い、何もないように山を下っていく。その道々には死骸が散らばっている。
しばらくの間続いていた沈黙を破ったのは意外にもヴィティさんであった。
「倒せたんだな」
その口調からは何を考えているかは分からない。背負われている僕には表情も分からないため、彼女がどんな意図をもっているかは分からなかった。
「はは、何とか倒せたみたいですね。といっても最後の方はもうどうなったか分かんないんですけど」
それに対して返答はなかった。ただ山道を歩いていく揺れだけがあった。そうしているうちに村が見える。村人たちが笑顔で手を振っている。泣いて喜んでいるものもいればただ笑い全身でその喜びを表現しているものもいる。見たことあるような顔もいたり、シレーヌさんとラルウァさんは感謝されすぎて困っている様子だ。
あの様子を見るとこちら側も何とかなったようだ。自然と笑みがこぼれる。
彼女はこの様子をどんな表情で見ているのだろう。何も発さないせいで彼女の様子は分からなかった。ただその道中ただ一言ボソッと呟いた彼女の一言が頭から離れなかった。
「きっとお前はそうやってどんどん強くなっていくんだな」
長かった僕たちのパーティの初クエストが無事終了した。




