27話 『ただ信じていればいい』
「で、あいつを倒す手段はあるの?」
周りの蟻たちを倒しながら、その少女は問いただす。
「お前たちは私より弱いだろう。一番強い私が手も足も出なかったのよ。なんとかできるの」
全く悪意がないように述べる。これにはさすがに二人の戦士も苦笑いするしかない。
「君って意外とそういう性格なんだね」
「なに?事実だと思うんだけど」
どこかの氷の姫様を彷彿させるほどの自信と強気な口調。だが、階級を見てみればC級とE級の戦士がふたり。そこにC級程度のものが加わろうとこの場が変わると思えない。それほどに相手は強大だった。
周りの蟻たちをケアしつつ、攻撃を繰り出すが、一向に入らない。それどころか隙があればすぐに民が避難しているところまで行こうとする。ただ、殺すために行動していると言わんばかりに。
「そうだね。俺たちは信じるしかない。信じてあいつを止めるんだ。いくよ」
そういいその戦士は駆け出す。それに遅れないようについていく。ただ一人の戦士を残して。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「信じるってなに?もしかして助けが来るとか思ってる?そんなの無駄よ。どうにかして倒す方法を考えないと」
「違うよ。助けは来ない。来たとしてもこの場を制圧できるほどの手練れが来る確率はかなり低い」
「分かってるじゃない。なら、何とかしないと」
しゃべりながら戦えるほど余裕があるかと言われればそんなことは全くないが、それでもさすがC級と呼べるべきで強敵相手でも周りが見えている。
だが攻撃を全く受けないわけではない。相手の鋭い爪がその眼前まで差し迫る。それをギリギリのところで木刀が止める。
「都市のっていってもその程度かい?」
その爪を振り払い軽口をたたく。
「うるさい。あんたがなにも考えないから作戦を考えてたの」
苦し紛れの反論もここでは意味をなさない。
「思考のせいで動きが鈍るとは、まだまだなんじゃないのかい」
キッっと鋭い目線が向けられるがそれもものともせず変わらず爽やかな顔をむけている。これだけの相手がいながら顔色だけは崩さない。
「それに言ったろ。俺たちは信じて止めてればいいんだ」
「だからそれは―」
会話が中断されるほどの攻撃が繰り出される。相手は新たに登場した敵の見定めが終わったと言わんばかりに攻撃が繰り出される。
魔法を駆使し、剣を振るう。
それでも限界はある。二人がかりで戦おうと決して届かない。
時間切れだ、そういわんばかりに爪が付きつけられる。だが、そこに絶望の顔などなかった。
「時間切れだ」
確かにそう呟く。
瞬間、そこにいた生物が皆振り向くほどの光が放たれる。
能力の持つ者なら誰しもが感じるほどの魔力。
少女は目を見開き、驚きを隠せないでいる。
倒せる領域まで進化したと自負していたその生物はカタカタと震えている。
次第に空は雲で覆われ、辺りは暗闇に包まれる。
ただ一人、それを待っていたかの如く、隙を見つけたと言わんばかりに魔法を発動する。
その敵を包むほどの大きさの闇が現れ、動きが縛る。動きが停止した瞬間、その木刀を力の限り振るう。
いとも簡単にモンスターを切り裂いてきたその木刀でさえ届かないほどの硬さ。緊急事態に隙を見せたとしても決定打がない。
それでもいいのだ。それでいいのだ。こいつにとどめを刺すのは俺じゃない。彼女だ。
そういわんばかりにある一人の戦士の魔力が集中していた。




