26話 『正義』
「君はいかないのかい?目当てはカルナだろう?」
息は切れているもののその爽やかな顔つきだけは崩さずにたった今仲間に置いていかれ動けずにいる少女に話しかける。
「‥‥‥」
何も答えられない。私はどうしたいのだろうか。私に与えられた任務は戦士カルナを見定めること。それが最優先事項。ここでこのモンスターを倒すことは二の次である。
そんなことは分かっている。分かっているのだ。ここで彼らを追うのが正解だと、わかっているのだ。
「追わないのかい?」
木刀を振りまわし、蟻たちの血にまみれたまま追い打ちをかけるようにその戦士が問いかけてくる。つい先日、街道での戦闘騒ぎの際に話を聞いたあの戦士だった。
「追うのが君の責務だろう」
そうだ。それが私の任務であり、責務なのだ。上司が私に託した仕事なのだ。
だが、それでは。私の正義は、どうなる。ここで人を見捨てるのが私の正義か。
「そうだな。君には言い訳が必要なようだね。うん。こうしよう。都市の戦士を守ることが君たちの言う都市を守ることにつながるだろう。俺たちに手を貸してくれないか。どうもこいつは二人じゃ倒せそうにないからね」
何事もないようにただ手を差し伸べる。実際には剣を振り敵を駆逐しているが確かに手を差し伸べていた。
たとえ私が守るものでなくても、助けを求める者がいて。
そこに至るための決心がついていなくても、相応の理由を与えられて。
そこまでしてもらってはじめて覚悟を決めることが出来る私の正義とは。
いまはそんなことどうでもいい。ただ、剣を振れ。
そう決意し、蟻の駆除にあたる。それに気が付いた二人の戦士は目を合わせ確かに微笑む。
そうして全員の目が一点に集まる。普通の巨大蟻よりも大きく、凶暴そうな見た目のその存在。二人で抑え込めていたであろう場に現れたイレギュラー。
こいつを倒さなければ、私の正義はなされない。




