24話 『それが人間だけだと誰が決めた』
そのものの目が見開かれる。
確実に倒せる状態でここに到達させたはずだ。
この炎は想定外だ。この戦士は規格外だ。
みなを束ねるものとしてここでいき伸びなければならない。自分さえ生き延びればまた群れは再興できる。
だが、これは。
モンスターに意志などない。考える頭がないのだから。だが、一体一体が弱いからこそ種として刻まれたものがある。ただ、人を狩り、生き延びる。私たちに求められていることはそれだけだ。
その蟻は再び雄たけびをあげる。
それは、この少年が自力で能力の壁をこじ開けたように。
それは、戦士が幾千の戦いを経て階級を上げるように。
それが人間だけだと誰が決めた。どうして我々にはできないと決めた。
その瞬間、クイーンアントは進化を遂げた。
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その雄叫びは一回目よりも大きく、山全体、さらには村全体に轟くように響き渡っていた。それに呼応するがごとく、巨大蟻たちが雄たけびを上げる。
その山奥で巨大蟻を狩っていた戦士ですら動揺した。
そして、その村にいた個体の一つもまた、進化を遂げようとしていた。
それは主が向かわせた刺客であった。人間に生まれつきの才能があるように、この個体にもまた生まれつきの才能があった。他を殺す才能。
他を殺すことで示される才能。
それが危機に立たされていた。
たかが人間二人に。
あってはならない。そんなことは、あってはならない。この地に生を受けた瞬間流れこんできたのは人を殺すことへの義務感。
殺すのだ。それこそがこの種の、モンスターのやるべきことなのだ。
雄叫びと同時に流れ込んでくる本能。それが身体を熱くする。どうやら主は進化を遂げたらしい。そうだ。ここで死んだとしても主がいればこの種は生きていける。
なら私は、最後まで人を殺そう。できるだけ多くの人を殺そう。私に主のような責任はないのだ。ただひたすらに殺せばいい。
身体に異変が起こる。
細胞が、遺伝子が変わっていく。私は私のやるべきことを。
さぁ殺そうか。




