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燎が世界を照らすとき  作者: コンパス定規
1章 『灯火』
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4話 『私はあなたの夢を共に背負う』

「今日はこのクエストとかどうかな?」


 いつも通りギルドへ行き、クエストを行おうとするとマリーさんが声をかけてきた。


「これは?」

「まぁこれはクエストってよりも強化特訓みたいなものなんだけど…。」

「強化特訓?」


 強化特訓とはなんだろうか?いままで多くのクエストをこなしてきたがそんなクエストは聞いたことがなかった。


「これは駆け出しの戦士向けのクエストの総称なんだけど、特に依頼が出ているわけではないけど決められたモンスターを討伐をするっていう…」

「せ、戦士向け?」


 それを聞くだけで背筋が伸びる。

 戦士向けのクエストがあるなんて知らなかった。でも、戦士登録されていない僕がそんなクエストに挑戦することが出来るのだろうか。


「い、いいんですか?僕、戦士じゃないですよ?」


 その問いにマリーさんは優しい笑みで答えた。


「そこは大丈夫よ。私が何とかするから。私、こう見えてもギルド職員としてかなり優秀なのよ。何とか誤魔化しとくから。」


 いやどっからどう見てもマリーさんは優秀ですけどね?いやそれよりも…。


「そんなことして大丈夫なんですか?それってマリーさんも処罰を受けるんじゃ―」


 するとマリーさんはそれ以上僕に言葉を言わせまいと言わんばかりに僕の唇に人差し指を当てて、優しく微笑んだ。


「大丈夫って言っているでしょ。君はそんなこと気にしなくていいの。私は君に、君の夢を、なりたい姿を追っていてほしいの。」


 その端麗な顔つきから繰り出される笑顔につい顔が赤らんでしまう。


「でも、ど、どうして?」

「もう、全部言わせる気?私は君の頑張る姿が好きなんだよ。」


 え?いま、す、す、す、すきてぇぇぇぇぇ?

 いや、まて。そんなはずはない。だけど確かに今…。

 顔が熱い。恐らく今までにないほど赤くなっているだろう。


「私はね、君に本物の戦士の姿を見た気がしたの。君は戦士になれると思う。」

「だから頑張ってほしいの。」


 僕は涙がこぼれそうになるのを必死にこらえた。

 この人は見てくれている。この人は応援してくれている。この人は僕の味方だ。

 そんなことはずっと前からわかっていたはずなのに改めてそれを実感し、涙がこぼれそうになる。


「さぁどうする?やる?やらない?」


 そんなの答えは一つしかない。


「やらせてください!」


 この人が応援してくれるのならば、一人ではないのならばどこまでも頑張れる気がする。

 そして何よりもこの人の期待に応えたい。そう思った。


「じゃあ詳しい説明をするね。えぇと―」


 そこから強化特訓の詳細を教えてもらった。

 やるべきことは単純明快モンスターを倒すこと。これは難易度によって異なるが基本一人で取り組む。

 この目的はあくまで自立した戦士の基礎をつくることらしい。だから複数でクリアしたところで意味がない。というよりもまず一人で戦えなければチームで戦うことなどできないのだ。

 だからクリア課題に設定されているモンスターは基本駆け出しの戦士一人で倒せるものになっている。もちろん僕に出される課題は正式なものではなくマリーさんが今までの経験を生かして作成してくれたものだ。

 今回出された課題は「ゴブリン三体撃破」。 

 倒した証拠とした普通は身体の一部を持って帰ってくるらしいがそんなことをすれば他の戦士やギルド職員にばれかねないので僕は口頭でクリアした、と伝えればいいらしい。

 マリーさんは「君は嘘をつくような人じゃないでしょっ。」とウインクしながらそう言った。

 本当にこの人は僕を信頼してくれているらしい。


「これは君と私の二人だけの秘密だからね♡」


 とりあえずの詳細の説明が終わるとマリーさんはお姉さんが悪いいたずらを隠すときのような小悪魔的な笑顔でそう言ってきた。


「わかってます。マリーさんの責任問題になりかねませんもんね。」

「そう!だから絶対言っちゃだめだよ。」

「はい!」


 僕にここまでしてくれたんだ。マリーさんを危険にさらすわけにはいかない。絶対、何があったとしても話してなるものか、と決意する。


「じゃあ早速取り組んで来ようと思います!」

「うんっ!」

「頑張ってきてね。」


いつも通り旅に出る我が子を見送るような母親のように優しく微笑みながら言うマリーさんに「頑張ります!」という言葉を残し、ギルドを後にした。

それにしてもマリーさんは母親のような顔も、小悪魔のような顔も、いろんな顔を使い分けてるな。あの人はとてもすごい人なのかもしれない。僕はそんなことを思っていた。



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