12話 『お前の真意を神は切にに問う』
「つまり、いきなり襲われ、相手の素性は仮面とコートで何もわからなかった、と」
「はい、そうです」
「襲われるようなことに心当たりは?」
「心当たりと言われても…」
その後僕らは近隣の住民の通報によって到着したギルド直属の部隊から事情聴取を受けていた。このように都市で何か問題が発生した場合にはギルド直属の部隊から人員が派遣される。彼らは戦士のほかに唯一能力の使用が許可されており、その使命は主に都市内の秩序を守ることだ。
今回は特に能力の使用が多かったことからその部隊でもかなり上の部署が来たようでそのオーラは一流の戦士にも負けずとも劣らないものだった。その中でも特段すごいのが…
「なるほど。君は確かカルナ・シグルドだったか。なにかと都市を騒がせている君がこの騒動に関わっているというのはなかなか偶然とは思えないが」
先ほどから僕の事情著種を行っているこの人だった。名はセリウス。
「まぁだが、君は市民を守ったわけだから別段責めるようなことはない。ただ、もしこの騒動の原因が君にあるのだとしたら、我々は正義をもって君を排除しなければならない。それだけは心に留めておいてくれ」
そう淡々と語る口調には彼が厳格な性格であるのを物語っていた。部隊の制服をきっちりと着こなし、上司の証であるのかその上からコートを羽織っていた。
「はぁ」
そんなこと言われてもなぁ。僕自身そんなに話題になっているとは思っていなかったし、ていうかその話題ってもしかして悪い方向だったの?いやほんとにもうわかんないわ。
そんなことを思い事情聴取を終え、シレーヌさんたちを探そうとするころには二人とも事情聴取を終えているようだった。
「この度はご協力感謝します。今後なにか情報を得た場合にはギルドの方へ連絡をお願いします」
そう相変わらず淡々な口調で述べるセリウスさんの視線は何を考えているか分からない一方で、その隣にいた、先ほどラルウァさんの事情聴取を行っていた女性の目はどこか僕たちを懐疑的な目で見ているようだった。
「では失礼します。いくぞリュール」
リュールと呼ばれた女性は僕たちを見つめた後「はい」とこれまたはきはきとした返事をし一緒に去っていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
その神はただ遠くを見つめていた。その視線は全てを見透かすように、だが肝心なことはどこか分からないというように、遠くを見つめていた。
赤と黄色が混ざった自身の司る火を体現しているような髪は風に揺れていた。
「お前の真意は」
そう呟いたとき、四人の仮面を被った者たちが姿を現した。彼らはひざまずき、その経過を報告する。それを耳にしているとき、その神は表情一つ変えなかった。ただひたすらに遠くを眺め、その報告に耳を傾けていた。
あの少年が炎を出したらしい。あの試合までは出し方すらも分かっていないようだったが。やはりあの試合が引き金となってしまったのか。
いや、あの少年と初めて会ったそのときから既に予兆はあった。気配は感じていた。だがそれを気に留める必要はないと思うほどあの時の彼は弱々しかった。だが、もう違うというのか。この短期間でそれほどの成長をするのか。
末恐ろしいな。それが率直な感想であった。
彼を称賛するとともに危険であるとも感じていた。
現代の秩序を守るために。時代は革命家など欲していない。彼がそれ足り得るかはわからない。だが確実にその器は手にした。場合によっては、殺さなければならない。
「ご苦労。引き続き頼む」
そう告げると彼らは姿を消した。
見極めなければならない。彼の器を。彼の力を。彼の‥‥正体を。とするならば、私も動かなければならないか。
「お前の真意は」
その呟きは空気に消えていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「わかりました。認めます…」
シレーヌさんは不服という感じを出しながらも、致し方ないという風にラルウァさんのパーティ参加を認めてくれた。それもそうだろう。先ほどの騒動は彼の活躍なければどうなっていたか分からない。魔法の発動に対する初動、敵複数を相手にしたこと、など彼がいたからなんとかなった。その力は本物であるだろう。
「よかったよ。その気になってくれて」
そう爽やかな笑みを浮かべるラルウァさんにシレーヌさんは睨みを聞かせている。
「どうやら僕は彼女になかなかよく思われていないようだね」
「あははは…。」
僕の耳元でそう告げてきたが笑うことしか出来なかった。まぁ警戒する気持ちも分からないではないんだけど、もうちょっとなかよくならないかなぁ。
「でももう今日は…」
そういうシレーヌさんの言いたいことは良く分かった。
辺りは夕日で赤く染まり、遠くの方は暗くなってきているように思う。あたりは魔石が輝き始めている。大通りからは客引きが大きな声が聞こえる。
「そうですね。さすがに今日はもう遅いですね」
「では。また明日にしましょう。‥‥あなたもパーティを組むなら明日の朝ギルドに来てください」
なんだかんだちゃんと言っといてあげるあたりやっぱり優しいんだよなシレーヌさんは。
ラルウァさんはそれに対して笑顔で返事をするものの、やはりシレーヌさんが小言を言っている。それに対してもやはり変わらない笑顔で接している。この二人案外仲いいのかもしれない。
そんな賑やかな二人と別れると、妙な静けさだけが残った。その静けさが疲れをどっと感じさせる。今日一日本当にいろいろなことがあった。
こうして僕の戦士としての一日目が終わった。




