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燎が世界を照らすとき  作者: コンパス定規
2章 『始動』
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11話 『仲間になりたいとそう告げる』


「じゃあねー。うちらは戻るよー」


 そう元気に手を振りルーネさんたちは去っていった。人数的にもそうだが、ルーネさんのようなにぎやかな人がいなくなった後の空気はどこかいつも以上に静かに感じられた。


「僕らはどうしましょう」


 そうシレーヌさんに問う。それにしても二人きりになったのがなんだかとても久しぶりのように感じる。それほどまでにユーリさんのパーティは強烈な人たちだった。


「そうですね、いまは少しでもクエストをこなしたいです」


 そう言うシレーヌさんの目はこれまでにないほど真剣なものだった。


「そうですよね。僕もクエストに行こうと思ってました。今のうちにお金を貯めとかないと…」


 オーダーメイドの剣など初めてだ。具体的な金額こそ言われなかったがきっと僕の想像などはるかに超えてくる額であることは間違いない。そういえばシレーヌさんも作ってもらっていた。


「それもそうなんですけど…」

「?」

「い、いえ!何でもありません!」


 何を言いかけたんだろう。シレーヌさんはどこか顔を赤らめている。でもまぁ目的は一緒なんだ。かける言葉は一つだけ。


「一緒にパーティを組みましょう!」


◇◇◇◇◇◇◇



「僕も一緒に組ませてくれないな?」


 ギルドへ向かう途中そう声を掛けてきたのは全身黒いコートで覆われている人だった。フードを被っているせいで顔も見えない。性別すら判断できないその人物は長く伸びた袋のようなものを背負っている。だが声から判断するに恐らく男であるだろう。背丈は僕よりも頭一個分くらい高い。


「ごめんごめん。この格好じゃ怪しすぎたね」


 僕らの怪訝そうな表情から察したのかそのフードを外す。

 そこにあったのは紛れもないイケメンだった。すこし紫がかった黒目の髪が男にしては長いとも思える程度に伸びており、その顔面に貼り付けられたパーツはどれも完璧と言っていいほどのバランスを保っている。


「僕の名前はラルウァ・ドラコス。ラルウァでいいよ。君たちのパーティに入れてほしいんだ」


 そういう彼の声はフードを被っていた時からは想像できないほど爽やかなものに聞こえた。イケメン補正って凄いな…。

 こりゃ、シレーヌさんも…そう思っていたがシレーヌさんの反応は違ったものだった。


「どうして私たちなんですか?」


 その発言にはラルウァさんの真意を探ろうとする強い意志が込められているように思えた。確かにこんな格好でいきなりパーティに入りたいですなんて言ってくる奴など怪しい以外の何物も生まない。それでもそんなことを感じさせることのないほど爽やかな青年ともいえるのに…。

 この反応はラルウァさんも意外だったのか少し言葉に詰まった様子でいる。だがすぐに表情を戻しその爽やかな声で答える。


「どうしてか…。君たちには隠し事は通用しなさそうだね。特にその水色髪の少女には」


 そういい目線をシレーヌさんの方に移動させる。


「正直に言おう。自分の目で確かめたくなったのさ。今何かと話題な君たちのね」


 僕たちが話題?どういうことだ?


「なんだい?カルナ君は知らないのか?君が一番話題になってるんだけどな。その様子だと水色髪の方は知っているようだけど」


 え?僕?ていうかシレーヌさん何か知ってるの?いやその前に僕の名前なんで知ってるの?


「そうですね。カルナさんは今かと話題になっているのは事実です」


 えーそうなの全然知らなかった。だってユーリさんたちなんも言ってなかったし、あの店の店主だって‥‥。あの店の店主は別か。世間について何も知らなそうだし。


「ですがその興味だけで私たちのパーティに入ろうとしているならお断りします」

「その心は?」

「危険だからです。あなたも戦士であるならそこは重々承知なはずです。パーティがどれだけ重要なものか。そこに誰とも分からない者を入れるなんてありえません」


そういうとラルウァさんは黙ってしまった。シレーヌさんの言うことに納得したのだろうか。だがその表情からは諦めなど感じられず、むしろどうやって入ってやろうかと考えているように感じられた。


「あ、あのいいかな」


 そういい声を上げたのは僕だ。

「なんですか」

「彼を、ラルウァさんをパーティに入れてもいいんじゃないかな」

「な⁉ありえません!カルナさんは良くも悪くも人を信じすぎです!ユーリさんのパーティと仲良くなった例を考えてパーティのことを軽く考えているならそれは間違いです。あれは例外中の例外です!そもそもパーティは…!」

「それは分かってるんだけど…」

「だったら!」

「それでも僕はシレーヌさんとパーティを組んだよ」

「っ!」


 そう言うとシレーヌさんはびっくりしと様子で黙り込む。

 そう。僕とシレーヌさんの始まりは何も知らない状態から。シレーヌさんがサポーターであった僕に勇気を出してパーティに誘ってくれた。僕はあの時シレーヌさんについてなにも知らなかったけど、あのとき困っていたということを差し引いたとしても、僕は彼女と組むことを即決した。


「あ、あのときとは状況が違います…!それに―」

「ラルウァさんなら大丈夫な気がするんだ」

「な、なにを根拠に!」


 根拠なんてない。なんで大丈夫と感じるかなんてわからない。それでも大丈夫な気がするから。


「わからない。それでも大丈夫な気がするから」


 少し考えるようにシレーヌさんは黙り込む。


「そ。それに何とかなるんじゃないかな。ほ、ほらボス級の時も何とかなったしさ!」


 考え込んでいるシレーヌさんに説得するように言うと鋭く睨む視線が返ってくる。あ、あれー。時々ほんとに怖くなるんだよなシレーヌさん。

「しょうがないですね―」


はー、と溜息と一緒にシレーヌさんが口を開こうとした瞬間だった。


「伏せろ!」


 そこには爽やかなのかけらも感じさせない怒号が鳴り響いた。と思った瞬間。魔法の波動が飛んできた。


ガシャーン!


 悲鳴と共に建物が崩れ、ガラスが割れる音がする。

 何が起こった⁉ここ路上だぞ⁉

 急いであたりを見渡すが、辺り一面パニック状態に陥っている。それは僕だけでなくシレーヌさんも同じであるようだった。こんな路上で魔法が発せられることはあってはならない。それは法で固く禁じられていることだった。

 いや、それよりも、今の魔法は…。

 嫌な考えが脳裏に浮かぶ。それを肯定するかのように隣にただ一人この状況下で冷静な青年が背中に抱えた袋のようなものの中からその武器を取った。その視線の先には数名の影があった。


「どうやら僕たちが目当てみたいだね」


 状況を冷静に分析している青年はそう呟く。やっぱりそうだったか。さっきの魔法は明らかに僕たちを狙ったものであった。サポーター時代から死線をいくつも越えてきた危機管理能力、悪意をくみ取る力は伊達ではない。


「こうなった以上相手をします!できるだけ魔法は使わないようにしてください!敵を捕まえるよりも周りの被害を最小限に!」


 そう指示を出す。僕の能力はまだコントロールが出来ていない。ここであの炎を出すのは危険すぎる。かといってシレーヌさんの能力も…。

 残る選択肢は一つ。魔法を使わずに相手をこの場から退けること。

 腰につけられた剣に手を当てる。これは先ほどの店で武器が出来るまでと化してくれたものだ。早速使うことになるとは思わなかったが。

 だが、相手の力量が分からない。そのうえなりふり構わず魔法をぶっ放してくる。正直分が悪い。それでもやるんだ。僕はもう戦士なのだから。

 シレーヌさんも臨戦態勢に入る。だが、シレーヌさんも状況を理解してか、なかなか動けないでいる。

 その時相手の一人の魔法が飛んできた。と思った瞬間、ナイフがそこまで来ていた。おそらく適性が発現していなかったら目をやられていた。それほどまでに速い。その攻撃を何とか防いだもののその後も防戦一方の状況が続いた。相手は複数いるようでシレーヌさんが一人、ラルウァさんが二人を相手している。

 くそ!これじゃらちが明かない!

 近隣の住民が避難を始めているようで戦場となっている路上付近の人数は少なくなってきていた。

 これなら…!いける…!

 胸に力を込める。


『想いを燃やせ』


 そう脳裏に思い浮かべる。瞬間、僕の身は炎に包まれた。


「…できた!」


 能力を自然に出せたことに安堵していたがそんな暇もないようだ。相手はその炎に一瞬ひるんだ様子を見せたがすぐに攻撃を再開した。だがその攻撃は先ほどよりも鈍いものであるように思えた。

 いや、僕の動きが上がっているのか?

 これならいける。炎で加速されたスピードと威力に師匠直伝の剣術を交える。その攻撃は次第に相手を圧倒し始めていた。

 相手が初めて後ろへ下がり距離をとる。その動きに合わせシレーヌさんやラルウァさんが相手をしていた者たちもそこへ並ぶように直立した。


「噂は本当みたいだね」


 ラルウァさんが余裕の笑みを浮かべながら語り掛けてくる。シレーヌさんは多少の汗をかいているもののなんとか相手にできているようだった。

 両者が相対する。相手は白い仮面に白いコートを被り表情は伺えない。ただ攻撃した時に一瞬みえたあの紋章は…。

 僕の相手をしていたそのグループのリーダーとも思える人物と視線が合う。仮面のせいで正確には分からないがそんな気がした。

 その人物が一言二言隣の者に何か告げると、その集団は物凄い速さでその場から消えていった。そこには戦いで荒らされた空間と沈黙だけが残った。




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