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燎が世界を照らすとき  作者: コンパス定規
2章 『始動』
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7話 『お前が現を抜かしている間、私は』


「そろそろ決まる。」


 そう誰かがつぶやいた。聞き取るのに精一杯というほどに小さい声だったが、二人の戦士が音源となっている爆発音や鉄と鉄がぶつかる衝撃音以外何も発せられない観客席でその声は確かに聞き取れた。

 そしてその声の通り、今まで攻撃と防御の両方を行っていた両者は次第にその役割が明確に分かるようになっていった。

 つまり、ユーリさんが攻撃に徹するようになり、逆に彼女は防戦一方になっていた。

 能力の相性の悪さをそれ以外でカバーしていたが、それも通用しなくなっていた。

 なんとか防ぎきっているが、徐々に攻撃が入り始めている。

 そして、火を覆ったその剣が彼女の腹に直撃する。この試合初めて決定的に、確実に入った攻撃だった。

 そしてそれは、一撃で十分だった。

 その一撃は確実に彼女の動きを封じ込め、壁に衝突させるほどの威力を持っていた。

 フレア様が試合終了のコールをする。

 その一声をのろしにするがごとく観客が声を上げる。大歓声だった。

 そこにいる全員が自身の所属するパーティのリーダーの勝利に歓喜し、興奮している。俺も、私も負けていられないと、あぁなってやると感化されている者もいる。

 だが、僕の瞳はそれとは逆方向に位置する一人の女戦士の方を向いていた。



◇◇◇◇◇◇◇◇



『氷花』


 そう唱えると彼女の前には氷でできた自身の大きさに匹敵するほど大きな一輪の花が姿を現した。かと思うとその花の花弁はすぐさま分かれある一点に向かって物凄い速度で移動し始めた。

 生半可なものならその攻撃だけで命を落としているだろう。それはモンスターでも同様である。すくなくともC級のモンスターならこれで倒すことが出来る。

 だが、いま対峙している敵はそんな攻撃をものともせず防ぐ。

 それだけでもその敵が今まで戦ってきた敵の中でもトップクラスの実力の持ち主であることがわかる。

 それだけでは終わらない。

 その敵はこちらの攻撃を防ぐとすぐさま防御から攻撃に転じてきた。一撃一撃が重い。

 相手は完全にこちらの攻撃を防いでいるが、こちらは相手の攻撃を完全に防ぎきれていない。そしてその積み重ねが確実に彼女の体力を削っていく。

 相手は遥か格上。並びだけではA級とB級。人はB級をA級に匹敵しうる可能性を持つ者と考える。

 だが、それは間違っている。

 匹敵などできるはずがない。そこにはどれだけ血を流そうとも越えられない壁があった。

 どう足掻こうと決して届かない。B級がA級に対抗しうる唯一の手段は自身もA級になることだった。

 それほどの能力、力の差がそこにはある。

 それはその段階に至った者だけが痛感することが出来る。一般の者は遥か高いその存在に区別をつけることが出来なかった。違いを理解することが出来なかった。

 それを彼女は重々承知していた。

 いやというほど分かっていた。

 だけど、負けたくなかった。神の作ったこんな能力に縛られているこの世界も世の常識もすべて嫌いだった。ぶち壊したかった。それが出来ない自分が大嫌いだった。

 私はお前がフレアとかいう男神に現を抜かしている間、一人でモンスターを狩っていた!

 私はお前が格下と慣れ合っている間、一人でクエストを達成していた!

 私はお前たちが無駄なことに時間を費やしている間、ずっと、ずっと、ずっと…!

 私は…私は…私は…!

 私は…。

 私は、どうしてこんなにも弱いのだろう。

 そんな弱音が出そうになるのを唇を噛んで堪える。そんなことどうにもならない。今できることを考えなくては。

 頭をフルに回転させる。しかし、何も出てこない。そんなときに出てくるのはさっきのような弱音だけだった。

 次第に攻撃が出来なくなっていき、守るので精一杯になっていった。

 もう一撃も与えることが出来なくなり。守るのに必死だった。

 その頑張りは無駄だと言わんばかりにその火が侵食してくる。確実に守りの隙間をすり抜けてくる。

 その火が、あの炎と重なる。遥か格上を倒した少年と、遥か格上に手も足も出ない自分。

 許されない。そんなことは…!

 だが、遅かった。その炎が頭をよぎったその瞬間、その火は確実に彼女の急所に入った。


ぐはぁっ


 鈍い音と共に壁際まで突き飛ばされた。




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