5話 『相手は格上だからと』
戦いが終わり闘技場外に来ていた。そこにはシレーヌさんもいる。
もちろん勝てるとは思っていなかった。相手はB級戦士であるのに対し、僕は今日適性が発現した駆け出し中の駆け出しだ。能力、経験、技術、基礎値、全てが比べものにならない。
それでも負けたら悔しい。
あの炎なら、もしかしたら一矢報えたかもしれない。だが、現実は違った。
一回も、一撃も、たった一回の攻撃すらも当てることができなかった。
その攻撃をくりだしていた時、本当に一瞬だけ、そこに隙が出来た。相手がその試合で初めて見せた隙。そこを突いた。突いたはずだった。
その瞬間僅かな光と共に斬撃のようなものが飛んできた。
あ、死んだ―
しかし、その攻撃は当たらなかった。見ているだけだったユーリさんがここにきて初めて動いた。守ってくれたのだ。
相手はユーリさんに怒られていたが納得のいかない様子で何やら嚙みついていたが、パーティのリーダーでもあるユーリさんには逆らえないようで渋々下がっていった。
何が起こったか理解できている者は神フレアと、B級戦士である彼女であるように思えた。
「そんな落ち込む必要ないと思いますよ。相手はB級なんですから。」
シレーヌさんが落ち込んでいる僕を見て励ましてくれている。なんて優しい人なんだ。
「そうですよね。分かってはいるんですけど‥‥」
頭では分かっていてもその感情を抑えることはできそうになかった。
「おい、次はユーリさんと氷の姫が試合するらしいぞ!」
え?あの二人が?どうして?
パーティのメンバーが思いもよらない知らせを届けてきた。周りがざわつく。
「まじかよ。今日はすごい日だな!」
そんな風に試合が終わり観客席から出かかっていたものたちが再び観客席に戻っていく。
「あ?あいつと試合するのは俺だ!なんでリーダーが!」
ついさっきまで僕と戦っていた青年が怒りをぶつけている。それをほかのパーティメンバーに止められている。やっぱり、僕はあの人の力を少しも出させることができなかった。やっぱり僕では消化不良なのだろう。
それでもやはり両者の戦いは気になるのか仲間たちと観客席に向かっていった。
という僕もその戦いは気になる。A級戦士の戦いなんて滅多に見られるものではない。それに…。あの人が、初めて会ったときから、会うたびに感じてしまう、師匠の影と重ねてしまう彼女がどういう戦いをするのか。それが何よりも気になった。
闘技場の方から歓声が聞こえる。どうやら試合が始まったらしい。その歓声は僕たちが戦った試合のクライマックスの時並みに上がっている。始まりからこの歓声が聞こえるという事実こそ両者の戦いがどれほどびものかを物語っている。
横にいるシレーヌさんもうずうずしていた。きっと気になるのだろう。
「僕らも見に行きましょうか。」
シレーヌさんを誘って観客席に入ろうとする。
その言葉を待ってましたと言わんばかりの満面の笑みでシレーヌさんは答えた。
「はい!」




