4話 『神は固くその口を閉じる』
「あの炎を見ても白を切るつもりですか?」
彼女は冷たく言い放つ。
「‥‥。」
その相手は口調に物怖じすることはなかったが、一貫して沈黙を貫き通している。彼女はその反応にしびれを切らしたのか続けて口を開く。
「あの炎は…」
語尾が震えているとも感じ取れるその口調は悲しみなどではなく、怒りを体現していた。
「あの炎は、姉と同じものです。」
そこから発せられた発言にその相手は驚きもしなかった。ただ全てを知っているかのような表情でただ口を閉じている。だが彼女はとまらない。
「その大きさや強さは比べるに値しないが、確かにあれは姉と同じ炎です。それにあの少年は神の恩恵を受けていない。もし仮に、彼が火を司る神であるあなたの恩恵を受けていたとしたら、あなたはあの少年を粗末にしない。だからあなたはあの少年に対してあのような目をむけることはない。」
淡々と、しかし、そこには少なからず怒りが含まれているように自身の考えを述べる。
「‥‥‥。」
しかし何を言ってもその神が口を開くことはない。
拳を握りしめ、唇をかむ。それは彼女の悔しさをそのまま映し出していた。やがてその手が腰につけた剣をつかむ。
そして静かに、そして着実にその神に対して蓄積された怒りを全てぶつけるがごとく矛先が神に向く。その実力は一流の戦士。並みの戦士では反応もできないほどのスピード。しかし、神は全てを悟るようにその剣筋を見切るように目で追う。しかし、避けることはなかった。
刹那、もう一つの剣が姿を見せる。かと思うとB級戦士の攻撃を簡単にとめてみせる。
彼女もまたまごうことなきA級、一流であった。
「あなた、何をしようとしているか分かってる?」
その口調には負けずとも劣らない怒りが込められていた。自らが尊敬し、敬愛している神に刃を向けられているのだ。その怒りは最もであった。
両者は一歩も引かない。
だがその力はA級戦士に軍配があがる。相手の剣をはじく。
「いいわ、私が相手になってあげる。A級戦士ユーリ・フレデリカ、今ここであなたに試合を申し込むわ。」
普通、A級戦士が格下であるB級戦士に試合を申し込むことなどありえない。
だが、そのA級戦士は階級など頭にはなかった。つい先ほどそれよりも差が開いた二人が接戦を繰り広げていた。その試合はもはや階級の差など感じられなかった。それに感化されていないと言えば噓になる。
それは彼女も同じであった。ただでさえ強さだけをもとめる彼女がこの申し出を受けないわけがない。
ここにこの都市を代表すると言っても過言ではないA級戦士と期待の新星氷の姫との試合が決まった。




