34話 『戦いの終わりの日常はいつもより温かい』
目を覚ますと、そこは見たこともない場所だった。
周りに置かれている家具、今僕が寝ているベッド、全てが高級そうに見える。
そうだ、モンスターは?そんな疑問がはっと脳裏によぎる。
傷だらけの身体。治療が施された痕が残っている。
そんなことを考えていると、ぎぎぃという音を立ててドアが開く。
そこには綺麗な水色の髪をし、妖精のような神秘的なオーラを放ちつつも、幼さを残した可愛らしい少女が目に涙を浮かべながら立っていた。
「シレーヌさん。」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!カルナさぁぁぁぁぁぁん!」
シレーヌさんはその涙を今度はこぼしながら抱きついてきた。
「本当に心配したんですよ!絶対死んじゃうってぇ‼」
そういい彼女は僕が怪我人であることを忘れたかのように強く抱きしめてきた。
「す、すいません!つい…。」
痛がる素振りを見せると彼女は慌てて手を離した。
「シレーヌさん、あのモンスターって…。」
「え、覚えてないんですか?」
そういいシレーヌさんはあの時見たもの感じたものを嬉しそうに伝えてきた。
やはりあれは夢ではなかったらしい。
彼女はその事実を僕よりも嬉しそうに、そして時折、無茶をした僕を叱るように話をしてくれた。
「ここまではあの人が運んでくれたんです。」
「あの人‥‥?」
あの人とは誰だろう。おそらくシレーヌさんが呼んできてくれた戦士であるのだろうけど。
「その…、赤い髪の…」
「そうなんですか…。」
あの人が僕を、僕らを助けてくれたのか。
やはりあの人の言うとおりになってしまった。結局は誰かに助けられてしまったのだ。
それでも前のようなネガティブな思考には陥らなかった。
あの人が今回助けてくれたのなら今度は僕が助ければいい。一人で全てを守ろうなんて無理な話だ。
一人にできることは限られている。一人では助けられないものもある。
なら二人でやればいい。二人でも無理なら三人で。それでも無理なら四人、五人、それ以上で。
もう一人で背負い込むのはやめよう。
僕にも仲間がいる。目指すべき背中がある。そんな僕が一人で全てを成し遂げようと考えるのはモンスターよりも愚かな選択だ。
無邪気に話す少女を見つめる。
その少女は嬉しそうに僕が寝ていた間のことを話している。
その少女を見て思う。
僕は彼女ともう一度パーティを組みたい。そしてできればあの人とも組みたい。
あの人は、あの戦士は、態度は冷たいが、恐らく誰よりも人を助けようと思っているような気がする。そう思っているからこそ僕にあえて厳しい言葉をかけ、忠告してくれたのだろう。
そう感じたからこそ対等な立場で、対等な関係で、彼女たちと共に人の幸せを守りたい。
「ちゃんと聞いていますか?」
シレーヌさんは僕が何か考え事をしていると感じたのか、顔をふくれさせながらそう言ってきた。
「ちゃんと聞いてますよ。」
すると今度は彼女は僕をまじまじと見つめ、真剣な顔つきとなる。
そして、優しく、女神のように微笑み、こう僕に告げた。
「私を守ってくれてありがとう。私のヒーロー。」




