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燎が世界を照らすとき  作者: コンパス定規
1章 『灯火』
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33話 『その炎の中で少年は剣を振るった』

 その戦士はその赤く輝いた瞳を大きく開き、その姿を見ていた。

 勝てるはずもない相手にその炎を纏い立ち向かう少年の姿を。

 水色の髪をした少女がボロボロの状態で己の身体も顧みず、助けを乞うたとき、やはりこうなったと思った。

 この世は弱肉強食であり、弱者は強者にどうしたって勝つことは出来ない。弱者はどうやっても強者にはなれない。

 やはり、私は間違っていなかった。

 一度は誰しもが戦士に憧れる。強者が弱者を守る姿に憧れる。

 だが、憧れだけではどうにもならない。その恐怖に立ち向かうには勇気が必要だった。

 その勇気を少年は待っていた。

 能力を授からずとも果敢に恐怖に立ち向かう勇気は戦士のそれだった。

 その勇気は認めよう。その意志は認めよう。その想いの強さは認めよう。

 だが無理だ。

 強者になれるのは才能がある者のみ。そしてあの少年には才能がなかった。

 だから諦めろと言った。せめて守る側の手を煩わせるような真似だけはよせと言いたかった。

 なぜならそれが結果的に大切な人を殺してしまう未来に繋がってしまうのだから。

 私と姉のように。

 そうなったとき、きっと彼は一番に自分を呪い、その十字架を背負って生きていかなければならない。

 だから忠告、いや警告したのだ。

 それにもかかわらず、少年は戦場へと出向いた。そして自身の身だけでなく、少女の身までも危険にさらした。

 なんとも愚かな少年だろう。彼は一生自責の念に苛まれることになるだろう。

 いや、もう少年は助からないだろう、そう思いながら全力で走った。

 だから、その目に映る光景が信じられなかった。

 モンスターによる一方的な暴力、慈悲も何も存在しない、そこにあるのは死のみ。

 そのはずだった。

 だが、そこに広がっていたのは全く異なる光景。

 傷を負いながらも行くといって聞かなかった少女もその場に到着する。その少女の反応も全く同じだった。

 広がる炎。冷たい氷を溶かし暗闇を照らすかのように輝く炎。どこか懐かしく感じられる炎。

 その炎を纏った少年。

 そこにはあの日私が貶し、その現実に気付きながらも目をそらしていた弱い少年の姿はもうどこにもなかった。

 その姿が、その戦いぶりが在りし日の憧憬と重なる。それには明らかに劣っているものでありお世辞にも似ているとはいいがたい。

 だが、かつての弱い自分と重なっていた少年の影はどこにもなかった。

 要所に見せる戦い方、剣の扱い、そしてその炎が懐かしい記憶に重なる。

 唇をかむ。自分でも今の感情がわからなかった。

 少年の力を見誤ったことに対する申し訳なさか、悔しさか、苛立ちか。それともやはり私の見立ては間違っていなかったと、この少年は自らの強さのために命を懸けることができる本物の戦士だということに対する嬉しさか。それとも―

 分からなかった。この光景を目の当たりにして自分が何を思っているのか、何を感じているのかわからなかった。

 だから唇をかむしかなかった。

少年が吠える。その炎が刃となる。その刃が怪物を切り裂く。その怪物は跡形もなく燃え、その姿はもうない。

 少年が力尽きたように倒れる。少女が泣きじゃくりながら近づく。

 だが私にはその全てが背景となり、その炎だけが私の目によってはっきりと捉えられていた。

 私は動くことが出来なかった。


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