31話 『私はなにもできない』
その少女は走った。
少女というには速すぎるスピードで走った。
足がちぎれそうだった。肺が焼けそうだった。それでも彼女は走った。
誰でもいい…誰でもいいから助けを…!
その少女は助けを求め走っていた。
「こんな終わり方はいやだよ…。」
彼女は師匠と喧嘩していた。喧嘩というより一方的にこちらが怒っていただけかもしれない。
その少年は急に別れを告げてきた。
なんとなく嫌な予感はしていた。
ギルドでの一件。あれは彼の心を深くえぐっただろう。
それでも彼女はその少年とまだいたかった。
それはその少年に本物の戦士を見た気がしたからだった。
能力を授かることが出来ず、それでも人を助けたいと思う。その何がいけないのだろう。
なぜ彼のような人材に能力が与えられず、私のような弱いものに与えられるのだろう。
その少年は大丈夫といった。
あの存在を前にして私に優しく微笑みかけてくれた。
大丈夫なわけがない。
誰が見ても分かる。
その少年は震えていた。恐れていた。
それでも私をいかせた。
彼を死なせてはならない。
そう強く感じた。
だから少女は走った。助けを求めて。
小さな村が見える。こんなところにあの怪物を倒すことができるだけの実力者がいるだろうか。
いや倒す必要はない。少年を助けることさえできればそれでいいと思った。
見つけた。戦士がいる。風格、立ち振る舞い、そして見覚えのある後ろ姿。あの人なら…!
おそらくいま私はひどい顔をしているだろう。今まで味わったことのない死の気配。何もできなかった悔しさ。色々な感情が渦巻いている。
それでも、もう自分の身の上など気にする余裕はなかった。
そして走り続けて息があがりながらも、涙で嗚咽しながらも、その人に近づき、必死に救いを乞う。
その今にも燃えそうなほどに真っ赤な髪をした人に救いを求める。
「助けてください…!お願いします‼」




