2話 『僕の味方は』
「こんばんは…。」
僕は無事?クエストを終え、〈世界の半分〉ともいわれるほど巨大な都市であるここイスファンのなかで中心に位置し、都市のシンボルともいえる《ギルド》に出向いていた。
このギルドはクエストや戦士たちの管理、都市の警備などを担っている。
クエストが掲示されているのもギルドであり、そのクエスト結果の報告もギルドにする。報酬はギルドから渡される場合もあれば、依頼者が直接渡す場合もある。
今回は依頼者の村から直接渡されたので、一緒にパーティーを組んでいた戦士たちがギルドに出向くことはなかった。
今頃、自身の武勇伝を語りながら稼いだ金で酒でも飲んでいるのだろう。
「あ、カルナくん!」
重い足取りで歩いていると、一人の女性が話しかけてきた。
年の割には小柄でみすぼらしい茶色の服と薄汚れた黒いズボンを履いている僕に声をかけてくれる人物など一人しかいない。
ギルド職員であるマリーさんだ。
「お疲れ様~。今日も測ってく?」
「お願いします…。」
はいねー、と言いながらマリーさんは一枚の紙をとりだした。僕はその紙に手を当てる。するとその紙は光だし、その光が収まると、そこには文字がうかんでいた。
【適性 なし】
「はぁ。」
結果はいつもとかわりなかった。
「んー、しょうがないと思うよ。後天的に適性が発現するなんて何百年に一回の出来事だし、それに最近はサポーターの仕事だって様になってきたって聞くよ?」
マリーさんはまるで子供をなだめるように僕を励ましてくれた。
一説によると死の淵に追い込まれた一人の人間が適性を発現させ、モンスターと戦う力を得たらしい。
つまりサポーターとして働く僕が新たに適性を発現する可能性もゼロではないというわけだ。
だがそんなものはもはや都市伝説あつかいになっており、実際に幾度となく殺されかけたであろう僕の身体には何の変化もおとずれていなかった。
そんな僕を優しいマリーさんは一生懸命に励ましてくれる。しかし、
「まだやってるよ、あのガキ。」
「いい加減現実見たらどうだよ。」
「あんなしょうもない伝説をまだ信じているのか。」
ギルドに集まった多くの戦士たちから浴びせられる言葉の数々に落ち込まざるを得ない。さらにそれだけでは事足りず、
「雑用の分際で調子乗るなよ。」
「なんであの乞食みてぇな奴がマリーちゃんと仲いいんだよ。」
という非難さえある。
実際、マリーさんは容姿端麗で、その容姿も十人に問えば十人が美しいと答える程である。
年は僕よりも少し上くらいであるが、茶色く伸びた髪が巻かれ、丁度いいほどに成長した胸部は大人の雰囲気をただよわせている。
そんな彼女が毎日戦士から見たら戦うこともできないクズである僕の話し相手となり、落ち込んだ僕をはげましてくれているのだ。気に入らないのも当然?なのかもしれない。
「元気出して、ね?」
「あ、ありがとうございます・・・。」
顔を近づけ励ましてくれているマリーさんに、顔を赤らめると周囲からの嫉妬と殺意のオーラが一層濃くなった。
このままでは僕の命が危ないかもしれない、と思い
「それじゃあ、僕はかえります。ありがとうございました。」
と足早にギルドをあとにした。
カルナ・シグルド
【適性 なし】