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燎が世界を照らすとき  作者: コンパス定規
1章 『灯火』
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24話 『終わらない絶望に絶望しても』


 目を覚まし、まず目に入ったのはその人だった。

 その人は炎を纏っていた。

 その炎と同じようにいまにも燃えそうなほどに赤く輝いた髪がなびいている。


「あ、目を覚ましたみたいね。」


 声が聞こえる。

 あの時、あの暗闇の中で聞いた声。

 その他にも何か聞こえる。他にも人がいるんだろうか。


「こ、ここ…は…?」


 次に目に入ってきたのは何もない平野だった。

 正確には何も残されていない平野だった。

 全てが燃やされ、何も残っていない平野だった。

 刹那、ある考えが脳裏に浮かぶ。


「……。」


 その考えを肯定するようにこの場にいる者たちは沈黙する。


「ねぇ、ここは、ここはどこ…!」


 その場にいるには三人。誰もが目をつぶり、顔を伏せる。ある一人を除いて。


「ちょっと、カテリナ!」


 カテリナと呼ばれるその人は僕に現実を突きつける。

 何かを隠そうだとか、僕に気を遣おうだとか、そういう気配りや優しさもなく、すべてを告げる。


「嘘だ…、そんなの…嘘だ!」


「嘘じゃない!あなたも本当は気付いているんでしょう?」

「っ!」


 そう、本当は分かっている。

 分かってはいるが、認めたくなかった。ここが僕の村だということを。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


◇◇◇◇◇◇



「落ち着いた?」


 その人は尋ねてくる。


「……。」


 答えることが出来ない。たとえそれが事実であるとしてもその厳しい現実を幼い子供に隠すことなくそのまま伝える人がいるだろうか。


「なんだ、まだ落ち込んでいるの?まったくいつまでそうしてるつもり?」


 そんなの僕にもわからない。


「…まだ、現実を受け入れられないの?」


 ……。

 そんなの、できるわけがない。したくない。


「受け入れなければ何も始まらない。」

「……、なにが、…。」

「ん?」

「何が始まるっていうんだ⁉ここは…、この村は僕が壊したんだろ!まだ助かるかもしれなかった人も、この村での思い出も!全部僕が!僕がこわしたんだろ‼」


 そうだ、全部僕が壊した。

 まだ生きていた人を僕が殺した。

 その死体も全て僕が燃やした。

 あの炎に任せて。


「…、そうね。」


 っ‼

 ならっ!なら僕はっ!今ここで生きていていいのだろうか。

 全てを壊したこの僕に生きる資格があるのだろうか。


「僕は…、僕は、生きていていいんでしょうか…。」

「…、何を言っているの。」

「全てを壊したこの僕にこれから生きていく、何かを始める資格なんてあるんでしょうか?」


 怖かった。

 震えていた。

 この人は冷酷なまでにその現実を伝えてくる。

 だからその答えを聞くのが怖かった。


「あなたは生きることに資格が必要だと思っているの?あなたは絶望の中で何を見て、何を感じ、何を想ったの?人は必ず死んでいく!それがこの世の条理なの!だからあなたのお母さんも死ぬの!でも!人の想いは死なない!想いは人から人へ受け継がれていくの!そうやって世界は紡がれていく。それなら、あなたのお母さんの想いは、誰が受け継ぐの!」


 涙が止まらなかった。大量の涙が際限なくあふれてくる。

 そうだ、あの炎のなかで、あの暗闇のなかで確かに感じた母さんの想い、僕の願い。

 思い出した。

 絶望のなかで確かに願った僕の想い。それをもう一度口にする。


「僕に、戦い方を教えてください…!もう…、なにも失わないように…!みんなを、守れるように…!強くなりたいです……!強くしてください…!」

「人は希望に満ちて生まれてくる。だから自分ではどうしようもない絶望を味わったとき、立ち上がれなくなる。でもその絶望から立ち上がったとき、本当の意味で強くなったと言える。本当の意味で生きる意味を見出せる。その想いを持ち続けなさい。絶望を味わった者だけが真の意味で人の絶望に向き合える。強くなりなさい。世の中には絶望にのまれている人がたくさんいるの。その人たちを救いなさい。」

「は、はい!」

 涙をぬぐう。もう立ち止まらない。確かに決意した瞬間。この瞬間こそが僕という人間の本当の始まりであるような気がした。


「その代わり私に教えを乞うってことの意味わかってる?」


 え?なんだか嫌な予感がする。


「じゃあ始めようか。」


 今から始めるの?なぜかすごい笑顔なんだけど。


「はい、剣を持って。今から私と戦ってもらうから。」


 え……。

 こうしてぼくと師匠の修行が始まった。

 



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