12話 『仲間に心を躍らせて』
僕は修行を受けていた。
「ほら、まだ攻撃を受けることを怖がってる!それじゃあダメ!攻撃を受けないことなんて絶対ないことなんだから!それを受け流して自分の攻撃につなげるの!じゃあもう一回!」
そう言いながら師匠は容赦なく僕に攻撃してきた。
「ぐはっっ。」
戦士である師匠の攻撃を精一杯受け流していたが、攻撃すればするほど上がっていく攻撃についていけず渾身の一撃をくらった。
「まぁまぁなんじゃない。途中までうまく受け流してたし。まぁあんたの攻撃は一回も当たってないんだけど。」
そんな嫌味を言いながら師匠は僕をからかってくる。
「まったく、そんなんじゃ私よりも強くなるなんて何年かかっても無理ね。」
師匠は修行の内容だけでなく、僕に向けてくる言葉も厳しかった。
でもこの時間が好きだった。全てを失い生きる意味を失い、この世の全てが憎いと感じていた僕に希望をくれた。生きる意味をくれた。
師匠は炎の戦士だった。
その炎は何よりも温かかった。
師匠みたいになりたいと思った。
「ていうか、そもそも師匠は戦士じゃないですか。能力を持っている人の攻撃を受け流しつつ攻撃を当てろ、なんて無理ですよ。」
「またあんたは戦士、戦士って。もっと言い訳のレパートリーはないわけ?毎日それじゃあさすがに飽きたわ。」
そんな風に軽口をたたきあう。
だが、次には師匠の顔は真剣なものになっていた。次に発せられる言葉がいかに重要かを伝えているかのようだった。
「いい?何回も言うけど戦士っていうのは―」
そこで目が覚めた。
懐かしい遠い日の記憶。師匠と過ごした日々。
今日からシレーヌさんとの修行が始まるからだろうか。長い間見ることのなかった懐かしい夢を見た。
「戦士っていうのは…。」
その先がどうしても思い出せない。師匠なりに重要なことを言っていたのだろうが、当時の僕はそこまで真剣にとらえてなかったのだろう。
「あ、やばい!時間が!」
そんな考え事をしていたせいか、時間がないことに気が付いた。
シレーヌさんとの修行が始まるからといって自分の鍛錬をおろそかにするわけにはいかない。
いつも通り剣術のトレーニングをする。
いつも通り軽く朝食をとる。
いつも通りギルドは向かう。
いつもと何も変わらない一日の始まり。
だが、なぜかいつもよりもどこか身体が、心が軽く感じられた。




