11話 『彼女は誰よりも強かった』
「つまり、神様から能力を授かったにもかかわらず、まだ自分の力に自信を持てず、モンスターが襲ってくるとどうしても逃げちゃうってこと?」
「はい、お恥ずかしながら…」
シレーヌさんは見るからに落ち込んだ様子で事情を説明した。
これは別に珍しいことではなかった。能力を授かったとしてもそれによって与えられるのはモンスターに対抗するための力だけである。
モンスターに遭遇したときに、そのモンスターに立ち向かう勇気とメンタルが与えられるわけではない。
「だから…!カルナさんと一緒にパーティを組もうと思ったんです。能力なしでモンスターと戦っているサポーターがいるって聞いて…。何か掴めるんじゃないかって。でもダメでした…。それどころか私、また逃げて…」
無理に笑顔を作りながらシレーヌさんはそう僕に言った。
こればっかりはどうすることもできない。
モンスターにひるまず戦えるか。それは完全に彼女の問題であった。他人がどうこうして解決できる問題ではない。
シレーヌさんが、彼女が彼女自身で乗り越えなければならない問題だ。
だから僕にできることは何もない。
「大丈夫ですよ。モンスターが怖いのはみんな一緒です。その恐怖に打ち勝ってモンスターの前に立つんです。」
そんな安っぽい励まししかできなかった。
しかし彼女はその言葉を聞いて、何かを決心したような顔つきになった。
「……さい…。」
シレーヌさんは小さい声で何かを言ったようだったが聞き取れなかった。
「…ください…。」
「え?なんですか?」
「私に戦い方を教えてください‼」
……え?僕が……?
「あのー…、本当に僕でいいんですか…?」
「カルナさんがいいんです!あの戦い方を私に教えてください!」
あの戦い方とは先ほどのハイウルフとの戦いのことだろう。
そんなことを言われても戦士である彼女に、サポーターの僕が一体何を教えられるというのだろうか。
いや、なにもないはずだ。だって僕は…。
「残念だけど僕はシレーヌさんが思っているほど強くない。適性だって発現していない。だから僕がきみにおしえれることはないんだ…。ごめん…。」
「それは知っています。ほかの戦士から聞きましたから…。でもだからこそカルナさんに教えてもらいたいんです!」
シレーヌさんはそう強く言い切った。
そんな彼女に対して、僕は黙っていることしかできなかった。
「……。」
「実はほかの戦士の方にもお願いしてみたんです。でも無理だって断られて…。お願いします!私も人を救えるようになりたい…、守れるようになりたいんです…。だから…!」
彼女の気持ちは痛いほどわかった。
僕には戦うだけの力がなかった。そして彼女には戦うだけの勇気がなかった。
ただそれだけの違いであった。
誰かに否定され、無理だと言われた。
それでも彼女は人を助けたいと想っている。自分の勇気のなさに失望し、それでもまだまだともがき続けている。
僕と一緒であった。
それなら、そうであるならば、能力に恵まれていない僕に何を教えることができるのかわからないが、それでも僕は彼女の力になりたい。
そう思ってしまった。
「わかりました。最大限僕に教えられることを教えましょう。」
こうして僕とシレーヌさんとの日々が始まった。




