閑話 女戦士
その女戦士はいつものように、その森林へと出向こうとしていた。
赤く輝く髪をたなびかせ颯爽と歩くその女戦士は歩く者の目を奪うほどの美しさだった。
その姿は美しくもそれが並々ならぬ戦士だということを物語っていた。
細くありながらも、隠された筋肉。鍛え抜かれた身体。そのすべてを彼女の歩き方が物語っていた。
彼女はB級戦士だった。異例とも呼べる速さで成長を遂げ、その名を轟かせていた。
それでも彼女は満足していなかった。
私は強くならなければならない。こんなところで立ち止まるわけにはいかない。戦い続けなければならない。それが私に課せられた運命であり、呪いなのだ。
だからこうして、ほぼ毎日この忌々しい森林に出向いているのだ。誰も立ち寄ろうとしないその森林に。
人は私を天才と呼ぶ。その才能を羨み、妬んでいる。その感情はやがて嫉妬に変わる。大きすぎる才を蔑むようになる。私の努力も知らないで。
この地に足を踏み入れるものがどれほどいるだろうか。
このあふれ出る恐怖に立ち向かえるものがどれだけいるだろうか。
神による能力で研ぎ澄まされた全神経が危険信号を発している。
その恐怖に立ち向かえず、自身の研鑽をやめ、現状に満足している。だからこそ弱者は嫌いだ。弱者が嫌いだからこそ私は強者にならなければならない。
彼女の目は冷たく、暗かった。
その瞳は強さしか見えていなかった。
その瞳が違和感をとらえた。いつもと違う。森林に続く静かな道はいつもと変わらず静寂を貫いているものの何かが違う。
オーク?
森林の入り口から姿を現した大型の獣を彼女の目が捉える。
どうして?
その思考が脳裏をよぎったがそれよりも先に身体が動く。腰につけた剣を抜く。
「ァ…」
声も上がる間もなく切り裂かれる。一流の戦士でなければ捉えることすらできないほどのスピードだった。血潮が噴き出る。
「ふぅ…。」
彼女にとっては何でもない相手。それでも違和感をぬぐえなかった。
どうしてオークが?
いやそれよりも…。誰だ?
そこには傷だらけの少年が倒れていた。際限なく血が流れ、辺りは赤く染まっていた。
誰だ、この馬鹿は。血の跡を見る限り森林から出てきたのは明らかだった。
こいつは阿保なのか?見たところたいした能力を使えるようにも見えない。このような阿保
が命を落としていくのだろう。
戦士にとって自己分析は重要なことだ。自身がどれほどの力を持ち、どのレベルの相手倒せ
るのか。それが出来ない者が真っ先に死んでいく。
だが、どこか嬉しいと感じる自分がいた。
いたのだ。まだ存在したのだ。自らの命を賭し高みを目指すものが。それが嬉しかった。
だから死なせたくない。そう感じるままに少年を持ち上げ、今来た道を走り出していた。




