これからのこと
加流瀬さんはどこか遠くを見るように微笑む。
「写真見せたのは覚えてる? 」
「あ、ああ。覚えてる」
「……あの頃までの記憶は今でも鮮明に思い出せるんだ。お母さんとお父さんと私。いつも一緒で幸せな時間を過ごしてたんだけどさ――」
嫌な予感がした。
俺の嫌いな空気だ。
「えっと、加流瀬さん。そのー……俺たち知り合ったばかりだけどそんな話聞いてもいいの? 」
俺は慌てて口を挟んだ。
ここまで話をされればどんな話の内容か嫌でも分かる。
――加流瀬さんは俺と一緒だ。
きっと両親を失っている。
片親かもしれないが……。
思い出したくもない事を無理に思い出そうとするのは勇気がいる。
俺だって両親の事を考えずに生きてきた……つもりだが、きっと頭の片隅にはいつも笑顔の二人がいたと思う。
そんな俺の脳を自分で想像してみると、なんだか笑えてくる。
どんだけ親の事が好きなんだよって――。
俺はベッドの隅に腰を降ろして、加流瀬さんに体を向ける。
加流瀬さんは何やら考え事をしていたようで、俺が腰を降ろすと口をポカンと開けたままパチパチと瞬きをしている。
「加流瀬さんは、過去の事を話すのが辛く、思い出すだけで苦しくなったりはしないのか? 」
俺が真剣な表情で話すと、それを読み取ってくれたのか、加流瀬さんはベッドの上でちょこんと正座をした。
そして少し考えてから、首を横に振る。
「辛いし苦しくなったりするけどさ、それでも前に進んで歩かないと――」
一度胸に手を当てて深呼吸する。
「だって、そうしないと私はお母さんとお父さんの分まで生きられないから」
困ったように、何かを隠すように加流瀬さんは微笑んだ。
それを見て、俺は自然と拳に力が入った。
同じような境遇にいるはずなのに、どうしてこうも、別の道に俺は進んでしまったのだろうかと。
「そっか……」
力なく呟く。
でも、やっぱり加流瀬さんのような考え方は俺に出来るものではない。
だからだろうか――
ふと、この人の事を知りたいと思ったし、助けてあげたいとも思った。
具体的な理由は分からないが、脳が俺自身に訴えてくるような感じ。
「ねえ、加流瀬さん」
「ん? 」
俺が顔を上げるのと同時に視線がぶつかる。
「今からさっきのお店に行かない? 」
俺の口から出たのはそんな、思ってもない言葉だった。
投稿が遅くなり本当に申し訳ないです。
テストやらで忙しくてなかなか書けませんでした。
実は2回目のテストがもう近づいているので、これをあげたら、また次の投稿は時間がかかると思います。
自分の納得のいく作品にはしたいと思っているので最後までこの作品を見届けてくれたら嬉しいです




