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・・・  作者: 青斗輝竜
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箸は進まない。

それから俺と花優はまだ半分寝てる望月さんを無理やり起こして、家に帰るように言う。


望月さんは何か言いたそうだったが、俺たちはそれを無視して、ご飯だからという理由をつけると、望月さんは渋々帰っていった。


「はあ……」


俺は望月さんが帰ったのを確認するとため息が出た。


「また、ため息ですか? ため息をつくと幸せが逃げますよ」


そんな様子を見ていた花優が心配そうにこちらを見ていた。……というかそれ前にも言われたんだけど……


「はいはい」


俺は適当な返事をして今度は深呼吸する。

隣を見るとなぜか笑っている花優がいて、俺はきょとんとする。


「歩呂良くんが元気になってよかったです」


不意に花優がそんなことを言ってきた。


「あ……ああ、さっきの」


最初は何のことか分からなかったが彩史さんが死んだと分かった時のことだと思った。

……正直、あの時は本当に何も考えられなかった。


「花優は彩史さんが死んでいたことを……幽霊になったことを知ってたのか? 」


俺はふと、花優が彩史さんのことを呼んでいたのを思い出し、聞いてみる。

花優は腕を組んで何か考えていたが何かを閃いたようで笑顔になると、


「知ってましたよ。彩史さんが死んだことも……幽霊になっていたことも。そしてこの病院で幽霊が出るのは珍しくないことだって」


その後、花優は小声で何か言っていたが聞き取れなかったので何かを聞くのはやめることにした。

俺はそっか……とだけ返して、さっきまで合った出来事を思い出すとなんだか笑みがこぼれていた。


その時ちょうど夕ご飯が運ばれてきた。今日も相変わらず野菜や魚といった質素な料理だったが慣れたものだった。

俺と花優は看護師と体の状態やこれからの検査のことなどを少し話してから、看護師さんは病室を後にした。


「歩呂良くん……ちょっと聞いてもいいですか? 」


俺が夕ご飯を食べようと箸に手をかけていた所に花優が話しかけてきたのでその手を止めて花優の方を向く。


「ん? 」


俺は首をかしげながら花優が口を開けるのを待って、


「四十九日って知ってますか? 」


「あ、ああ。仏教の……極楽浄土に行けるか行けないかの……」


「そうです、そうです」


じゃあ……と付け加えて、最初から真剣な目をしていたけど、花優が更に真剣な表情になって……


「彩史さんが亡くなってから今日で何日目ですか? 」


「え? 」


俺は少し考え……俺が自殺を図ったのは4月15日。

今日は5月29日。そこからカレンダーを見ながら1日ずつ数えていった。


「44日目か? 」


「そうですね……じゃあ後5日しかありません。けど、今日はもう終わってしまいますから後4日ということになりますね」


……花優がそんなことを言ってやっと花優の言いたいことが分かった。


後4日もすれば彩史 愛夢と言う存在は完全にこの世から消えるということになる。


「そっか……」


俺はもう落ち込んだり下を向くのはやめた。だって……後4日もあるんだろ? 4日もあればこの世で少しは楽しくいられるだろ。

そんな俺が考えているのは絶望ではなく、希望だった。


「じゃあ後、4日の間。彩史さんが望むならここで楽しめばいいって事だろ? 」


徐々に暗くなっていった花優の表情も俺がそういうとだんだんと明るくなってきた。


「そうですね! 後4日もあるんですから! 」


花優が、楽しそうにこの4日間彩史さんとしたいことや話したいことを考えていた。


俺も考えようとしたがあまりいい案が思い浮かばなかった……

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