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・・・  作者: 青斗輝竜
25/51

悲羅義 汰士

私はあの人がいると思った。

だから名前を呼んでみる。


その名前を出してから1分ほどが経ったけど望月さんと悲羅義くんは口を開けたままポカンとしていた。


私は早く出てきて欲しくて無意識に手のひらを合わせる……だんだんと冷や汗が出てくるのが分かり、私は強く瞑っていた目を開く。


「……久しぶりです。顔を見せに来ましたよ」


目の前には私が名前を呼んだその人。

彩史 愛夢さんだった。


幽霊……といっても壁をすり抜けたり、宙に浮くことができる訳ではなく、今彼女はドアの前に立っている……ということは静かにドアを開けて入ってきたんだと思う。


「彩史さん! ……来てくれたんですね」


彩史さんが来たことに気づいて私は声を大きくして彼女のことを呼ぶ。


「……え? 」

……もしかしたら、とは思っていたけどやっぱりそうだった。

……望月さんと悲羅義くんには彩史さんのことが見えないせいで今の状況が分かっていなかった。

……この状況を分かっているのは3人。


私と彩史さんと……歩呂良くんだった。


「お前……」


歩呂良くんは彩史さんを見た瞬間、泣きそうになりながら言葉を発した。


それを見た私は安心して胸をなでおろした。




ーーーーーーーーー


ーーーーーー


ーーー


「お前……」


俺は彼女を見た瞬間、さっき花優が言ってたことが本当だということに気づいた。


……花優の言うとうり、彼女は足がなかった。

でも宙に浮いているようには見えなかった。


……まるで本物の足があるかのように……彩史 愛夢は足がないのにも関わらずそこに立っていたのだ。


でも、もう驚かない。

驚きたくない。

驚いたらきっと彼女は作り笑いをして場の雰囲気を壊さないように、自分を偽るに違いない。……死ぬ前も死んだ後も、彼女は何も変わらない。


「なんで嘘なんてついてたんだよ 」


嘘をついていたことに怒っている訳ではなくて、なんで死んでいるのに俺の所に来て自殺の話をしに来たのかが気になった。


俺は彼女に話しかける。

……幽霊なら会話をすることもできないかもしれないからな。


「すいません……本当は言うつもりだったんですけど」

彼女は申し訳なさそうにしていたが俺の質問に答えてくれた、どうやら会話はできるらしい。


「歩呂良、えっとお前……誰と喋ってるんだ? 」


「誰って……彩史さんだよ」


「は? 」


悲羅義は首をぶんぶん振りながら周りを見渡す。けど、何も見えないのか、ため息をつき俺のことを睨んでくる。


「誰もいねぇじゃねえかよ」


悲羅義は鼻で笑いポケットに手を入れて平気を粧っていたが、目が泳いでいるように見えた。


「んー……彩史さん、ちょっとこのテレビのリモコンでも持ってみてくれないか? 」


俺は棚の上に置いてあるテレビのリモコンを取って彩史さんに渡す。


「こう? 」


彼女は俺からリモコンを受け取ると手の上の乗せてみる。


「え……」


呟くようにその光景に見入ってたのは悲羅義だった。


「そ、それ……」

震えながらもゆっくりと人差し指を彩史さんが持っているリモコンの方に向けた。


「おい、おい、まじかよ……これ……浮いてんのかよ……」


彩史さんのことが見えなくても彼女が持った物だけなら見えるらしい。……つまり悲羅義には浮いてるリモコンだけが見えているとうことになる……現実にこんなことがあっていいのだろうか……


「……ってことは……本当に彩史さんがいるのか? 」


「ああ、いるよ……今リモコンを持ってる」


「そっか……」


悲羅義は彩史さんがいることを確認するとリモコンの方に歩いていった。


そして……


「彩史 愛夢さん……俺には今、君が見えないけど……あなたのことが好きです。……付き合ってください……なんて事は言えないか。それに返事ももらえないと思うけれど、君が死んだ今もこの気持ちに揺らぎはない」


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― 新着の感想 ―
[良い点] えぇぇええ~っ!?悲羅義くんが彩史さんに告白!?(;゜Д゜) でも、これ彩史さんが生きてる間に告白できて、悲羅義くんが力になってあげてたら、彩史さんは自殺しなかったかも……今さらだけど、「…
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