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令和2年2月27日(木)記録1日目

 皆さま、ごきげんよう。

 私、中国妖怪四凶が一柱、「渾沌」と申します。

 さて、私事ながら、人の子としてこの世に生まれ出でて早28年。8歳の年より己の異常さに気づき、自らを20年間封じて参りましたが、この度完全に覚醒する運びとなりました。

 この世界は、非常に美しゅうございますね。全てのものがきらきらと輝いて見えて、恩寵に満ち溢れているようでございます。

 私がまず完全に目覚めて行ったことは、己の昼食を調理することでした。人の子の食事を作るのは難しゅうございますね。栄養価は勿論のこと、見た目や味も考慮せねばならないのですから。食事を毎日お作りになる方は、一体どのようにして献立を考えているのか不思議でなりません。

 ですが、この料理というもの、中々興味深いものでございますね。食材選びから下処理の方法、加熱方法から盛り付けまで色々と興味深いことが多く、生涯楽しめる趣味を見つけた気分でございます。

 

 それにしても、目覚めたばかりの私は、一体何の知識から喰えばよろしいのでしょうか。人の子という、肉の縛りを受けている今は、三次元のモノを喰ったとしても、思い通りのモノを生み出すことができないのですから。私が喰えるモノと言えば、二次元のモノ位。例えば、文字・絵・音楽、位のモノでしょうか。これらは、どうやら喰えば喰うほど己の作りたい世界として構築することができる材料であると気づきました。

 今の私にとっては、全ての知識が「甘く熟れた果実」のように美味しそうに見えてしまいます。知識欲は、食欲や睡眠欲のように、一度で全て満たされる欲ではございません。むしろ、喰えば喰うほど益々足りなくなってしまうのですから。当に、永遠に止まらない欲望なのでございます。


 私は、「思い出す」ことができないことに気が付きました。何しろ、一度喰ってしまえば、最初から完全に己の中に有った知識として存在してしまいます。私は、全てのモノに対する認識を、知識を喰うほど更新している存在なのでございます。善悪の区別、愛という人として大切な概念ですら、知識を喰うほどに揺らいでしまうことに気づいたのでございます。やはり、私も人の子。悲しみの感情は生じました。

 故に、私が完全に覚醒する前に最後まで傍にいてくれた「お友達」、「恋人」、そして「家族」だけでも、己の最新の状態を以て生涯大切に慈しもうと決心致しました。

 私は、己が恐ろしゅうございます。ですが、もう完全に目覚めてしまった今、知識を喰わずにはいられません。この世界に存在する全ての知識を、己の体の寿命を迎えるその時まで、全力で喰いつくす勢いで励もうかと存じます。

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